表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/131

17 迷探偵クリスの聞き込み

 私が一晩寝たベッドの上でうつぶせになっているアンナを横目に見る。

 顔をうずめて息を大きく吸っては吐いてを繰り返しているのが見えた、ほおって置こう。


 私も背伸びをする。

 この三日間あんまり寝てない。

 初日は飛ばされ一晩歩く。

 そのまま徹夜でダンジョンに行って、街に帰ってきて仮眠。

 次の日は朝からハンナさんの所にいって夕方から牢屋にいて釈放後朝まで飲んだ。



「眠いわけよね」

「クリスお嬢様、隣が空いてます!」



 アンナは狭いベッドの上で、メイド服を脱ごうとする。

 いつもの事(・・・・)なので私は話をすすめた。



「で、アンナはなんで帝国領に、ってかなんで冒険者ギルドに?」

「今夜もおあずけなんですね、わかりました」

「一生ないから安心して」



 私が文句を言うと、身支度をしたアンナが喋りだす。



「では、コーネリア家から追放されたわたくしアンナは――」

「追放してないわよね……」

「失礼、クリスお嬢様から振られたアンナは――」



 もう突っ込むのは辞めよう。



「突っ込まないんですか?」

「突っ込んで欲しいの?」

「ええ、クリスお嬢様の大きい突っ込みが欲しいです!」

「………………」

「あの、怒ってます? あ、本当にごめんなさい。真面目に話します」



 自称専属メイドのアンナは私を忘れるために王国を出た。

 でも、全然忘れられなく、せめて私との思い出を大事にして生きていこうと方向を変えたらしい。

 そして私の実家を出る時に何か困った事があったらフランベルドにいる、ラインハルトを頼れ。とお爺さんに言われたとかなんとか。



「ラインハルト……誰?」

「さぁそこまでは、でも冒険者ギルドに話を通しておく。と、言われまして。何はともあれ話だけはして置こうと思いました所、クリスお嬢様とばったり」

「じゃぁ次はこっちの番ね」



 私は手短にここ数日のことを話した。

 っても、追放されて冒険者になった事ぐらいだけど。



「……す」

「と、いうわけなのよ」

「おのれアーカル! クリスお嬢様を追放だなんて」

「でも、そのおかげでアンナにも会えたし自由になったのだから。ね?」

「それはそうですけど……わかりました! 今度はこのアンナ! 墓の中までお供します!」



 墓の中まで……時と場合によってはプロボーズの言葉だ。




「私が言う事でもないけど、女性同士って子供できないわよ」

「そこはご安心を! アンナはクリスお嬢様の子を育てられればそれでいいのです」



 …………まぁ、アンナがそれでいいなら、私からは何も言う事はない。

 私個人としてはアンナも結婚して欲しいんだけどなぁ。

 私の両親もアンナにも縁談を沢山すすめたんだけど、クリスお嬢様が独身なのにわたくしアンナが先に婚約など恐れ多いです。って言うし。



「その人探しってすぐにしないとダメ?」

「いいえ、そういうわけではありませんね」

「それじゃ、軽く食事をしてギルドに戻りましょうか」

「今度は絶対に離れません!」

「いや、頼むから離れてね……」



 昨日は付け忘れた剣を腰につけて外に出る。

 やっぱりあると落ち着くわよね。



 ◇◇◇


 と、いっても滞在三日の私にオススメの店なんてわからない。

 自然にちょっと汚いが料理がうまい酒場へと入る。


 ミラクルジャンの三人は今日は姿が見えない、無愛想な店主に挨拶して奥の席へと座る。



「クリスお嬢様……クリスお嬢様が食事をするような……」

「あのねーもう私はもうお嬢様じゃないのよ、呼び捨てでいいわよ」

「そ、恐れ多いです! クリスお嬢様はクリスお嬢様です」



 まぁ、これは諦めよう。



「私は冒険者を続けるつもりだけど、アンナはどうするの?」

「ではわたくしアンナも冒険者になります」

「っても、アンナって特技がないじゃない……」



 剣の腕だって弱い。

 でも、私より頭はいいのよね。

 とてもそうは見えないけど、人当たりもいいって周りの人は言うし。



「おう、ねーちゃん」「メイド服のお嬢さんとは珍しいですね」「可愛い子がいるのう」



 振り返ると、ほぼ毎日顔を合わせているようなミルクルジャンの三人が立っている。

 自然に私達が座っているテーブルに割り込んできた。



「ちょっと、他のテーブルにいけばいいじゃない」

「ここは俺達の指定席みたいな所だからな、毎回ここに座っているだろ?」

「う、確かに」



 前もここに座っていた。



「冒険者どうし仲良くしようぜ」

「まぁいいけどさー……おごらないわよ」



 三人も無愛想な店主に適当に注文して座った。

 テーブルには様々な料理が並べられていく。



「あっそうだ。ラインハルトって知ってる?」

「「「………………」」」


 三人の顔がそれぞれ固まる。

 アンナが探していると軽く説明すると、ジャンの眉間のシワが増えていく。



「変な事聞いた覚えはないんだけど、凶悪な犯罪者とか?」

「ラインハルト……ギルドが関係するといえば、この国の第三皇子がその名前だな」



 皇族……私の勘が関わったら面倒だ。と告げている。



「………………よし! 聞かなかった事にしましょう。いいわよねアンナ」

「はい、クリスお嬢様に従います」

「俺達が聞いたからなぁ、金になりそうな勘がビンビンするぜ?」



 うっ…………。

 ど、どうしよう、嫌な予感はするけど、ジャン達は金になりそうといっている。

 お金は欲しい、別にお金に汚いとかそういうのではなくて無いよりはあったほうがいいのは、私でもわかる。



「一応話だけでもきこうかしら、そのアンナが困るといけないじゃない…………そこ! にやつかない!」


「悩むクリスお嬢様、なんて素敵なんでしょう」

「ねーちゃんの連れ、ちょっと変だな」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 第三皇子ラインハルト。 不思議な事にすでに出会っているよーな気がしますね。 気のせいかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ