第4章 凍りつく街 2
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」
(1) 友よ その2
「俺、弟だよ。しゃもんの」
そういってにやける顔は兄そっくりだ。ああ、そうだった。あいつには双子の弟がいたのだ。同じ顔のくせに兄弟仲はあまり良くなかった。高校の時はクラスも別々で、一緒にいるところをほとんど見たことがなかった。まさかこんなところで会うとは。兄は破天荒だが弟は堅実派だと聞いていた。
まあしかし、正月の三日だというのにこんな場所にいる奴など、まともなわけがない。俺たちもそうだが。ゆい吉先生にしたって……。
「兄貴は残念だったね。あんなことになるなんてさ。葬式にも行けずに申し訳ない」
「あ、やっぱ知ってた……いやいいんだ。ほんと馬鹿なやつ。借金取りに追われて最後は当たり屋の真似ごとであんな目に。全くどこまで迷惑をかけりゃいいんだ。いなくなってせいせいしたよ」
すぐそばで聞いていたミウラが口をはさんできた。
「おい、そんな言い方はないだろうが。仮にもお前の兄貴なんだろう」
しゃもん弟をにらみつけた。
「なんだあんたは。関係ないだろが」
「ああん。ワイになめた口きいたらゆるさんぞ。やるのかオイ」
「まあまあ、ミウラもしゃもん弟も、正月からいがみ合うなよ。で、今日はどう。儲かってる?」
「ああ。今日は簡単だね。ここまで5万のプラスだ」
「へえ~兄貴と違って馬券上手なんだ」
「当たり前だ。俺はいずれ、これで食ってくつもりでいるんだ」
いや、それはどうだろうか。そんなことを口走る時点で、すでに公営競技の養分になっているんじゃないのか……。
その時。
「当た、当た、当た、当た、当たったー!!」
チャンゴの大げさな甲高い声が響き渡った。
「私も、あた、あた、あた、あた、当たった~~」
そしてゆい吉先生だ。まるでケンシロウの北斗神拳のごとく奇声を発して、慌てふためいている。
「なんだよ。当たったの。いくらついた?」
「やばい。3連単40万はつくよこれ。ほら、手が、手が、震えてる……」
「私も震えてる……これほら。なんと、複勝で……3倍はつくよ!!」
おもわず俺は両手を合わせてゆい吉先生とチャンゴをあがめたてまつった。
最終レースが終わると俺たち5人は繁華街へと繰り出し、そのまま新年会を始めた。ゆい吉先生は当直があるということでお茶だけを飲み、1次会途中で席を立った。
残った4人は腰が抜けそうになるまで飲んだ。チャンゴのおごりだった。いきなりしゃもんの弟が加わったこともなんら違和感はなかった。話してみるとなかなかいい奴だ。ミウラもすでに打ち解けているようだ。俺たちは心ゆくまで飲み続けた。さすがに4軒目ともなるとチャンゴも財布の中身が心配になりだしたが、かまわずに飲み続けた。
「狂さんいいのかい。カオリさんがあんなことになって……なのに急に、他の女に色目を使ってさ」
チャンゴが絡んできた。かなり目が座っている。
「なんだよ。お前に関係ないだろう。俺には俺の深い事情ってもんがあるんだ。すき好んでこんな目に会ってる訳じゃないんだ」
「はあ? 好きでやってるんでしょうが。ちょっとモテるからっていい気になってさ。新しいナースちゃんによろしくね」
「なんだよ。俺に絡むなよ……」
チャンゴが俺の腕に腕をからめてしつこく絡んできた。
「俺だって……俺だってさ……」握る手の力が強まる。
「うるさい、離せよ!!」
「なんだよ。女たらしが」俺を恨むように睨みつけてきた。
俺は思わずチャンゴの顔を、思い切りはり倒した。
「い、痛てええ」
「あ、す、すまん」
ミウラとしゃもん弟は酔いつぶれた顔でぼんやりと見ていた。
チャンゴは、俺にはたかれた頬をしばらく手で押さえていたが、やがてすうっと立ち上がるといきなり身支度をしてそのまま一人で店を出て行った。
後に残った俺たちはもう吐きそうな胃の中にふたたび酒を流し込んだ。
さあ、2019年最初の勝負の結果は。
1月5日(土)京都第6レースが 2-4 で的中した。しかし、6.2倍
プラス8,640円の微プラスだ。
明日1月6日(日)の勝負レース、中山第9レースと第12レースに決めた。
中山 9R 馬連3点 2-12 3-12 11-12
中山 12R 馬連 1-8 1-10 1-12
(総投資金308,340円÷36÷3≒2,800円)
1点2800円の勝負だ。
2019年、いよいよ勝負をかける時がきた。明日こそはズバッと決めたい。
続く




