表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
9/259

第2章 逃亡者の休息 7

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。生きるか死ぬか、あるいは捕まってしまうのか……究極のサバイバルの日々を綴ってゆく」

第9回

(6) 呪縛 


「ああプロの方でしたか。すみません『ゴルゴ13』はあちらの棚です」

 とにかくめんどくさいことには関わりたくなかった。笑って済ませてくれたらそれでいい。バシ男を嫌っているパラダイスの連中といい、絡まれるのはもう、うんざりだ。

 ところが、ミウラと名乗った男はじっと俺を見てうすら笑いを浮かべていた。

「なるほどねえ。何もかもが嫌に……やばい呪縛からは逃れられないってところやな」

「そ、そんなこと……なんであんたにわかる?」俺は図星を突かれ、背筋が寒くなった。

「人間なんて、どうせ飯食ってクソをして、いつかは死んで終わりだ。どうせあんたも勝手気ままにこれまで生きて来たんだろ? なあ。だから今死ぬほど弱っている」

「そんなこと、あんたに関係ないだろうが」

「だからさ、好きに生きて来たんだから、死ぬことも好きに選んでみたら……」

「冗談じゃない。俺の勝手だッ」

「ふふ。まあいいさ。ワイが必要になったら声を掛けてくれ。ワイはいつでもここにいるぜ」

言い残すとミウラは『ゴルゴ13』の棚へと移って行った。

「うさんくさい奴……死神を気取ってでもいるのか?」

俺は手塚治虫の『ブッダ』を5冊抱えて急いで自分の部屋へと戻った。


 翌日、俺はどうにも抑えがたい衝動にかられて、抜け抜けとまたC図書館へと出向いた。だからといってカオリにちょっかい出そうなどとは思っていない。約束の本を読みたいのもあったが、やはりカオリの顔が見たかった。つまり会いたかったんだ。


「はい『深い闇のシルエット』です。ちょうど戻ったところを押さえて置きました!」カオリは相変わらず可愛らしい笑顔で俺に本を渡してくれた。「次に予約の方には内緒ですから」舌を出して小声で言った。

 もちろんそれ以上のカオリとの接触は避けた。

 とにかく、ここは静かな場所だ。カオリも忙しそうだったし、例のポマードの眼も光っていた。見苦しい奴め。

 だが、もしもこいつが俺とカオリの秘密を知ったとしたら……おぞましい。考えたくもないことだ。

 それからは俺は静かに読書に励んだ。なかなか期待通りの面白い小説だった。

読み終わる頃には外はどっぷりと暗くなっていた。時計を見ると、午後8時を過ぎていた。ふと、まわりを見渡すと、館内には誰もいない様子だった。

(おかしい。カオリの姿がない。そういえばポマードのヤツも……)                       

俺は不審に思った。だが、閉館時間を過ぎているのも事実だ。誰もいない受付カウンターに『深い闇のシルエット』を置いて図書館を出ようとした。

「きゃああッ!」

 その時だ、女の悲鳴のような声が聞こえてきた。2階の事務室の方からだった。

俺は階段を上り、声が漏れるドアに聞き耳を立てた。

(いい加減にして。もう、あなたには……い、嫌あああああ!!!)

カオリの声だ!!

次の瞬間、迷うことなく俺はドアをけ破っていた。



           続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ