0話 マヨネーズ教へようこそ
実在する宗教・団体・人物とは一切関係ありませんのでご了承ください。
俺の名前は白石恭平。
今俺は絶賛やばい状況の中にいる。
どういう状況かというと、
「マヨネーズ教へ入信しませんか?」
と目の前にいるやばい女の子に詰め寄られているのである。
何がやばいかって?
服装!持ち物!言動!
要するに全てだ。
手にマヨネーズ。頭にマヨネーズ。服もマヨネーズ(の柄)。
私はマヨネーズが大好きですと言わんばかりである。
「聞いてますか?マヨネーズ教へ入信してくれますよね?」
女の子がさらに詰め寄ってくる。
後ろは壁だから逃げられない。
「あの!!いきなり言われてわからないんですけど。マヨネーズ教ってなんですか!?」
「よくぞ聞いてくれましたね。マヨネーズ教とはマヨネーズを愛し、マヨネーズを愛して、マヨネーズを愛する集団です。」
「それだけ……?」
地雷を踏んでしまったかと思ったが案外少なくてホっとする。
「はい。それだけです。恭平くんはマヨネーズ好きですよね?なら入りますよね?入らない理由がないですよね?」
「確かにマヨネーズは好きだけど、そもそも入ったら何かあるんですか?俺、時間ないんですけど。」
「そうですよね。恭平くんは毎日小説を書いて投稿していますものね。」
「なんで知ってるんですか!?誰にも言ったことないんですけど」
ほっとしたのは間違いだった。こいつは危ない。そうそうに理由をつけて逃げよう。
「もちろん知ってますよ?入信候補者の氏名、住所、学校、趣味、片思いしている相手などなど全部知ってます」
「どこで調べたんですか!?普通に犯罪ですよ。警察に通報しますよ。」
「まぁそんなこと言わずに。小説うまくなりたいと思っていませんか?」
女の子がさらに近寄ってくる。
もう当たっている。案外大きい。
「それは……そうですけど、もしかして入信したらうまく書けるようになるって言うんですか?騙されませんよ。」
「まぁそう言わずに。騙されたと思って入ってみてくださいよ。」
「嫌です。入りません。」
「片思いしている人学校にばらしますよ。」
「どうせ嘘ですよね?そうやって俺をだまそうと」
「住所は東京都○○市××町▽▽◇―□―△、学校は■■■高校。父の名前は敦。母の名前は明美。妹の名前は由香。これ以上言う必要がありますか?」
「わかった。わかりました。入ればいいんですよね。入れば。」
あとあと警察に突き出してやろう。
「はい。言質とりましたよ。マヨネーズ教へようこそ。」
◇
あれからマヨネーズ教特製マヨネーズやらなんやらをもらって家に帰ってきた。
このマヨネーズを食べると小説がうまくなるらしい。
「胡散臭かったけど一応食べてみるか」
恭平は特製マヨを一口食べる。
「めちゃくちゃおいしい」
なんだこれは。
脳が溶ける。
市販されているものよりも、今まで自分で作ったものよりも何十倍もおいしい。
実は恭平は大のマヨ好きで一週間に3本は消費するのだ。
「けど食べただけで小説がうまく書けるわけがないよな。」
とりあえずPCを開く。
「昨日の評価は0。もちろん感想も0。はぁ…」
恭平はためいきをつく。
「こうなったらヤケだ。マヨ一本分食べてから書いてみよう。」
この日、恭平の部屋の電気が消えるのは明け方になったころだった。
◇
「評価10000pt。感想がたくさん。まるで夢みたいだ。」
昨日あのあと勢いにのって書いていたら止まらなくなり、短編ひとつを仕上げることができたのだ。
そして、気づいたら寝てしまっていたようだ。今は土曜の昼である。
「このマヨネーズはやばい。本物だったのか」
恭平は確信する。このマヨネーズはやばいと。あの女の子が言っていたことは正しかったのだと。
「なんだか気持ち的に疲れちゃったしもうひと眠りしようか」
こうして恭平はまた布団に入る。
◇
「起きて、ほら起きなさい。学校に遅刻するわよ」
目を開けると母親が立っていた。
「え?今日って何曜日?」
「何寝ぼけたこと言ってるの。金曜日よ。早くしないと本当に遅刻するわよ」
と言って母親は部屋を出ていく。
「はは。夢だったか。」
マヨネーズ教。あれは夢だったのだと確信する。
PCを開いても評価は0のままだ。
朝ご飯を大急ぎで食べて家をでる。
今日も憂鬱な学校生活の始まりである。
「はー…いい夢だったなぁ」
どこか寂しさを覚える。
「いたっ」
うつむきながら歩いていたら前から来た人にぶつかってしまったらしい。
「あ、すみません……」
「あ、謝罪は結構です。わざとぶつかったので。」
「え?」
「それよりも、マヨネーズ教へ入信しませんか?」
ぶつかった女の子は夢に出てきた女の子であった。
マヨネーズ食べて上手くなったらどんなにいいことでしょうか。
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