第4章 凍りつく街 5
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」
(1) 友よ その5
「狂死狼君。いいところで会ったね。ちょっと、これから付き合ってくれないかな?」
ゆい吉先生の言葉を真に受けて俺は病院の外で待つことにした。
雪は容赦なく降り積もっていた。
△△市は人口200万人を超える都市でありながら、年間積雪量が5メートルを超えるという、世界一降雪量が多いことで知られる街だ。住んでみれば悪くない街なのだが、この雪にだけはどうしても閉口してしまう。雪がロマンチックだと思えるのは雪がめったに降らない地域の人々だけだろう。
日本なんてほんの小っぽけな国なのに、なんでこうも南北の気温差、降雪量に大きな違いがあるのだろうか。南国と北方圏とが混在する小さな島国日本。 だからこそ、日本はかけがえのない祖国なのだと思う。
「やあ、待ちましたか?」
やけに明るい表情のゆい吉先生だった。
「どこに行くんですか?」
今の俺はどこであろうとも、それこそ地の果てだって今日なら付き合うつもりだった。
「いや、大したところではないんだけどね。良かったら、その前に一杯」
「あ、いいすね。お供します」
俺とゆい吉先生は短い距離をタクシーで移動して居酒屋に入った。」
「私の卒業論文はね、『鼻くそ丸めてマンキンタン』ていうタイトルでしてね」
ビールを1杯だけ飲み干して上機嫌のゆい吉先生が言った。
「はあ? なんですかそれ」
俺は3杯目に突入していた。意味がわからずどうでもいい気持ちで聞き流していた。
「つまりプラシーボ効果っていわれるやつですね。大昔から知られているんですよ」
「はあ。俺そんなに頭良くないんで。意味がわからないんですけど」
「これはこの病気に大変良く効く特効薬です。っていって患者に飲ますと、鼻くそだろうが砂糖水だろうが、何故か本当に病気に効いちゃうっていうアレですよ」
「ああ。聞いたことはあります。それはでも、人間がもともと持ってる免疫力というか治癒力、それをちょっと刺激するとかっていう話でしょう」
「うーん。まあ、それぐらいの認識でしょうね。普通の人は」
「だって、先生。それでいいなら世界中の薬が全く必要なくなりますよ」
ゆい吉先生は真剣な顔で俺を見て言った。
「そんな単純な話ではないんですよ。たとえば逆を考えてみましょう。ある軽い病気の患者さんに、お前は不治の病だ1ヶ月後には間違いなく死ぬ。なんてことをもし、医者が毎日毎日患者に言い続けとしたら、どうなると思いますか?」
「へえ? 別にどうにもならないのでは」
「おそらく30%くらいの患者さんは、本当に死ぬでしょうね」
「はあ? それって、呪い殺すのと同じじゃないの」
「そういうことです。古来からある呪いというのはそういうものです」
「ええ。先生はそういう怪しい研究を?」
「ええまあ。ただし人間を生かす方向の研究ですよ!」
「具体的にはどういうことですか。本当に鼻くそを丸めたり?」
「うーん。たとえばですね。いつも四六時中笑っていると、癌患者の癌細胞がかなり減少するということが知られています。プラシーボ効果というのは潜在意識に働きかける、とてつもない威力を持っています」
「じゃあ、癌患者にお笑い番組で笑わせるとか、ずっとくすぐってやればいいんじゃないですかね」
「……もちろんそれも全く無意味じゃないんですが、効果はかなり薄いかもしれません」
「じゃあ、どうすればいいの?」
「それを研究している訳ですが、私は心からの笑い、感動が一番効き目があると考えています」
「ふーん。それで」
「狂死狼君なら、きっと私の良き協力者になってくれると踏んでいます。これから私の研究の一端につきあってください」
「はああ?」
それから居酒屋を出ると、俺とゆい吉先生はとあるバーへと、忍び込んだ???
続く
少々競馬の話しでも……続きです。
ビギナーズラックで当たると、同じようなケントク買いで何度か買うも全く当たらず。これじゃあだめだとばかりに先輩の話を参考に、新聞の見方、人気とオッズ、騎手や厩舎の思わく、持ちタイム、調教など、さまざまな競馬の研究を夢中でするようになりました。
しかし、研究すればするほどどつぼに嵌り、たまに当たってはそれ以上に負けが続く。的中の時の天にものぼる気持ちが不的中で地獄のどん底に引きずり降ろされる。終わりのない繰り返しの無間地獄が待ち受けていました。
文字通りの転落人生……家庭崩壊、妻、娘とも別れ、一人ぼっちで借金と養育費を支払うだけ。ただ生きているだけの抜けがらのような日々でした。
とあるブラックな会社で頑張ったおかげで借金、養育費を支払うことができました。
仕事に熱中し競馬からも遠ざかったある日、ふと魔が差したように一度だけ天皇賞春を買い、130万ほどの大当たり!
ところがそれもひと月ほどで溶けて消えてしまいました。
もういいや。もう競馬とはお別れだ。今度こそはと10数年間、競馬と無縁の生活でした。それが今になってまたもや未練がましく投資競馬を?
では、また。




