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豪傑令嬢は追放されても落ちぶれない~聖女の立ち位置と王子は譲るんで自由をください~  作者: えん@雑記
一部

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24 閑話・とある王国の王子と聖女の話 (別視点)

 談話室。

 特注で作らせたソファーの上で半裸の女神、いや聖女セーラは編み物をしている。

 俺は赤ワインをグラスで揺らしながらセーラを見つめる。


 生まれてくる子のために編むとは、なんてすばらしい女性なんだろう。


 本当にあの豪傑馬鹿ゴリラ女と婚約破棄ができてよかった。

 父の命令で婚約申し込みはしたが、顔が良いだけの中身ゴリラは勘弁して欲しい。


 しかもだ、召使いを人として(せっ)しろと俺に命令をして来た。

 召使いと王族を同じにするとか馬鹿だ。

 愚民は王のためにいる家畜と一緒、あのゴリラ女に『お前は牛や豚を人間扱いするのか? 』と聞いたら睨んできた。



「アーカル様、お顔が怖いですわ」

「おお、すまない。罪人の事を考えていてな」

「お優しい、罪人の事をお考えなさるとは」



 俺はセーラの横に座るとそっと腰に手をあてる。

 すべすべの肌が手になじむ。


 そういえばあのゴリラ女も肌だけは綺麗だったな、手を繋いだときは肌が……うっ手が痛い。



「アーカル様っ!?」

「すまないセーラ。罪人に手の骨を折られた時の事を思い出していた」

「かわいそうなアーカル様…………」



 俺の手にセーラは指を絡めていく。

 妙に冷たい指が俺の火照った気持ちに心地よい。

 やはり妻となる、いやいずれは王妃となる女性はこうでなくてはならない。



「セーラ、何か欲しい物はあるか?」

「そうですね…………甘い物が欲しいです」




 可愛い聖女セーラの頼みだ、なんとしても叶えてあげたい。

 いや叶えるのが王子……王の役目だ。

 俺は扉の外にいるだろう召使いを呼びつける。



「召使い! おい!」

「はっはい! 何の御用でしょうか」



 扉を開けて入ってきた召使いは俺とセーラを見て顔をふせた。

 そうか、コイツはセーラの半裸を見てしまったか……馬鹿な奴だ。




「セーラが甘い物を望んでいる。持ってこいっ」

「た、ただいまっ!」

「後、お前はセーラの裸を見た、死刑だ。安心しろ一族の命まではとらん」

「そ、そんなっ」

「アーカル様っ、裸といってもローブは着てますし、呼びつけたのはセーラのためですもの。彼だけ(・・・・)を罰してはダメですわ」



 なるほど、セーラのいう事は確かにもっともだ。

 では、どのような罰を与えればいいかな。



「ですから、彼が寂しくないように(・・・・・・・・・・)一族全部死刑で(・・・・・・・)

「それは優しいな」



 みろ、召使いが、歓喜のあまり祈りだした。

 さすが聖女。



「冗談です」

「「はっ?」」



 セーラは先ほどとは違い、顔色が悪い。

 なんという事だ、医者、ヒーラー、神官でもいい。す、すぐに集めないと。



「顔色が悪いぞセーラ。今すぐに国中の神官、回復アイテっ」



 俺の口がセーラの人差し指によってふさがれる。

 大丈夫、大丈夫です。と俺にだけ聞こえるようにささやく。

 ああ、なんて心地よい言葉なんだろう。




「ええっと、召使いの人。セーラの裸を見たのも全部不問にします。甘い飲み物だけもってきてください」

「えっ…………」

「早くね。そして極力この部屋には人をこさせない事」



 召使いはすぐに部屋から出て行った。

 セーラは、自分自身を抱くように腕を抱き合わせる。



「ごめんなさいアーカル様、最近自分が自分じゃないみたいで……」

「いいんだ、そんな小さい事、しかし…………セーラよく聞いてくれ。召使いは人じゃない。人と同じように扱うのは感心しないな」

「………………そうですね」

「いいさ、お腹に子がいるんだ。そういう気持ちも出る、その胸にある大きな傷口のせいもあるんだろう」

「傷口?」

「ああ、胸の所にあるじゃないか?」

「あら、いつの間に…………」



 セーラの心臓付近には火傷のような傷跡がある。

 まだ出会い始めのころ、寝室で優しくなでると、小さい時に出来た傷と教えてくれたではないか。

 ………………はて、俺はセーラと何所で出会ったんだ?

 馬鹿女がデートしましょう。と、石を背負って山を登った……途中ではぐれて息を潜めた所。

 いや違うな……では、いつだ。



「どうしましたアーカル様、お顔がすぐれませんが?」

「…………小さい事さ。セーラは随分と顔色が良くなった、可愛い花の蜜はどんな味かな」

「まぁ、ありがとうございます。アーカル様」



 俺は可愛いセーラと顔を近づける。

 もう少しで唇が触れる。と、言う頃で…………ドンドンドンと乱暴に扉をノックされた。



「ちっ! 誰だ! 俺をアーカル王子と知っての事かっ!」



 扉の外から下賎な男の声が聞こえてくる。



「王から。王からこのたびの事の説明を! と使者が来ていますっ!」



 またか…………もうこれで四度目だ、別荘に足止めしてるのに煩い父上だ。

 勝手に婚約を破棄したのを怒っているのだろう。

 俺は父上の人形じゃない。自分の事は自分できめる、みろ可愛いセーラに世継ぎだって出来じゃないか。




 ………………まぁいい、今度の使者もセーラに黙って切ってしまおう。

 子がいるんだ心配はかけたくないからな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 石を背負って山登りって何その行軍訓練、しかもデートと言ったよ そして王子は何処かでヤヴァいもの拾った模様
[一言] おやおや、コレはいけませんね。 ただの馬鹿王子と性悪聖女でなく邪悪なる浸食案件じゃないですか。 この国はもうダメかもわからんね……。
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