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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第6章  競馬狂の詩 2

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」

(1) 親父の狂言  その2



泡を吹いて倒れた中年親父だったが苦しみながらも意識はあるようだった。

「あわわ……目がまわる……アーラーミーターキーセーヨ……」呪文のようなお経のような意味不明の言葉をつぶやいている。

「大丈夫? しっかりして」千尋ママが男の様子を窺った。「ちょっと、救急を呼んで。早く」

優香がカウンター横の電話に向かった。

「ママ、この人を知ってるんですか?」倒れた男に近づいてみた。

「何回か来てくれた方だけど、詳しくは……お名前は岩本さん。たしか去年勤めを終えて退職金も入って悠々自適だとか」

「住んでるところや家族は?」

「さあ。そこまでは」

「そうですか。ちょっといいですか。すみません。こういうことには慣れてますので」一応これでも探偵のはしくれだから。などとハッタリをかまして倒れた男に近づいた。

 もちろん、いきなり倒れる症状というのが気になっからだ。もしも事件性があれば、仕事の切っ掛けになるかもしれない。

「もしかして、何か病気とか」

「そういうことは言ってなかったけどね」

 顔を見ると、黄疸おうだんが出ているようだった。病気によるものなのか、あるいは薬物のせいなのか。さすがに俺のような素人では判断がつかない。

 男はだんだんと震えだし、声も途切れ途切れになってきた。

 上着のポケットにJRAのマークシートが何枚か飛び出ていた。その中にチラシのような紙が折りたたんで挟まっていた。

「ちょっと失礼しますよ」

 俺はそれを取り上げて開いて。そこには派手派手しいどぎつい色の文字が並んでいた。


『馬券的中道場 常勝軍団アルメティア・メッツ』△△市にいよいよ上陸!!

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 妖しい文言がこれでもかとちりばめられている。

「ああ。これ。最近すごいらしいのよ」のぞきこんだ千尋ママが言った。

「なんですかいったい?」

「競馬が当たる儲かるって誘い込む、新手の宗教かネズミ講的な奴よ」

「なるほど……」

「総本山が□□山の山頂に出来たらしいのよ。そこに続々と入信者が集まってるらしいわ」

「へええ。そんなことになってるとは」

「ところがみんなだまされて、有り金を残らず奪われてるって噂よ」

「まあ、そういうことだろうね」

 話しているところに救急隊員がどかどかとやってきた。

「どうしました?」

 倒れている男を案内した。救急隊員が男の顔をひと目見ると、すぐに苦々しい顔に変わっっていった。

「またか。これで4人目だ」

「え? どういうことですか」

「あ、いや。薬物による中毒症状のようですね。おそらく精神高揚剤の一種でしょう。あ、すみません。運びますので」

 救急隊員達は慣れた手つきで手早く男を担架に乗せ、すぐに外へと運び出した。

 ひと騒動が過ぎ去り、千尋ママの音頭での見直しが始まった。優香は俺の浮かない顔を心配そうに見ていた。

 ラストまで飲んだ後、外で待ち合わせて優香と帰った。どうにもあの倒れた親父の姿が目に焼き付いて離れなかった。


 次の日、事務所には被害者の家族が助けを求めてやってきた。



               続く





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