第4章 凍りつく街 19
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」
(4) 卓上の騎士 その2
どうにもおかしい。奴らとの麻雀に違和感を覚えた俺はこのままやられたままで終わりたくはなかった。
おそらくあいつらは『通し』(仲間同志で合図やサインを送り、必要な牌をやり取りするイカサマ)をやっているに違いない。だが……どうやってそれを暴くかだ……。
「何をそんな真剣な顔で考えているの?」
優香は俺の顔を窺って聞いてきた。
今日は優香の久しぶりの休日だった。ふたりで午前10時近くまで寝ていた。それから遅い朝食を食べ、くだらないテレビのワイドショーを見ながら俺は考え込んでいた。
「あ、いや。ふたりでまったりしていられるなんて、幸せだなあって」
「嘘!! 顔に書いてあるよ。なにか良くないことでも考えてるんでしょ」
なんでもお見通しか。だが正直に話す気にもなれない。
「何でもないって。ちょっと友達が困ったことになっててさ」
それは、チャンゴとしゃもん弟とをごっちゃにして言ったことだった。
「また今日もマージャン?」
「うっ。いや、その……」やはり考えてることはバレバレだ。
「いいよ。行ってらっしゃい。あんまり負けないようにね。でも、夜からでしょ。昼間は私につきあってよ」
「ああ。うん、いいよ」
「やったあ。じゃあデートしよう!!」
優香の嬉しそうな顔を見て、なんだか俺も嬉しくなった。けれど心のどこかでささやく声が聞こえる。おいおい。俺たちは殺人犯だぜ。わかってんのか? でも、すぐに思いかえす。だからこそ普通の平凡なことが愛しいってことなのだ。
「どこに行く?」
「うーん。じゃあ、買い物に行こう。スーパーに」
「うん。いいよ」
それが、今の俺たちに出来るせいいっぱいの娯楽だ。
歩いて15分ほどの道のりを、優香は俺の腕を掴んで寄り添って歩いた。
「寒みぃね」
「うん。すっげぇ寒みぃ」
独特の言い回しがH道人ならではの郷土意識を感じさせ、より親密感を濃くした。
仲良さそうに見えるこのカップルが、実は殺人事件の犯人なのだと知ったら、道行く人たちは仰天することだろう。だが、今はそんなことは忘れて、俺たちは凍りつく街の風景に同化していた。
両手いっぱいのビニール袋をぶら下げて俺たちはアパートの部屋に戻った。
テーブルの上に置いてあったスマホに着信の知らせがあった。
言うまでもない。しゃもん弟からだった。
優香は早速夕食の支度をした。今日は肉じゃがだ。
それから俺は部屋の中で、とある細工に時間を費やした。それから優香が作った肉じゃがを食べた。抜群に旨かった。
「やっぱり行くの?」
「ごめん。おそらく今晩、決着がつくから。もう明日からは、夜な夜な帰ってくるってことはなくなると思う」
「だといいけど……何かあったら必ず連絡ちょうだいね」
「ああ。わかった」
そして俺たちは抱き合った。優香の唇は柔らかくそして肉じゃがの、ダシの効いたいい味がした。
いよいよ決戦だ。しゃもん弟たちは手ぐすねを引いて俺を待っているはずだ。だが、そうは好き勝手にさせてたまるか。
気がかりなのは、あの昭和の店『雀雀バリバリ』だ。果たして無事で済むのかどうか。
あの仙人のようなマスターの泣き出しそうな顔が浮かんでくる。名前は確か『出江子葉』とか……。あの出江教授の身内なのだろうか? 今夜すべてが終わったら……確かめようと思う。
俺は凍りつく街を『雀雀バリバリ』へと急いだ。
続く
さて、今日もせっせと不毛な闘いの軌跡を報告しようと思う……(本当は泣きたい)。
ではまず、昨日の結果だ。
1月23日(水) 大井競馬
第5R 三複複軸1頭流し
⑦→2、10、11、12、14 (9点)
ハズレ!
第6R 三複複軸1頭流し
⑫→1、2、5、9 (6点)
ハズレ!!
第12R 三複複軸1頭流し
⑪→3、5、8、10、14 (10点)
ハズレ!!!
軸馬が一度も馬券に絡まないという大外れのままに終わった……。
気を取り直して、今日の勝負に挑むのみだ。
さあ、本日の大井競馬は12レースのみ。一点集中だ!!
1月24日(木) 大井競馬
第12R 三複複軸1頭流し
⑨→3、4、8、11、12 (10点)
1点1,200円の勝負だ。
(総投資資金589,030円÷48÷10≒1,200円)
さあ果たして今日はどうなるのか!!!
(※この予想と購入はすべて事実です)




