13 クリス容疑者(20) 暴行の疑い
薄暗い部屋で一人椅子にすわる。
足は組んでいて腕も胸の下で組む。
まぶたを閉じてゆっくりと深呼吸していると、コツコツと足音が聞こえた。
人の気配と共に私が捕まっている鉄格子前で止まる。
「釈放だ。身元引受人が来たぞ」
思わず目を開けて眉をひそめる。
私を連行してきた警備兵が牢の鍵を開け始めた。
そう、騒ぎを聞きつけてきた警備兵に私は無実の罪で捕らえられ簡易牢屋に入れられたのだ。
ハンナさんやジャン達も弁解してくれたけど冒険者同士の話し合わせがある場合がある。と、言う事で却下された。
なんだったら、そのジャン達も加担したという事でこことは別の牢にいるはず。
捕まる時に警備兵から保釈金があれば入らないですむがどうする? といわれた。
これは別に不正じゃなくて、トラブルに応じて保釈金があり、今回の私の罪はなかなか重いが金貨三十枚あれば厳重注意で終わる仕組みらしい。
もちろん持ってない。
では持ってない場合はどうなるか? というと、一日一食で指定の場所で肉体労働。
初犯の私は二十日ほど。
手紙とかで外と連絡できると聞いたけど、その相手もいない。
「断ります」
「………………いや、断るって。普通は釈放だ、って言ったら喜んででるぞ?」
「保釈という事は誰かか私にお金を払ったって事よね」
「まぁ、普通は、そうなるな」
「だったら、余計に出ないわよ。その払った人に言っておいて『どういう意図が知らないけど借りはつくりません』って」
「そういわれてもなぁ……あっミッケル様っ!」
コツコツコツと足音が増える。
長身で髪は短い茶髪、そしてちょっとうさんくさい笑顔のミッケルさんが立っている。
「やぁやぁまた会いましたね。長い金髪で悪鬼のような女性が一般市民に暴行を加えてる。と聞きまして、もしやと思って来たのですよ」
「…………悪鬼じゃ無いですしー」
「…………他の関係者に話を聞いた所、ここ数年ですっかり小悪党になった青年を、拳ひとつで改心させたそうで――――」
ないですしー! って所はきれいにスルーされた。
長い話が永遠と続く。
一息ついた所で私は口をだした。
「ミラクルジャンの三人は?」
「ええ、もちろん厳重注意で釈放しましたよ」
「じゃっ私はいいわ。さっきも言ったけど変な人に変な借りは作りたくないの」
出たくないと言えばノーでそりゃ出たい。
でも、この人に借りを作ったら、いやな予感がするのよね。
「はっはっは、これは手厳しい。一緒にダンジョンに入った仲じゃないですか? 信用できませんか?」
「まったくっ」
ミッケルさんは鍵のはずれた扉をくぐり私の前でしゃがんだ。
私の手を握り冷たい床に片膝をつく、そのポーズは本で見た王子様がお姫様にする形と一緒だ。
「ミッケル様っ!」
「っっ! ちょっと一体何をっ」
私と警備兵の言葉が重なる。
「いえ、よく言うじゃありませんか美しい姫に頼むポーズですよ。お姫様、どうか牢から出ていただきたいのです」
「っ! で、出るわよ。ミッケルさんって様つけられるような立場の人なんでしょ。
そういう人は頭を下げる相手選んだほうがいいわよっ!」
「選んだ上で、頼んでいるんですけどね」
私が牢からでミッケルさんも廊下にでる。
少し歩くと壁に寄りかかっている男が見えた。
「あっジャン!」
「……………………ジョンだ…………」
「ごめん、ちょっと間違えた。悪いとは思うけど黙ってないで何か言ったらどうなのよ……」
背後からミッケルさんの声がする。
「はっはっは、ジョンはクリスさんが暴れたら押さえ役として来て貰いました。
いやーあの狭い牢の中で暴れられたら、わたしも殺されていたかもしれませんからね。
保険は何個あってもいいですし、任務とはいえ殺されないかとドキドキしました。
クリスさんに思ったより理性があって本当に良かったです。
実はですね、ハンナさんの恋人というんですかね? あの人の知り合いが元城勤めの人で、色々相談されたんですよ」
は? って事はだ。
いやまって、わたしもって言ってるけど、殺してはいない!
「酷っ! 一瞬でもっ」
「「一瞬でも?」」「…………」
警備兵とミッケルさんが同じ言葉を言って、ジョンは無言を貫いている。
「なんでもないわ」
一瞬でもトキメイタ乙女の感情を返してほしい。
歩きながら簡単に説明してくれた。
あのお爺さんも、元々あのハンナさんの孫を何とかしようとしていたけど、結局は他人。頭を悩ませていたと。
そこで私が、あーだ、こうだ。と孫をぶちのめしてくれてスッキリしたけど、捕まったのはいくらなんでも可愛そうだ。と。
で、お爺さんの友人で元城勤めの人に連絡がいって、さらに――――。
「――――我々なんでも屋に何故か話が回ってきてですね。こうしてお迎えに来たわけです」
「あーそー」
「嬉しそうな声で、こちらも嬉しいです」
「耳の病気と思いますわよ、医者へ行ったらどうです」
「はっはっは、ご検討しましょう」
まったくもって感情をこめてない返事したのに、こいつらはっ!
思わず貴族風の嫌味もでてしまう。




