第6章 競馬狂の詩 8
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」
(2) 欲望の渦の中で その2
「あの道場てのは、いったいどうやってここまでヒト集めに成功したんだ?」
岡林は出来るだけにこやかな顔を作りながら、怯える鉄三郎に尋ねた。
「それがですネ、あいつらスンごいんですわ。どんな万馬券、いや例え100万馬券だって必ず当てやがるんですよ。だからヒトが集まる……」
「ふーん。でもそれは後出しなんだろう? 全通りの馬券を買っておいてレースが終わってから当たり馬券だけ見せるとか。あるいは偽造馬券とかじゃないのか」
「それが……毎回じゃないけども、ちゃんと先に言って当てるんですよ。だいたいメインレースはどれも3点で的中させてます」
「ふーん。何かからくりがありそうだな……で、どうやって集めた人間を信者に仕立て上げるんだ?」
「そりゃあもう、これだけ的中するのであれば誰だってその方法を知りたくなりますわネ。そこをつけ狙って、最初に修行のコースを選ばせるんですわ。1から5までのコースがあって、それぞれ値段と能力上昇ラインに差があるんでサ。あんまり金を用意できないヤツは初級コース。複勝で103%の回収率を狙うってなカリキュラムでネ、これなら通いでもOKだ。コースが上がると、だんだん派手な回収率のカリキュラムへと移行するんですわ。金額もうなぎ上りだ。バカ高い上に、泊まり込みの上級修行者へと飼いならされる……てな寸法で」
「なるほどな。うまく考えたものだ……」
競馬が勝てるようになる。馬券で暮らせるようになる。誰もが夢見る甘い未来を予感させて金を絞り取る。いつの世にもありがちな詐欺の手口だ。そんなモノに引っかかる馬鹿者がこれほどまでに多いとは。振り込み詐欺やオレオレ詐欺、日本人の弱みにつけこんで騙す手口はどれもこれも似たようなものだ。
日本はまさに詐欺師天国の国なのかも知れない。
結局、鉄三郎一人では荷が重いだろうという所長の配慮から、道場へは俺と鉄三郎二人で潜入することになった。どっちも天涯孤独の身だ。あるいは下手を打って返り打ちに遭ったとしても、誰も困りはしない。
二人で協力し、なおかつ互いを監視し合うという意味もあるのだ。要は鉄三郎を信用し切れないということだ。
岡林の作戦はいたって簡単だった。道場の中を探りつつ依頼を受けた捜索人を探し出し、脱出させる手伝いをしろ。そのためには、道場を管理・運営している奴らの弱点をあぶり出し、一時的にせよ彼らを制圧する必要がある。
いいか、頭を使え。お前たちの好きなやり方でこの難問をクリアしろ。
おいちょっと。これがファミコンのRPGなら何の問題もない。
『勇者はさっそうと道場の中へ侵入した。宝箱を開けて空飛ぶ衣をゲットした!!』なんて話ならば大歓迎だ。しかし、間違いなくこれは現実だ。少しのミスが完全に命を危うくするのだ……。
竹下女史が新聞を広げて騒ぎ出した。
「ねえ、これ見て。このヒト、依頼の捜索人だわ。例の道場に捕らわれたヒトよ。△△市から約10キロ、I市の北の埠頭で水死体で発見だってェ。とうとう死人が出た!」俺と鉄三郎はぎょっとした。
だが、岡林所長は満面の笑顔で俺たちを見つめた。
「いよおッし。これでウンとやり甲斐が増したぜ。君たちは運がいいねェ」
フフフと不気味な含み笑いをして見せた。
冗談じゃない。殺される!?
俺と鉄三郎は不安げな顔でお互いを見つめあった。
続く
さて、まずは3月17日(日)中央競馬の結果を報告する。
3月17日(日) 中央競馬
中山 第9レース 3連複軸1頭流し
⑩→3、5、8
1点=700円の勝負 ハズレ!
これで総投資資金は
367,610円-2,100円=365,510円となった。
では本日の期待値高めのレースを狙う!!
3月20日(水)南関・大井競馬
勝負レースの買い目はこれだ!!
大井 第5レース 3連複軸1頭流し
④→1、5、6、8、9
1点=700円 10点勝負!!
大井 第9レース 3連複軸1頭流し
⑤→1、6、8、12
1点=700円 5点勝負!!
さあ、今日はどうなるだろうか? 的中しようがハズレようが、ひたすら平常心を貫こうと思う。
※今後『道場』への潜伏作戦が始まっても、投資競馬は続けるつもりでいる。何故それが可能であるのかは訊かないでくれ。
では、また。
この予想と買い目は全て本当のことです。




