第4章 凍りつく街 20
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」
(4) 卓上の騎士 その4
今年の冬は雪の降り初めが遅かった。けれど、いざ降り始めると例年よりも多くの雪が後から後から降り積もる日々が続いている。そして気温もまたかなり低い水準のままだ。いくら着込んでも寒い。俺は厚手のオーバーを身にまとい、優香のマフラーを借用して凍てついた街を歩き続けた。
『雀雀バリバリ』ではすでに3人がお待ちかねだった。
「待ってましたよ。狂死狼さん」タンタンたぬきが手を上げた。
「お手柔らかに」たそがれミイラが口元に笑みを浮かべている。
「狂さん。今夜あたりはきっと俺たちやられそうだなあ」しゃもん弟があいそ笑いだ。
フン。笑っていられるのも今のうちだ。
「いやあ。皆さん強い。こちらこそお手柔らかにお願いしますよ。この通り」
俺はわざと三人の前で最敬礼をした。それからオーバーを脱いで奴らの後ろ側にある古臭い昭和の匂いがする木製のコート架けにかけた。
「さあ。始めましょうか」
「一応その、問題ないとは思いますが、お互いの持ち金を見せ合いましょうよ」抜け目なくミイラが口を挟んだ。心配なのは俺の財布の中身ということか。
俺はカオリから、あのクリスマスの日にもらった財布を開いて20万ほどの札びらを見せた。もちろん命の次に大事な金だ。
奴らも同様に、それぞれ金があることを見せつけた。
「じゃあ、今日はまず、点10くらいでいきましょうか」
しゃもん弟は俺の顔色を窺うように言った。
「ああ。俺は構わないよ」
点10とは千点1000円。ハコで30,000円ということだ。すでにファミリールールの範疇ではない。このレートなら、奴らのいいように進んでいった場合、おそらく半チャン5~6回で20万位は消えてしまうことになるだろう。そうはさせてたまるか。まずは奴らの動きに注目だ。不審な動きがないかどうか、徹底的に見定めてやる。
最初の半チャンはしゃもん弟の親で始まった。俺の対面にしゃもん、右にミイラ、左にタツだ。3人がつるんでいるとしたら、俺はいつだって奴らに挟まれた状況ということだ。
俺の手は面白いようにイーシャンテンまではスムーズに進むのだが、その後がいつも遠かった。ようやく終盤までもつれこんでやっとテンパイになった途端、3人のうちの誰かに振りこんでしまっていた。
昨日までの展開と全く同じだ。
それにしても、奴らが何かを仕込んでいるであろう形跡を掴むことはできなかった。
やがて半チャン2回が終わり、俺のマイナスは5万と少しになった。一度も上がることが出来なかったうえに3人のうちの誰かしらに必ず降り込んでいた。
ここまで俺をいいように扱うとは。ある意味、こいつらは絶妙のコンビネーションと信頼を持ち合わせているのだろう。それを仕事に活かせば、今よりもはるかに健全でより多くの金を稼ぐことが出来るだろうに……。考えても詮ないことだ。間違いなくこいつらは、根っからの仕事嫌いなのだろう。
「じゃあ、すぐ次行きますか」しゃもん弟がこの場を仕切る様な言い方で促してきた。
ごめん、ちょっと負けが込んでるからさ。外で頭を冷やしてくるよ。ついでに買い出しな。
じゃあ俺も俺もと、奴らが俺に買い物を頼みだした。その意味はわかる。俺が戻ってこないということがないように、ゆるい鎖をつないだのだ。
だいたいの品物は欲しければ『雀雀バリバリ』のマスターに頼むことで事足りる。それがこの店の売り上げにもつながるはずだ。しかし、新聞を買ってきてくれとか、雪見なんとかのアイスだとかを俺に頼んできた。そんなものが本当に必要だとでも思っているのか? 今この状況で。
まあいいさ。俺はとにかくオーバーを着込んで外へ飛び出した。
急いで近くのコンビニまで走り、頼まれた品を買った。そして俺は飲食コーナーでくつろぎながら、スマホの画面を眺めていた。
「よし。これでいい」
俺はほどなくして『雀雀バリバリ』へと戻った。
続く
苦しい胸の内を報告しようと思う(ああ、泣きたい)。
ではまず、今日の結果。
1月24日(木) 大井競馬
第12R 三複複軸1頭流し
⑨→3、4、8、11、12 (10点)
このレースはなかなか惜しいレースだった。
軸の9番はいいところで足を伸ばしたが2着。しかし、人気薄の5番が前残り。あえなくチーンだ。
心折れそうだが、これが競馬というものだ。
そして、明日の勝負レースはこれだ。
1月25日(金)大井競馬
第6R 三複複軸1頭流し
③→8、10、11 (3点)
第8R 三複複軸1頭流し
⑧→3、4、6 (3点)
(総投資資金577,030円÷48÷10≒1,200円)
1点=1,200円の勝負だ!!
明日こそは、明日こそは!!!
(※この予想と購入はすべて事実です)




