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助けてリリア

「あんだァ坊主?」


見上げる程の大男がいつの間にか目の前に立ちはだかっていた。

影の正体は、この大男達だ。

異常にボロボロの服に絡まる葉や土を見ると全く横の獣道から出て来たらしい。


そのせいで目の前に現れるまで気づかなかったようだ。

武器のようなものは持っていないが、丸太のような腕で殴られるだけでも昏倒してしまうだろう。


(山賊だ。……なんてついてないんだ)


ブライアンの脚は恐怖で全く力が入らない。

立っているだけでやっと、という状態だ。

剣を下げている事も忘れて今にもへたり込みそうだった。


「おい、急に止まんな。あ? なんでこんなとこにガキがいんだ」


「まて、こんなとこにいるってこたぁ……あの無加護の小娘のツレじゃあねえのか?」


「お前冴えてんなあ!」


「リ……リリアに会ったのか」


だとするとリリアはもう……。

そんなブライアンの考えは見当違いだったらしい。


「知り合いなら丁度いい。おい、案内しろよ。俺たちはあの無加護の女に用事があるんだ」


リリアはどういうわけかまだ生きているようだ。

だが安心など出来るわけもなく。

ひときわ大きな山賊がニタリと笑うともうブライアンに拒否権はない。


「ああ、その御大層な腰のブツは俺達がもらうからな。あってもなくても変わらねえなら俺たちが使ってやるよ」


「オラ、さっさと歩け!」


「は、はひ!」


剣まで取り上げられてしまい、ブライアンは断頭台へ上がる死刑囚のような心地で小屋を目指した。



もう数刻で日もくれるという時間。

時折山賊から暇つぶしのように小突かれながらもブライアンは必死に歩いていた。

村の話ではもうすぐ着くはずだ。

もうすぐ。

女の足でもその日には着くのだから。


山賊たちの話を聞き耳を立てていると、どうやら山賊たちはリリアに襲い掛かろうとした瞬間「局所的な竜巻」が吹き荒れ、気づいた時には崖下に落とされていたらしい。


それでとにかくむかっ腹がたち、なんとかやり返してやらないと気が済まないという事だ。

崖から落ちて復讐に燃えるとは身体も精神も頑丈だと思うが、反撃する気力はどんどん奪われていく。


(こいつらをリリアの元に案内するのは危険だ。でも)


竜巻だかなんだか知らないが、そんな奇跡がそうそう起こるはずもない。

リリアどころか今は自分の命が危ない。


ブライアンでさえ不案内な森だ。

別の場所に誘導したところでそこで殺されるだけ。


どうせ案内が終われば自分も殺されるか売られるかするのなら、一か八かリリアを囮にしてその隙に逃げてしまおうとブライアンは考えていた。

だらだらと額に流れる冷や汗をぬぐう。


無加護が死のうが、人も精霊も悲しまない。

大丈夫自分は間違っていない。


心の中で自分を正当化しながら足を進める。


そして、ついに目の前に小屋の一部が現れた。煙突から煙が上がっている。

リリアがいるのはきっとあそこだ。


「……っ!」


小屋まではまだ距離がある。

だがブライアンは殺されるかもしれない恐怖に耐えきれず、小屋が見えた瞬間一目散に駆けだした。


「はあっ……はあっ……! リ……ッ! リリア!」


「おい待て! 小僧!」


すぐ後ろでブライアンの行動に気づいた大男たちが慌ててドタドタと追いかける。


「リリア!……助けてくれ!!!」


ブライアンはリリアへの仕打ちを忘れ、助けを求めて夢中で足を動かした。

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