第5章 夜に舞う華 13
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」
(2) 罪と罰 その5
「その部屋に秘密があるってのか?」
翌朝、朝の挨拶もそこそこに訴えるかけると、岡林は顔をしかめるように睨み返して言った。
「この前、隅々まで調べたんだろう」
「ええまあ。ただあまりの汚さに閉口してゴミの裏側まで調べたという訳じゃあないす」
「そこまでしろとは言わねえが。どうかなあ……」
「彼らの身に起こったことが解ると思うんですよ。もしかするとどっちかが潜んでいるような気もするんですよね」
「そこまで言うのなら、いっちょ調べてみるか」
「それじゃ、家宅捜索とか礼状みたいな特別な許可って取れるんですか」
「おお、それな。任せとけ!」
こうして俺は岡林所長と源のアパートへと向かった。外は3月とは思えない陽気に包まれていた。
真っ青な空の下、製造後20年ほど経つボロい日産サニーを運転した。例年に比べると気温は10度ほども違う。今が3月初旬だということが疑わしく思えてくる。このまま春になって月末には桜が咲きそうな勢いだった。もちろん桜が咲くには、ここH道ではどんなに早くとも4月下旬を待たなければいけないのだろうが。
もっとも、今回の事件が解決しない限り、たとえ何月になろうとも俺には春など来ない。
助手席の岡林は腕を組み、ただ眼をつぶって黙り込んでいた。
「いやあ、すっかり春ですネ。気持ちのいい朝だ。ねえ所長、聞いてる?」
返事はなかった。
やがて「ぐわおお」といった地響きのようないびきが車内に響き渡った。
アパートにつくと、岡林の反応は驚くほど速かった。とび起きるとすぐクルマから降り、素早くあたりを見廻した。間髪を入れずにアパートの階段を上った。「この部屋です」あとを遅れずについていって指差した。
「そうか」
岡林は一度チャイムを鳴らした。それからドアに耳を当てて中の様子を窺い、電気メーターの動きを確認した。
すると、あっと思う間もなく岡林は少しの助走をつけて勢いよくアパートの玄関ドアへと突進していった。大学の頃は名のあるラグビー選手だったらしい。
ドカッ! がっしりとした体格の岡林がその肩を玄関ドアへとまともにぶつけると、薄っぺらいドアなどひとたまりもなかった。ドアが開くと同時に、もわあっと部屋の中の臭気が漏れてきた。
「ぐはッ。所長、家宅捜索の許可は?」「こいつがソレだ。うぷっ。俺が許可した!」お互い鼻をつまみながら言った。
この人、大丈夫なのか? 俺にはとてもついていけない不安が走った。けれどそれ以上に部屋の中が気になった。
俺は土足のまま、部屋の中へと押し入った。
明かりもなく、カーテンを閉め切った部屋の中には、おそらく蓮子であろうやせ細った死骸がマットの上にあった……いや、死骸じゃない。まだ……生きている! 心臓も脈もたしかに動いていた。だが、死後硬直を起こしたかのように固まった体と青黒く沈んだ顔色は、生きている人間とは思えなかった。
それにしてもすごい臭気だった。俺は岡林に言われるまでもなく、すぐにカーテンと窓ガラスを開け放した。
日差しを浴びると、相変わらずのゴミ屋敷が眼に飛び込んできた。
「救急車だ。救急車を呼べ。いや待て、おい、聞こえるのか? おいッ」岡林は蓮子に馬乗りになり、その顔にびんたを喰らわせた。
「ちょ、所長、何を」
「おい、俺たちは味方だ。解るな? 大丈夫だ。怪しいモンじゃない」
充分怪しいモンにしか見えないないが……しかし、蓮子の顔色はだんだんと赤みを増してきて、息を吹き返したのがはっきりと解った。
「おい、聞えるか? 返事ができるか」
「え? ……ここは。いったい私……どうして」
「ここはあんたの恋人の部屋。大和田源の部屋だよ」
「ええ? ああ……そう。そうよね。じゃあ……源ちゃんは。ああ、ああ」
「何? なんだ。源ちゃんがどうしたって」
「やっぱり……死んじゃったのね……」
俺はただひとり部外者であるかのように、所長と蓮子とのやり取りを茫然と見守っているだけだった。
続く
ではまず、3月9日の中央競馬の結果から報告するとしよう。
中京 第7レース 3連複軸1頭流し
⑫→1、5、6、7、11
405,910円÷48÷10≒800円
ハズレ!!
阪神 第10レース 3連複軸1頭流し
③→1、6、9、10、11
405,910円÷48÷10≒800円
ハズレ!!!!
これで総投資資金は
405,910円-16,000円=389,910円となった。
いよいよ資金元本の半減までが目前に迫ってきている。厳しい現実だ。だが、もともと失くなっても仕方がないと考えて用意した資金だ。どうせ踏み倒すことを前提にしたクレジットカードで創った資金である。こんなことを告白すると、とんでもない極悪人に見えるだろうが、まあそんな人間なのだから別にいいのだ。いい訳などしたくもない。
さて、今日の中央競馬だ。またまた期待値の高い2レースをチョイスした。
買い目はこれだ!!
3月10日中央競馬
中山 第10レース 3連複軸1頭流し
⑪→2、7、9、12、13
1点=800円の勝負だ。
中京 第6レース 3連複軸1頭流し
④→3、5、10、11、15
1点=800円の勝負だ!「
まだまだ道は遠いなどと、神様が判断を下したのだろうか?
そんな神様ならば、ずっとトイレの中ででもふんばっていろ!
俺は負けない。少なくとも、資金が全て無くなるその日までは夢を追い続けるのだ。
(※この予想と購入、資金状況はすべて事実です!!)




