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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第4章  凍りつく街 9

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」


(2)  追跡者 その2



  黒い手帳には○○市警察署 藤崎慎吾・捜査一係 警部補と書かれていた。

40手前くらいか。男は職業柄培われたであろう鋭い目つきを俺に浴びせかけてきた。いよいよ来るべきものが来たのか? 心臓は破裂しそうなほどに大きく脈打った。予断を許さない厳しい展開だ。俺は覚悟を決めた。

「なんてね……狂ちゃん、俺だよ俺、シンゴ。すっかり変わってまったなあ」

「え? 藤崎……シンちゃんか。なんだよシンちゃん。全然わかんなかった。お前こそえらい変わったなあ」

 目の前の刑事は中学校時代の親友だった。当時の面影はまるでなかった。だが、言われてみれば、声の感じ、話し方がああそうかと懐かしく思い出された。

「……にしても昼間っからパチンコかい。優雅だねえ」

「いやいや、時間つぶしさ。パチンコが打ちたい訳じゃないんだ。恥ずかしながらたまたま失業中でさ。そういうシンちゃんこそ。警察に入ったのは聞いてたけど……見違えたね。でも、わざわざこんなとこまでどうしたの?」

「ああ。ちょっと仕事でね。人探しさ」

「そりゃあ大変だ。手伝えることがあったら言ってくれよ。どうせ暇なんだ」

「ありがとう。まあでも、一般市民に仕事を手伝わせることはできないよ。それよっか仕事が終わったら今晩つきあえよ。一杯やろうぜ」

「ああ、いいよ」

 俺たちは電話番号を交換した。

 シンちゃんはそれから『パラダイス』の店内へ入り、鋭い目つきで客たちを一人一人観察していた。俺には関係のないことだったようだ。しかし、気まずさもあってか俺はパラダイスを出ることにした。

 バシ男は相変わらず漫画を読みふけっている。俺はバシ男に声を掛けた。

「どうだい。どこか気晴らしにでも行かないか?」

 バシ男は首を横に振った。「ありがとね。でも今は資金がゼロに近くて……」

「そうか……」

 おごるよと言いたかったが俺も今はそれほど余裕がない。じゃあまたと、右手を上げて俺は休憩室を出た。

しかし、外へ出てもどこも行くあてなどない。凍りつく街の中をさ迷い歩くだけだった。


 その夜、俺とシンちゃんはしこたま飲んだ。若いころの昔話を肴に飲み続けた。へべれけに酔うとシンちゃんは、キャバクラへ行こうと言いだした。俺はそっち方面はうといし、さほど行きたいとは思わなかったが旧友との再会だ。付き合うことにした。

 通りの看板の若い娘の写真が目にとまり、俺たちはニュークラブなんちゃらとかいう店に入った。

 薄暗い店内は賑やかでミラーボールが光っていた。


「ルーミちゃんの乳首を当てちゃおう。うーんと……ここだあ!!」

「いやあん、やめてえ」

 スケベ根性丸出しでシンちゃんは横についたミニドレスの女とじゃれ合った。中学の頃とはまるで別人だった。女の子と話も出来ないウブな奴だったはずなのに。

 俺の横に座ったナオミという女は切れ長の目にしっとりとした身のこなしのなかなかの美人だった。しかし苦手だ。あまり話も合わず、ひたすら彼女が作った水割りを飲み干し相槌を打つだけだった。

 1時間半ほどが経過したあとでシンちゃんはさすがに飽きてきたようだ。

「ああ。ムラムラする。狂ちゃん、次はヌキだヌキ!」

「え? シンちゃん。ヌキって?」

「すっきりしようや。せっかくだから。溜まってんだろう狂ちゃんも?」

「え? えええ」

「警察がそんなところに行っていいの?」思わず俺は口にした。

 ルミとナオミは警察と聞いて顔を見合わせて警戒を丸出しにした。

「関係ないって。もう仕事は終わった。さあ、出よう。おい、勘定」

 ナオミが請求金額を書いた紙きれを渡すとシンちゃんは顔をしかめた。

「なんだよ高っけえな、おい。まあいいや。領収書くれや。調査費で落とすからさ。あ、ニュークラはなしね……株式会社なんちゃらにしてよ」

 

次にシンちゃんはスマホで検索をしながら、繁華街の奥深くへと入っていった。

「よし、ここだ。割と評判のいいソープみたいだ」

「ええ?」

『ソープランド・アバンチュール』へ、シンちゃんはすたすたと入っていった。この前は女装クラブ、今日はキャバクラにソープだって? いったいどうなっているんだ。俺の運命は……。

 シンちゃんはネット検索によってその店の人気ソープ嬢を指名した。俺は勝手がわからず、取りあえず店に任せることにした。ほどなく呼ばれた俺は個室へと導かれた。

 そこに待っていた女はどこかで見かけた顔だった。どう見ても中年の女だ。

「アケミでーす。28歳でーす。よろしくね」

「あ。ああああ!!」

 忘れもしない『ネバーランド』で盗みを働いたあの女だ!!

 

 俺の「女難の相」はまだまだ続いているらしい。           



              続く



 さて、今日の京都競馬7レースは全く見どころなく終わった。

 気を取り直して明日は2日目、中山第7レースで勝負だ。

 

 中山第7レース 馬連 8-11、9-11、10-11


 中央競馬総投資資金 306,360円

 306,360円÷36÷3≒2,800円

 1点2,800円の投資だ!!

 では、また。


  

     続く



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