第4章 凍りつく街 17
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」
(3) 愛しき共犯者 その6
「私が嫌いになったら、その時は私を殺して……」
優香の言葉は俺みたいなクズの汚れた心臓を射抜いた。チャンゴがいうところのズキュンだ。これほどの『殺し文句』があるだろうか? どうでもいいことだが、正確には「殺され文句」だろうか……。
共犯者だからとはいえ、優香は俺にとってもはや絶対に離れられない存在だった。カオリがあんな目に遭ってから、考えてみるとまだひと月も経っていない。なのにもう優香という別の女と俺は。
ベッドの中で、包み込むように抱きしめた途端に優香は寝息を立て始めた。よほど安心したのだろうか、その寝顔は嬉しさに包まれているように見えた。
俺は重ね合わせるように眠ったままのカオリの顔とを思い出した。そしてチャンゴの顔が浮かんでくる。
カオリがもしも今、元気だったとしたら俺はどうしていただろう? 優香を取ってカオリをチャンゴに譲ったのだろうか? カオリがそれを受け入れるだろうか……無理だ。いやわからないさ。チャンゴだってそれなりに魅力ある男だ。何より俺よりずっと若い。
カオリがこうなったこと、チャンゴが思い詰めていること。全ては俺一人が都合良く生き延びるための、あるいは仕組まれたお膳立てじゃないのか?
そう考えるとドキリとした。冷や汗が落ちてくる。俺は酷い男だ。酷い。極悪人にもほどがある。
チャンゴがカオリに想いを寄せていることにどこかホッとしている自分がいる。
カオリがあんな身体になったことさえ……今ではしめしめと思っているのかも知れない。酷過ぎる……出来れば謝りたい。カオリに土下座して謝りたい……気付いた時にはすでに朝だった。
優香は朝7時半に仕事へと出かけた。俺はベッドの中でうたた寝を繰り返していた。
ようやく起き出そうとするが、ひどく身体がだるい。やっとの思いで起き上がると急に寒けが襲ってきた。風邪でもひいたか。でも熱はない。部屋の寒さが効いただけか。洗面台へ向かい鏡を見ると、中の顔は疲れ切っていた。
本当はカオリに会いに行こうと考えていた。母親は、俺のことをカオリから聞き知っていたようだが6年前のリフォーム工事を担当した営業マンだということは覚えていなかった。顔も体型も変わっていたし、単純に気付かなかったのだろう。カオリもそのことを母親には言ってないということになる。
もしも気付かれたなら母親は俺を疑うかもしれない。いや、当然疑うだろう。シンちゃんもああ言っていた。カオリにはもう近付いたら駄目だ。どうせ俺は薄情な男なんだ。
それより、ここのところ投資競馬は全く上手くいっていない。結果が出るまでの不調期がどうしても長引くことがあるから、ここが踏ん張りどころだと分かってはいる。しかし、収入のあてのない今の自分には重くのしかかる。手持ちの資金は目減りするばかりだ。
こうなれば、あいつらの鼻を明かして当面の生活費を稼ぐとするか。
そう、考えたことが良くなかった。
続く
1月21日(月)の投資競馬の結果これだ。
1月21日 南関・大井競馬。
大井 第5R 三複複軸1頭流し
⑧→6、7、10 (3点)
このレースは7番クインズジェイドが出走取り消しとなった。残り3頭の三連複も10倍程度のオッズであったため、見となった。
大井 第8R 三連複軸1頭流し
⑮→4、8、10、13、16(10点)
このレースは軸馬15番ワイルドファイヤが5着に沈んだ。全く話にならずに終わった。
本日の投資金=13,000円マイナス
総投資資金は 643,730円-13,000円=630,730円となった。
全くもって苦しい展開だ。しかし、これもまた致し方ない。投資とはこういうものだ。常に一進一退を繰り返す。トータルで勝てればそれでいいんだ。明日以降に期待するしかない。大事なのはフォームを崩さず、自分を信じ続けることだ。他のレースに賭けたくなる心をグッと堪えて抑えられるかどうかだ。それが出来ずに、心の赴くままに勘や気分で買い出したら、60万程度の資金などあっという間に消えてなくなる。
そして明日1月22日(火)の投資競馬はこれだ!!
1月22日 南関・大井競馬。
大井 第7R 三複複軸1頭流し
①→4、5、8、9、11 (10点)
(※オッズ15倍以下は切り捨て)
総投資資金630,730円÷48÷10≒1,300円
1点=1,300円で勝負だ!!
さあ明日はどうなる!!!




