22 クリス一日の終わりへ
私とアンナは宿に戻ってきた。
アンナはすぐに私が使っていた枕に顔をうずめて、スーハースーハーしている。
私が辞めなさい。と、言うまでいつもこんな感じだし、当然身内だけの時だけだから、そこは目をつぶる。
本題をアンナに聞いてみることにした。
「で、本当にいいの?」
アンナは顔を上げて、私をみて来た。
「はい、クロイス家の意地というのでしょうか。調査隊についていきます。クリスお嬢様こそ……」
「私は暇だから、それにいい稼ぎになりそうじゃない」
『クロイスの石』と名づけられた魔石。
帝国に逃げた盗賊団が持っていたらしく、当時その盗賊を追っていた祖父と帝国調査団が合同で賊を壊滅させた。
その賊というのはもちろんクロイス家を惨殺した集団。
その時に魔石の力が既に暴走気味に入っており王国にも帝国にも置く場所が無かった。
暴走というのはなんでも人が魔石を使うのではなく、魔石が人を使う恐れの場合。
早い話が、精神が弱い人間ほど乗っ取られる、催眠、そういう感じらしい。
なのなのー! とケラに教えてもらった。
そういう場合は特定の手順を踏んで中の魔力を抜く作業をするとの事。
結局、近くのダンジョンの底に封印した。
までは、良かった。
近年になり魔力が抜けたかを確認した調査団が見たものは空っぽの箱だった。
そこで帝国でも魔法にたけた? ギルドマスターケラに相談し作戦をねっていた所だったらしい。
ギルドマスターであり、魔導師であるケラが彼らに渡したのは、別の魔石の一つ。
他の魔石を感知する魔法がかけられてあり、現場で使ってという事だ。
そんな話が決まった所に、私達が来たものだから話が余計に混ざり合ってごった煮の闇鍋パーティー状態。
調査団から、「魔石の値段と慰謝料込みで金貨三千枚! を二十年払い分割で!」と、ミッケルが土下座して来たけど、理由を知った今誰が悪い。と、いう事にはならなかった。
私だったら間をとって最低でも一括二千枚を譲らないけど、最終的にはアンナが決める事なので押し黙る。
アンナが出した条件は、その捜索に連れて行く事。
これが願いだった。
なので私もついて行く。
アンナ一人じゃ心配だし、凄い相手と戦えるかもしれない。
ちょっとだけ、楽しみなのはアンナには内緒だ。
「出発は明後日。正面門前よね」
「はい。それまでは旅の道具など買い付けるか、気が変わったら来なくて良い。との事です」
「アンナの本来の今日の予定は?」
「わたくしアンナですか? ギルドに行くのが予定でして、その後は宿を取るしか無かったです、クリスお嬢様は?」
「私? 日々の生活のためにクエスト受けようと思ったけど、受けないほうがいいわよね」
「クリスお嬢様がクエストだなんて……落ちぶれて……」
いや、落ちぶれてないからね?
貴族という大きな枠から見たら落ちぶれたのかもしれないけど…………娯楽小説読んで、召使に命令して、非人道的な事を平気でするのが貴族なら、喜んで落ちぶれよう。
暇になった。
ショッピングっても、買ったものを置く家がない。
お腹も減ってない。
新しい剣は欲しいけど、手持ちの十枚ぐらいの金貨じゃ買えないだろうってのはわかる。
「ポーションでも買う?」
「ポーションですか? 安物ですと効果のほうはよろしくないと聞いていますが」
「アンナ、いくらかわかる?」
「先ほどギルド内で売られているのを見ましたが、治癒のポーションが一つ金五枚ほどでした」
げ、そんなにするのね。
ミラは簡単に回復魔法使ってくれたけど、私ってば結構わがままだったかしら?
「魔力のポーションは金二十枚でしたね」
「何でそんなに高いのよ…………」
「…………クリスお嬢様、お勉強なされましたよね?」
あっやばい。アンナがメイド長の顔になっている。
こういう時って小言が長いのよね。
「あー……聞いたような聞かないような、聞いた。聞いたわよ」
「国や領主によって数は違えと回復アイテムの流通は制限されています。
兵士千人と回復アイテム使い放題の冒険者百人が同じぐらいといわれています」
えええええええ! 冒険者って十人も兵士倒せないの?
私だったら……。
「クリスお嬢様、『私ならポーションに頼らなくても一人で百人は倒せる』って顔してますけど」
「全然っ! まっ流通に関してはわかったわ」
「同じ理由で魔法使いも重要です、とはいえ」
「魔法使いは魔法を打つ前に倒せばいいって事よね」
「基本ですね。そしてその魔法使いを守るために前衛がいるのです」
ミラクルジャンの三人パーティー。
あれはあれでバランスの取れたパーティーだったって事なのね。
私が暇だな。と呟くと、アンナはなぜかメイド服を脱ぎだしてベッドを整え始めた。
いや、良くて添い寝よ。
それ以上のことは絶対にないからね。




