第4章 凍りつく街 10
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」
(2) 追跡者 その3
「あ……あああ」
男の悲しい性だった。俺は泡まみれになり、年季の入ったソープ譲のテクニックに溺れた。若くきれいな優香と毎日を共に過ごしながら、いまだに指一本触れられずいる。それなのにくたびれたアケミの身体に、俺はなす術もなく弄ばれ、快感に酔いしれている。
アケミはずいぶんとハッスルしているようだ。俺が好みのタイプなのだと言った。どんな女でもそう言われて悪い気はしない。かといって好みではない。だが、どこか憎めない可愛さも感じてもいた。不思議だった。こんな穢れた女を? え、穢れた女だって?? 馬鹿な。考えてみれば俺の方がよほど穢れている。そうか……だからこの女を許せもするし、身体を預けることもできるのかも知れない。だったら何故……何故、優香を抱かない?
年増のソープ嬢のテクニックに快感をほとばしらせながら、俺はとても悲しい気持ちになった。……果てると同時にほろほろと涙がこぼれてきた。
アケミは俺を見てすぐに目をそらせた。
「馬鹿じゃないの。何、泣いてんのよ。アタシみたいな女のあそこに感動した?」
「うるさい。俺の勝手だ」
「こっちもね。そんな顔されたらさ、なんだか泣けてくるじゃないのよ」
「ああ?」
アケミもまたほろほろと泣き出した。
「アタシだってさ、好きでこんなことしてんじゃないのさ。障害児の娘の面倒見てさ、年老いた両親の介護に逃げた旦那の借金。いくら稼いだって足りないのさ。だからって馬鹿にしてんじゃないよ」
「馬鹿になんかしてないって」
「気づいたら底辺の底辺さ。こんな姿さらしても生きるしかないのさ」
そういってアケミは俺に覆いかぶさってきた。ひくひくと泣いていた。
そうか。お前も苦しみながら生きてきたのか。だからといって盗みはだめだ。もちろん、殺人を犯した俺が言えることじゃない。俺は唇をかみしめてアケミの身体を抱きしめるしかなかった。
「ねえ、また来てよ。サービス料はいいからさ」
時間終了となり、別れ間際にアケミがしなだれかかってきて言った。
おれはうんと、ただうなずいた。もちろん二度と来ることはないだろう。
けれどアケミというこの中年女を、同情以上の好む気持ちが今の俺には確かにあった。
外はやはり凍りついていた。マイナス6度は超えていただろうか。
シンちゃんが時間延長で遅れるとの店員の話を聞いて、ひたすら出てくるのを待った。
「やあ、悪い悪い。思ったより麗華ちゃん良かったァ。つい延長。ああ心の洗濯だわ。よッし、もう一軒行こう!」
顔をぴかりとテカらせたシンちゃんが出てきたのは30分後だった。
「え、まだ行くの?」
「ああ。じっくり話そうや」
静かな居酒屋で熱燗を乾杯すると、シンちゃんは言った。
「狂ちゃんさあ、故郷の○○市で殺しなんかやってないよね?」
シンちゃんの顔は初めに見た、厳しい刑事の顔に変わっていた。
酔いも覚める一撃だった。
「え? 何言ってんの。殺しって……」
俺は激しく動揺した。大きく脈打つ動悸を気付かれない様に、見せかけの平静を保つのは苦しい作業だった。
「いや、ほら。何カ月か前、○○市で通り魔殺人があっただろう」
「ああ、そういえばニュースでやってたな」
「まだ全く絞れてはいないが、100人以上にも及ぶあやしい人物、参考人の中に、お前の名前も入っているんだ。もちろん、これは最高企業秘密だけどね」
ああ、やっぱりそうか。
シンちゃんは俺を見定めるためにやって来たんだ。
「何、言ってんだよ。俺が人殺しに見えるか。ああ? 虫さえ殺せない俺だよ。よくもそんなことを」
「ならいいんだ。いいんだよ。俺も狂ちゃんがそんな奴とは思っていない。そうであって欲しいんだ。でもさあ……職業柄いつも思うんだが、そんな奴じゃないって感じの奴が、おおよそ犯人であることが多かったりするんだ」
シンちゃんは鋭い目つきで俺を睨みつけた。
続く
1月13日(日)中央競馬三日開催の二日目、今日は中山7レースに勝負を挑んだ。
よし、的中だ!!
馬連10-11は500円という低配当だった。まあ、低配当は仕方がない。それにしても当たっても微々たるプラスでは苦しい限りだ。ともかく明日に期待しよう。
明日の買い目はこれだ!!
1月14日(月)中山9レース 馬連 3-12、4-12、12-14
中央競馬総投資資金 311,960円
311,960円÷36÷3≒2,800円
1点 2,800円の勝負だ!!
では、また。




