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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第4章  凍りつく街 .38

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」

(6) 決壊  その4



 あの顔の輪郭は、あの男と同じだ!!

 特徴のあるホームベースのような輪郭はカオリを轢いて逃げたあの男に酷似している。マンションの集合郵便受けを撮影した画像を見ると2408号室に藤堂の名前があった。おそらく間違いないだろう……ただ確証はない。俺はネットを検索してみた。

 藤堂秀正(58歳)……初当選から5期連続で衆議院議員を務めている。民自党内でも大きな派閥を持っているようだ。父親の藤堂秀之もまた民自党幹事長まで務めた大物政治家だった。父の死後、地盤を継いで政務秘書から立候補したのだった。

 地元では絶大な人気を誇る政治家だがもともとは土建屋のせがれだ。金と利権の亡者となった父のあとを見事に継いでのし上がってきた。お決まりのように大手ゼネコンとの黒いつながりが持ち上がってきたようだ。こういった政治家のスキャンダルってのは、だいたいが反対勢力の陰謀によるものだろう。おそらくは仲間と思っていた者に嵌められたのだ。

 そんなことはどうでもいいが、問題はこいつの息子と思われる人物だ。俺はネットの中を泳ぐように回遊して行った。

 あった!

 藤堂の三男坊秀美という名前だった。学生の頃の写真らしい。父親の秀正と並んで映っている写真があった。藤堂の略歴を探るとこの三男秀美は、どうやら妾に産ませた子のようだ。そんなことまで書かれるとは……ネットとは実に恐ろしい場所だ。

 やがて藤堂はその子を養子にして自分の子供として育てている。ただし、兄が二人いる。秀美は、後継ぎの予備の予備として飼われたに違いない。ある意味可哀そうな男なのかもしれない……。

 岡林がなぜ留置場にいたのかそれは解らないが彼はあの時、近々大きなヤマがあるから手伝わないかと言っていた。

 そして秀美を監視している……その父親はいま、相当まずい疑獄事件の真っただ中だ。

 ネットを探るうちにひとつのニュースが飛び込んできた。

「△△市で12月末に起きた『中島カオリさん轢き逃げ事件』の犯人と思われる人物が今日の午後に出頭。男は浜田博之容疑者45歳。住所不定、無職。クリスマスの夜に遊ぶ金もなくムシャクシャして、通りを歩くカップルを無差別に狙ってクルマをぶつけたとの供述。轢かれた中島カオリさんは今も意識不明の重体となっており……』

 なにい!! どういうことだこれは?

 ふと振り向くと、優香はテレビのお笑い番組を観て無邪気に笑っている……。

 俺はいてもたってもいられなくなった。こうしてはいられない。あの男、藤堂秀美に危機が迫っているのだ、たぶん間違いない。奴を狙っている者は岡林の一味にチャンゴもいる。いや、それ以上にヤバい組織が動いている可能性が高い。轢き逃げ犯の身代わりまで用意できる組織だ。その意図は果たして?

「ちょっと出かけてくる」

 俺は優香の背中に声を掛けて身支度をした。取りあえずあのマンションに忍び込むため、宅配配達員の格好に着替えた。

 優香はしばらくだまってお笑い番組を観ていたが、俺が出て行こうとすると、

「行ってらっしゃい。気をつけてね」と、抱きついてきた。

「いいのか、行っても?」少し動揺した。

「どうせ行くなって言っても無駄でしょ。どこへ行くのかも、それくらいは解るから。もしも危なくなったら連絡して……」

 さすが、我が愛しの共犯者だ。俺のことは何もかもお見通しなのか……でも、なんだかそれが心地良かった。


 俺は奴のマンションへと急いだ。

 こんな夜の△△市は、気温マイナス10度を差していた。




                続く




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