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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第4章  凍りつく街 8

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」

(2) 追跡者 その1



 今週は南関競馬を休んだせいで日中はやることもなく暇な日が続いた。

 本当は競馬のない時ほど様々な研究の時間に充てるべきなのだが、俺にはゆい吉先生や出江教授のような研究熱心さはない。一時は死ぬほどにのめり込み、寝食を忘れるほどに競馬の研究を重ねたこともあったのだが、確実にプラスになる予想法が確立してしまえばどうということもない。一日のレースの取り捨てや予想に要する時間だって小一時間もあれば終わる。本当ならもっと過去のレースにまでさかのぼって検証もするべきだろうが、一円にもならないのに労力と時間、情熱を注ぎ込めない。

 かといって何をするわけでもない。ただいたずらに日々を焦り、無為に時間を過ごし、砂漠の荒野をさまよっているだけだった。


 そして俺は久しぶりに『パラダイス』の休憩所を覗いてみることにした。


 雪が降りしきる中を路面電車がゆらゆらと運行した。電車を降りてマイナス4度に凍りつく街を、俺はゆっくりと歩いた。すると、背中に視線を感じた。

 誰かが俺のあとをつけている!?

 振り向くと誰もいない。真っ白なスノーマンが俺を追いかけていて、振り向いた瞬間に周りの白い雪に同化して消える。歩き出すとまたむくりと起き出し、俺のあとをつける。そんなアニメの中の世界を想像した。スノーマンはニタニタと笑っている……俺のことを心の底から笑っている。

……もちろん、そんな馬鹿なことがあるはずはなかった。


『パラダイス』の休憩室は閑散としていた。それはパチンコの店内も同じだった。あれほど賑わいを見せていた『パラダイス』も最近のパチンコに対する規制のせいなのか、客足はまばらだった。店内の放送にも活気がない。音楽だけは相変わらずの馬鹿でかい音量で流れていた。

 休憩室にはバシ男が一人ポツンと座っていた。あれほどバシ男をいじめ抜いていたタクランケや他の人々の姿もなかった。

「よう、バシ男君。久しぶり」

「あ。狂死狼さん。久しぶりっすね」

 バシ男は開いていた漫画雑誌を閉じて俺を見た。

「ここにはいつも?」

「ええ、まあ……」

「他の騒がしいメンバーたちはどうしたんだ?」

「ああ。最近はもうあんまり……」

「今はその、なんだ……いじめられたりはしてないの?」

「ええまあ。最近、誰もここに来ないし……もともと俺もちょっと駄目だったし……あ、いや俺は大丈夫。全然っすよ」

「うん。そうだろうけどね。それにしてもさびしいね……」

「ええ。まあ」

 あれほど活気のあった休憩室も今は閑古鳥が鳴いている。栄枯盛衰の影ありだった……。

 俺はかつてタクランケと争いあった席を陣取り漫画雑誌を読みふけった。

 その時……誰かが俺の肩を叩いた。

「ちょっとあんた。話しを聞かせてくれないかな。アタシはこういうもんだ」

 よれよれのコートを着込んだ中年男が警察手帳(?)を開いて俺に迫った。


           



              続く




 さあ、明日から中央競馬は三日連続の祭りだ。おっと、浮かれてはいけない。絶対に勝つというモチベーションを究極まで高めるのだ。そうしな『ギャンブル』を『投資』といい換えたところで同じだ。


明日の買い目はこれだ!!


京都7レース 馬連 3-15、4-15、14-15

中央競馬総投資資金 315,060円

315,060円÷36÷3≒2,900円


では、また。

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