23 帝国調査隊の勤務日常
かっぽかっぽと私達を乗せて馬車は動く。
帝国調査隊。
約束の日に合流した時にミッケルから聞いたのだけど、帝国でも鼻つまみの寄せ集めを集めたなんでも部隊です。と、笑顔で言われた。
他の調査隊の人もその言葉に笑っているし、私としては笑って良いのか悩む。
ひょろっとした人から、筋肉ムキムキの人まで総勢十五名。
名前の交換はしなく、ミッケル副隊長から「今回の任務に同行願うクリスさんと、アンナさんです」と軽い紹介だけされた。
一応全員、最初のダンジョンで顔見知りである。
後は馬車に乗って移動中。
目的のダンジョンまでは馬車で数十日という途方も無い場所にあるらしい。
普通の馬車だったら、とてもじゃないが我慢が出来ない。
しかしこの馬車、見た目は普通のボロ馬車、もといホロ馬車に似た感じであるが、昨日出来たばかりの新型馬車。
ホロの部分は魔物の皮をなめして使っているらしく通気性よく丈夫になっており軽い雨さえも弾く。なんだったら矢や初級魔法も効かないと調査団の一人が自慢してくれた。
それに凄いのは馬車本体、なんと悪路でも揺れが少ない。
怪我人を移送したり、護衛者を移送したり、あと奇襲用もかねてるとかなんとか。
なんにせよ、お尻が痛くないのは嬉しい。
その馬車の中でミッケルが嬉しそうな顔でカードを床に置く。
「ふむ、あがりですね」
ミッケルだ。
「申し訳ありませんクリスお嬢様。あがりです」
今度はアンナ。
「…………終わった」
ジョンである。
「…………もう一回! もう一回よ!」
納得いかない!
ビリよビリっ! 暇をもてあました私にミッケルがカードゲームを誘ってきたのだ。
他の馬車でも同じような事が行われているらしく、最下位は馬車を操縦する係りや、炊事時の持ち回り、見張りなど罰ゲームありで行われているとの事。
これで五戦四敗一分けである。
私が今乗っている馬車を操縦している若い調査隊の人もカードゲームで負けた人と聞いた。
ミッケルが再びカードを集めて、器用にシャッフルさせていく。
「そういえば、隊長ってラインハルト皇子なんでしょ、皇子は来ないの?
号令にすら居なかったみたいだけど。詳しくは知りたくも無いけど、その……元私の婚約者候補だったらしいんだし顔ぐらい拝もうと思っていたんだけど」
私の言葉にミッケルがカードを落とした。
なぜか、ちらっとジョンを見た。なぜに?
「おっと、すみません、馬車が揺れたようで。
ええっと……隊長の事ですよね。
ラインハルト皇子、いえ隊長は臆病で今頃城で布団でもかぶっているんでしょうなぁ」
「うっわ、酷くない。私が知っている王国の隊長でさえ前線に出るわよ。
あっでも貴族は確かに訓練には来ないわね……とにかく部下を人として思ってないような皇子って最低よね」
詳しくは知りたくも無かったけど、ギルドから帰る前に少しだけ教えてくれた。
王国と帝国の平和のために、帝国側からは皇族、王国側からは王国を守護するといわれてるコーネリア家の縁談が水面下であったらしい。
いわゆる政治的結婚。
それをコーネリア家の嫌がらせが何かしらないけど、王家が介入? してなんちゃら。
今となっては嬉しい限りだ。
王家に追放された貴族の娘などを貰いたい貴族なんていないだろう。
家に関しては、うん兄さんが頑張ってね。
ミッケルがカードを配り始めると、アンナの様子がおかしい。
「アンナ? 顔が赤いけど大丈夫?」
「クリスお嬢様。だ…………大丈夫です! 思わず笑い出しそうになりこらえていた所です、ねぇジョンさん」
「なんでジョンにふるの……笑う要素なんてないわよね。にしても、ジョンは相変わらず不機嫌な顔ねぇ」
話をふられたジョンは、相変わらず不機嫌だ。
そういえば、ジョンは、なんでもミッケルの副官みたいな立場、として紹介してもらったっけ。
だからいつも一緒なのね。
ん?
私はジョンとアンナを交互に見た。
「クリスお嬢様どうかなされましたか?」
「ええっと……なんでもないわ」
「…………言え」
「そうですよ、クリスさん。一時的とはいえ仲間なんですから、気になった所は言ってください、わたくしも気になります」
もしかしてアンナってジョンの事が好きなのかしら。
アンナが男性に興味を持つのは珍しい事だ、あれだけ縁談を断っていたのに…………うーん、でも間違えていたらどうしよう。
過去にもそういう事あったのよね。
流石の私でも、アンナってジョンの事すきなの? とは聞けないし言えない。
あっ丸く収まる話があったじゃない。
「よし、ジョン! この後にでも勝負しましょ!」
どれぐらいの強さなのか、アンナに代わって見極めてあげよう。
勝っても負けても良い所しかないし、仮に違っても私も頭使うゲームよりも訓練のほうが好きだし。
「………………いま、まさにカードゲームと言う下らないゲームで勝負をしているが?」
「違うわよ、模擬戦。ジョンだってどうせカードゲームだけじゃ勝てないんでしょ? ミッケルっ」
「な、なんでしょうか?」
嫌な予感がしますねぇ。と汗を拭きだしはじめた。
「この隊にも回復魔法使える人いるのよね? 怪我はさせないししないつもりなんだけど、一応。一応ね」
「それはまぁいますけど…………わかりました。一度クリスさんの実力も見たいと思っていましたので」
「…………ミッケル。俺は許可してない」
「おや、副隊長の命令ですよ」
「……………………」
「それに、ジョンも体を動かしたいでしょうに。色々と気疲れしてそうですし」
「…………助かる」
「ぷっ!」
会話の中、アンナがとうとう小さく笑い出す。
「だ、大丈夫? 朝のスープに変なキノコでも入ってた? 突然笑い出すだなんて変よ」
「大丈夫ですクリスお嬢様っ! ええ、大丈夫です」
「クリスさんも、一戦だけですよ? 回復魔法は緊急時に温存しなければならないのですし」
「話がわかる副隊長でよかったわっ」
ルンルン気分になった。




