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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第3章  果てしない荒野 3

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。しかし共犯者だと言い張る女が現れ……困惑のサバイバルの日々を綴ってゆく」




(1) 疑惑 その3



 △△市の町並みは凍てつく白い雪に覆われ、マイナス4度の厳しい寒気にさらされていた。すでに正月休み気分の人たちが多く繰り出し、クリスマスとはまた違った賑わいを見せていた。

 俺は今朝早くメモに書かれた携帯の番号に電話した。至って平常と変わらない感じの平たん口調で彼女は会うことを了解した。

 夕刻を過ぎた頃、彼女の指示に従いとあるビルの地下にあるカフェに入った。

 優香はすでに一番奥のついたての影にある周りからは見られにくい席についていた。

 俺の顔を見た彼女はほっと安堵の表情を見せた。俺はだまって向かい合わせの席に座った。彼女の顔は上気しているようだった。こうして見ると大きな瞳に整った顔立ちが印象的で、見つめているとすうっと引きこまれそうな気がしてくる。

 コーヒーが運ばれた。一口だけ口にして彼女は切りだした。

「あたしは家族をあの男、中島に脅されて苦しめられ、全てを奪われたの。だから殺してやったの」

「ええ?」

 俺はしゃべり始めた優香の顔が次第に歪んでゆくのを、なす術もなく見つめながら聞き入った。

 優香が涙を落しながら話した内容を要約すると、こうだった。


 優香の父親は中島が役員を務める会社の下請けをおもな生業として成り立つ小さな工場を経営していた。ところが中島は良き取引相手ではなかった。ちょっとしたミスにつけ込んでは仕入値段を叩く、製品に言いがかりをつけ返品やクレーム交換、さらには賠償請求などと脅しをかけては揺さぶり、あらゆる陰湿な手段を講じて絞り取っていたのだ。優香の父親は経営難から精神をすり減らし、やがて体調を崩し重い病気を患った。母親もまた工場の手伝いに資金繰り、中島からの執拗な脅しに苦慮し、もともと病弱なこともあって病に臥せた。中島はそれでもなお、執拗なまでに両親を責め続けた。さらには看護師として働き出し家計を助けていた優香にまで目をつけ、両親、会社を救いたければ身体を差し出すように脅しをかけ、言いくるめては凌辱を繰り返したのだという。

 苦しみの中で両親は続けざまに亡くなった。優香は全てを中島に奪われ、心も身体もぼろぼろ捨てられたのだった。

 誰にも相談などできなかった。

 ただ、胸に深く刻まれたこの恨みを晴らすべく、いつかあの男を殺したいと思うようになっていった。

 そのための準備を虎視眈々と進めていたという。


 そして、あの夜『つぼへい』で俺が偶然中島を見かけたときだ。優香は眼鏡にマスクの出で立ちで奴のあとを付けて見張っていたのだ。

(ああ、あの時のあの陰気そうな女か。そうだ思い出した)

 優香は俺が中島を見張っている様子にすぐ気付いたのだという。同じ思いを抱いた者同士だから気付いたのだろう。優香はすでにその時、中島への復讐を俺がともに協力してくれるのではないかと感じていたのだ。

 俺がトイレに立った隙を見ると、何気ない素振りで近づき椅子に置いたままの俺のバッグのサイドポケットにGPS発信機を忍び込ませた。これは、いつか中島の持ち物に仕掛けるために準備していたものだった。

 中島たちが店を出ると俺はあとを追った。優香もまたすぐに後を付けた。


 そして俺が中島の行動にますます憎悪を募らせて背中を刺すまでのあの一部始終を、彼女は全て見ていた……という訳だ。そうだ、誰かに見られている気配を感じた。あれは優香だったのだ。


 そこまでの話しを聞いて、俺は辺りを見回した。近くに客や店員がいないかを確かめた。大丈夫だ、聞かれている様子はない。

「で、どうする気だよ。俺を警察に通報するのか?」

「はあ? なんで。そのつもりならとっくにしてる。第一、あたしもまだ捕まりたくない」

「だからさ、君が共犯者だっていうのはいったいどういうことなんだよ」

「あのね、中島は全然死んでいなかったのよ。あなたが使った凶器って、おもちゃかなんか?」

「え。なんだって」

 あれほど思い切り、ずぶりと刺したはずなのに。抜くのだって簡単じゃなかった、というのに。どういうことだ。

「あなたが去った後ね。あたし、あいつの体を確認したのよ。仕事柄すぐにわかったわ。これは死なない。苦しませるだけだって。それで、とどめを……」

 なんだって。俺はやつを殺してはいなかったというのか??

 ……俺はひどく混乱していた。


        


 今日は大井競馬場で東京大賞典が行われた。今年最後のG1レースだ。デムーロ、ルメール両外国人騎手ワン・ツーの決着。なんとも今年一年を象徴するような結果だった。日本人騎手よ、もっと頑張ってくれ!!


そして12レースで当たりがきた!!

4点で仕留めることができた。 800円×46.1倍=36,880円だ。


総投資資金はこれで 350,390円となった。(9,610円のマイナス)

ふうう。ひとまずは良かった。

南関競馬はまだまだ続く。


明日12月30日(日)の大井競馬の買い目はこれだ。引き続き2レースで勝負だ。


大井 第7レース  3連複 ⑦→3、9、10、11


大井 第10レース  3連複 ⑨→1、7、8、11、13


(※15倍以下オッズは切り捨て)

南関総投資資金 350,390円÷36÷10≒900円 

 1点=900円の勝負だ。


明日こそプラスに転じたいものだ。 




        続く



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