第3章 果てしない荒野 4
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。しかし共犯者だと言い張る女が現れ……困惑のサバイバルの日々を綴ってゆく」
(2) 穢れた絆
「苦しむあいつに、とどめを差したのはあたし」
優香は平然と言ってのけた。
そんな馬鹿な。すぐには信じられなかった。確かに中島を刺した後で誰かに見られているような気はした。それが今、目の前にいるこの女だというのか……。
「あたしもね、いつでも切れ味鋭い大きなナイフを用意していたのよ。いつかあいつを刺すつもりで。あなたが刺した背中の傷跡めがけてもう一度、こう深くえぐるように突き刺してあげたわ」
「はああ?」
俺は絶句した。なんて恐ろしいことを……この女がそんなことを。それほどまでに憎悪をたぎらせていたというのか。
「あなたがあいつを刺すのを見た時は、ホント胸がすくような気分だった。でも、全然死にそうにないんだもの。だから仕方なくね。でもね、それでもあいつは死ななかったのよ。急所がずれていたからといっても、恐ろしいほどの生命力よ」
「ああそうだったよな。たしか重体のままで5日ほど経ってから息を引き取ったと、ニュースで見た」
「まさしく殺しても死なないゴキブリのようなやつ」
「じゃあ、とどめを差したことにはならないんじゃないのか。そのあと確かに死んだにしても」
「だからね、五日目の晩よ。あいつがいる病院を突き止めて病室に忍び込んだのよ。そこでいろいろと細工をしてあげたの」
そこまでして奴を死に至らしめた。看護師の経験と知識を活かした、ということか。
「そこでやつの息の根を」
「そうよ。だって、万が一回復されたりしたら、あたしもあなたも危うくなるでしょ」
優香はきれいな顔を真っ直ぐに向けて涼しげな声で言ってのけた。すでにさっき流した涙はなかった。
なんて女だ。境遇には同情するが、すさまじいほどの執念と度胸の持ち主だ……これははっきり言って苦手だ。
「それから今日までどうして?」
「GPSであなたがここ△△市に逃げていることはわかったから、あたしは病院の仕事を探して移動することにしたのよ。もう家族もいないし。あなたのこともいろいろ調べたわ。だって共犯者だもの。いつか会って全てを話そうと思っていたのよ」
「じゃあ、もしかすると、カオリがあんたの勤める病院に運ばれることも計画していたのか」
「まさか。それは本当に偶然だった。おどろいたわ。そっちからあたしのところにわざわざやってくるとはね。きっとあたしたち運命の糸でつながれてるんじゃないのかな」
そんな運命があるか! 俺はこれ以上ない二人のおかしな関係を実感した。同時に完全にどツボに嵌まってしまったようだ。
「で、警察の動きはどうなんだ。俺たちの足取りをつかんでいるのか?」
「それは良くわからないわ。一応は、通り魔による突発的な犯行ってことになってる。病院での細工も気づかれてはいないはずよ。だってすでに奴は瀕死の状態だったから。死因について不信感は持たれていないはず。ただ、あなたがよりによって中島の娘とくっついてしまったのはまずいよね。絶対に警察の目に止まるだろうけど。さあどうかな……」
「そうか……」
俺は混乱する頭の中を必死で整理しようとした。
つまり、先にやつを刺したのは俺に間違いないのだが、実際に殺したのは優香ということになる。となると彼女にしてみれば俺は共犯者ということになる訳だ。では、俺は殺人未遂罪ということなのだろうか? いや、今となっては同罪だ。俺だって殺すつもりで刺したことには変わりはない。ふたりで共謀して殺したということになる。知らぬ間に巻き込まれた部分が多少あるとはいえ……。
「それで、これから君はどうするつもりなんだ?」
「逃げましょう。お互い協力しあって」
「逃げる? どこへ」
「どこでもいい。地の果てまで一緒よ。あたしとあなたは運命共同体。こんな強い絆を持つ男と女ってそうはいないと思う」
優香はまっ直ぐに俺の顔を見つめた。
絆だと……いきなり若い女が運命を共にするなどと言われても……俺には地獄の業が待っているとしか思えない。
この世の深い闇の底にある、穢れた絆だ。
続く
さて、投資競馬だ。
今日も大井競馬で勝利を得ることができた。
本日第7レースが的中!!
900円×36.2倍=32,580円だ。
南関総投資資金はこれで 371,270円となった。(トータル11,270円のプラス)
わずかながらのプラ転だ。
明日の大詰め最終日、大井競馬の買い目はこれだ。
大井 第3レース 3連複 ⑥→1、4、8、14
(※15倍以下オッズは切り捨て)
南関総投資資金 371,270円÷36÷10≒1000円
1点=1000円の勝負だ。
中央競馬は今のところ大きなマイナスだ。できれば南関競馬だけでもプラスで締めくくりたいものだ。
明日は今後の展開についての予告篇、投資競馬のあらましや展望などをいつもよりは字数を割いて語ろうと思う。 そして正月三日までは投資はお休みだ。ではまた明日。
続く




