第5章 夜に舞う華 9
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」
(2) 罪と罰 その1
翌日、俺は区役所で大和田源の戸籍や住民票を調べた。見習いとはいえ、探偵事務所の社員証と代表印で各書類は容易に取り寄せる事に成功した。源は確かに生れと育ちが千葉県☆☆市だった。ただし10代後半からは☆☆市からかなり遠い特別な住所に移っている。調べてみると、やはりそれはとある少年刑務所の住所だった。5年ほど服役してからH道へと移り住んだようだ。戸籍上の結婚歴はない。
そのあと俺は図書館へ出向き『大和田源が関わった事件』を調べてみた。
それは割りと簡単に明らかとなった。
『千葉県☆☆市、女子高生コンクリート詰め殺人摸倣事件』
1999年の事件だ。
あの凄惨な1989年1月に東京都足立区で起きた『女子高生コンクリート詰め殺人事件』がそっくりそのまま繰り返されたような事件だった。
未成年の不良グループが少女を自宅に監禁して暴行、強姦を繰り返し殺害した事件だ。最後はコンクリート詰めにしたところまでそっくりそのままだ。
主犯格は大島怜人(当時18歳)半グレの、ヤクザ以外に行き場所がないというような不良少年だ。この男が当時17歳の高校生中田有希子(17)を偶然見つけ、言葉巧みに誘い出してまずは強姦に及んだ。そのあとはなだめすかし、だまして自宅の不良のたまり場と化した自室へと誘い込んだ。
そして当時の仲間である半グレの中には大和田源(18)の名前があった。
その後の凄惨な犯行は、本家本元に勝るとも劣らない執拗で残酷で陰惨を極めたものだった。
有希子は、手足を縛られた状態で1カ月の間、半グレどもの手に落ちてな部られ続けた。次々と男どもに廻されたあとは、ありとあらゆる拷問の数々を受け続けた。
その10年ほど前の足立区の事件では、国家反逆罪のスパイに対する拷問でもここまではないだろうというような、およそ人間が考え得るありとあらゆる拷問が、何の罪もない少女に課せられた。その結果、少女の脳は委縮して縮少してしまったという。あらゆる現実(=苦痛)から逃避するように、人間の最期の力が発動した結果なのだという……。
この種の事件は不良少年達をスカウトする上部組織である暴力団、つまりヤクザ達が半分けしかけるものだと見える。暴力装置の教育の一環でもあるのだ。暴力団構成員の演習という側面だ。上部組織は半グレどもに暴力に対する耐性をつけさせるかのように……か弱い少女の命を弄ぶことを大いに推奨したのだ……。
そして中田有希子は息絶えた。その脳はやはり相当に委縮していたのであろう。お決まりの『コンクリート詰め死体処理』というのも、上部組織が組んだ特別カリキュラムなのかも知れない……。
もちろん、上部組織の誰かが裁判に登場するなどということは一切なかった。
この事件での大和田源の役割はやや特殊だった。
彼は直接、有希子に手をくだすことは決してしなかった。どんなに仲間の罵声を浴びても絶対に暴力だけは振るわなかったという……。ただ仲間を助けることや残虐行為の手伝いなど、補助的なことは率先してやってのけた。見張り役や連絡係、上部組織との連携も彼の手による部分が大きいようだ。主犯格に準じる、率先的な役割というのは充分に有罪の決め手となった。
彼は実刑として、懲役8年の実刑を甘んじて受け入れた。
そして、蓮子の素性も同時に分かった。
中田蓮子(当時10歳)、被害者中田有希子の「妹」だった。
続く
(※この物語はすべてフィクション? として書いています)
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