第4章 凍りつく街 14
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」
(3) 愛しき共犯者 その3
俺たちはあの事件さえなければ平凡な暮らしができていただろう。だが、あの事件がなければこうしてとともに生きることもなかっただろう。うまく言えないが、ふたりを引き合わせたものは宿命だったのかもしれない。
しかし、普通の恋人同士のような目立つ行動を取ることはなるべく避けなければならない。日陰を生きるしかないのだ。そんな生活であっても人間らしくありたい。普通ではないからこそ、なるべく普通の生活を味わいたい。そんな風に思うようになっていた。
俺は毎日近所のスーパーへと買い出しに出かけ、食材を仕入れては料理に専念するようになった。こう見えても飲食業を永く勤めた経験があるため、一通りの料理はだいたい作ることができるのだ。また今ではネット検索でどんな料理のレシピもだいたい手に入る。便利な世の中になったものだ。優香が勤めから帰ってくるまでの時間、料理を作ることが多くなった。
その日、俺は肉じゃがを作ろうと考えた。
肉に野菜、もろもろの食材を買い込み、さっそくチャレンジだ。食材を適当に切って適当に味付けをして鍋で煮込んで見た。
駄目だ……失敗だ。まったく旨さを感じない。ただのごった煮としかいいようがない。豚の餌かよというレベルだ。そこで俺は考えた……こいつをアレンジして別の料理に作り変えよう。
俺は味噌をいれてみることにした。つまり、こいつを豚汁へと進化させようという魂胆だ。たっぷりの味噌を溶かしこんで煮込んだ。
……失敗だ。何故だろう。全然おいしくないのだった。
俺は考えた。こいつをもっと別の料理へとさらなる進化を遂げさせるしかない。俺はこいつにカレールーを入れてやることにした。すると……今度は大成功だ!!
いつの間にか鍋の量は二人では食べきれないほどに大型化していた。
こうして自己流秘伝のカレーを作り上げた俺は競馬の予想に取りかかりながら優香の帰りを待った。
2019年1月17日(木)さあ、今日の南関船橋競馬の予想だ。今日は期待値の高いレースが3つある。
船橋第6R 三連複軸1頭流し
⑫→2、4、8、11 (6点)
船橋第7R 三連複軸1頭流し
⑥→4、5、8、11 (5点)
船橋第9R 三連複軸1頭流し
⑥→4、5、7、11 (6点)
南関総投資資金 386,570円
386,570円÷36÷10≒1,000円
1点=1,000円
「ただいまあ。今日も忙しかった~」
優香が帰ってきた。
いよいよ今日の渾身の料理を食べさせる時がきた。
どうだい? 今日のカレー?
おそるおそる優香に差し出した俺だったが、反応を見るのはやはり怖い。まずいと吐き出されたらどんな反応をすればいいのだろう。
「うん、美味しいね。なかなかコクがあって、辛さもちょうどいいよ」
優香は満面の笑みを浮かべて言った。
「そうか。ありがとう。そういってくれると作った甲斐があるよ」
「ううん。こちらこそありがとう。こんにゃくとか豆腐とかシイタケが入ったカレーもなかなかいいね」
「そうだろう。俺が考えたニュースタイルのカレーなんだ」
「うん。おいしい」
俺たちは仲良く初めは肉じゃがだったはずのカレーを口に運んだ。
そんなときにスマホが鳴りだした。しゃもん弟からの電話だった。
「狂さん、すまないがすぐに来て欲しいんだ……お願いがあって」
どこか切迫したような雰囲気を感じた。必死に声を押さえてはいるが、何かに怯えているかのような声だ。
「わかった。すぐに行くよ。場所はどこだ?」
俺はすぐに出掛ける支度をした。
優香が心配そうに言った。
「何があったの。大丈夫?」
「行ってみないとわからない。だけど放ってはおけないんだ。大丈夫だ。心配いらないよ」
優香が急に抱きついてきた。俺もきつく抱きしめた。
俺たちはカレー味の口づけをした。
俺は凍りつく街を、しゃもん弟が待つ場所へと向かった。
そして今日の南関船橋競馬の結果だ。
残念ながら、今日の勝負はすべて不的中で終わった。厳しい現実だ……。
さて、明日1月17日(木)南関・船橋競馬だ。
船橋第7レース 三連複軸1頭流し
⑦→1、3、11 (3点)
※オッズ15倍未満は切り捨て
南関競馬総投資資金 369,570円
369,570円÷36÷10≒1,000円
1点=1,000円の勝負だ。
では、また。




