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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第5章  夜に舞う華 5

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」


(1) 謎の女  その5



 第1カ条『依頼人の素性を徹底的に調べ上げろ!』


 そこでもはや、俺はハタととまどってしまった。

依頼人とはどっちなのだろう。蓮子というこの女なのか? いやまて、大和田源の方なのか? ややこしい。まあ両方だとしておこう。

 まずはこの部屋からだ。

「じゃあ、この部屋の中から調査を始めさせてもらいますよ」

「ああ、お好きなようにどうぞ」

 しかし、このゴミ屋敷を調べるのは骨が折れる。辺りを見回すと必要な物とゴミとの判別が全くつかない。というか、全てがゴミといってもいい。この中に大和田の居場所を突き止めるヒントがあるのだろうか。間取りは8畳の居間に4畳半のダイニングキッチン、風呂にトイレの1DKだ。

 雑誌、新聞、漫画本、文庫本、使用済みティッシュ、カップめんのカラ、お菓子の袋、空き瓶、空き缶、煙草に灰皿、衣類の山、食品、酒類、CD、DVD、転がった扇風機……よくもこんなところで生活が出来るものだ。

「良くいく、行きつけのお店とかありますか?」

 俺は部屋のゴミどもを物色しながら訊いた。

「少しはあるさ。出無精だけどね。ただ、数件の行きつけには俺も行ってみたよ。来た様子はなかったね」

「そうですか。一応メモして渡してください。お風呂とトイレもいいですか?」

「どうぞ」

 仕事でなければ絶対に嫌だったが、しぶしぶ風呂とトイレも調べた。

 浴室は割とまともな広さの0.75坪だった。ただし浴槽にはフタが置いてあり、その上にはたんまりと不要品が積まれていた。不要ではないのかもしれないが、うず高く積まれた品物を今後どうやって使用するのかを考えた場合やはりゴミにしか見えない。ただ、シャワーを浴びるための空間だけがぽっかりときれいに空いていた。

 トイレに至っては形容しがたい状況であった。食事中の読者もおられるかもしれない。説明は割愛しようと思う。

 一通り調べてみたが、居場所を突き止めるヒントになりそうなものは何ひとつ発見できなかった。そもそも、本人(の心)が解らないのに他人が解る訳がないのだ。もしかすると第三者に捕らわれたのかもしれない……。

 俺が調べる先に、女もいちいち移動してきては俺のそばにぴったりと寄り添ってきた。ノーブラの乳首を、あきらかにわざと背中に押しつけてくるのだ。

「あの、それ止めてもらっていいですか。調査の邪魔になるので」

「あ、そう。でもまあ悪い気はしないでしょ。女の武器ってやつを、確かめてみたくってさぁ。はいこれ、行きつけの店、め・も・よ・う・し」

 耳元に息を吹きかけるようにメモを俺に渡した。

「あのですね。あなたは女の方が楽しそうなのではないですか? だったら何も無理して自分を探すこともないのではないですか?」少しイラついて言った。

「冗談だってば。うふん。オコんないで……」

 女は俺を上目使いで見た。そして人差し指を、俺の唇にあててきた!!

 背中に寒気が走った!

「いやあの、それってなんか意味あるんですか?」

「あ、ああうん、なんかヘンなんだよね。あ、俺ってノーマルだよ。いたってノーマルなんだけどさ。この身体が……頭もおかしくさせちゃうんじゃないのかなあ。なんだかタイプだなあって……あんたを見てて急に思っっちゃったの。女の部分が勝手に出て、き・ちゃ・う・の」

「はああああ……」

 声や身体は色気ある女そのものだ。だが、心は『大和田源』という男そのものなのだ。

 俺の心は鉛のように奥深いところへと……し・ず・ん・だ。



岡林探偵事務所 探偵マニュアル

第2カ条

『依頼人の心情には寄り添ってもいいが、決して深入りはするな!!』



               続く



(※この物語はすべてフィクション? として書いています)


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