第3章 果てしない荒野 2
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。神のいたずらなのか、いつの間にか殺した男の娘と暮らす羽目に……究極のサバイバルの日々を綴ってゆく」
(1) 疑惑 その2
久しぶりの『イマジンハウス』で迎える夜はやはり味気なかった。カオリと過ごす人並な生活に慣れ始めていた身体には、ネットカフェの生活はあまりにも格差を感じる。だが、贅沢など言える身分ではない。俺はふたたびみじめな逃亡生活に逆戻りすることになった。
それにしてもあの優香という女は気になる。ただの頭のおかしい女なのか。事件報道を見て想像力をふくらませただけなのか……それにしても。
「あなたは私の共犯者なのよ」
どう考えても言うことがおかしい。仮に彼女が共犯者だったとしても、なぜ自分が主犯なのか? 俺が犯した罪を知っていて脅すつもりなのだろうか……イカれている。どちらにしろまともに取り合わない方がいいに決まっている。
あの女は病院を出る時、俺に携帯の番号を教えた。笑わせる。俺に気でもあるのか。とにかく一度会ってみる必要はありそうだ……正直、心のどこかで怖ろしくも感じている。
長い夜を過ごすために漫画の本棚をあれこれ探っていると、ミウラの姿にあった。
「お、狂さんじゃない。またここに出戻りかい。可愛い彼女はどうした?」
ミウラはおもにネットのライター業で食いつないでいるということだった。食えるだけの分を稼いだらボランティア活動とあとは様々なギャンブルに精を出している。競馬以外のカテゴリーではなかなか稼いでいるらしい。しかし、俺の女のことはこいつに関係ない。俺は顔に不機嫌さを出さないように注意して答えた。
「ああ……生理なのかもね。鬱っぽい感じだったから今日は逃げてきた。彼女、ときどき思い詰めることがあるからさ」
「ふふん。その顔には、もう終わったと書いてあるぜ」
「うるさい。関係ないだろう」
顔に出してないはずなのに……こいつは案外、意味チャンゴよりも人の気持ちが読み取れるのかも知れな
「図星か……まあ悪いことは言わない。あの子はあんたには無理だよ。次を探した方がいい」
いちいちむかつくことを言うやつだ。
「まあ、考えとくよ……」
「ところで狂さん、なんで漫画の主人公には殺人者や暗殺者が多いんだろうね。時代劇にしたってさ、正義の味方のくせにいともたやすく敵の手下をばっさばっさと切り殺すんだぜ、取り調べも裁判も無しにさ。悪党にだって家族や生活があるっていうのに。おかしくないか? しっかりと血まで描かれているからいきなり死刑に処したってことだよね……」
はあ……なにを言う?
「悪者なんだから。懲らしめるとか思い余って殺しちゃうとかって別にいいんじゃんね。フィクションなんだし。読者にうけるから作者はそう描くんでしょ」
「そうかな。そこには……人間の深い闇があるんじゃないのかな?」
「はあ。どういうこと?」
「たとえフィクションでもさ、どんな悪人であれ簡単に殺すことを気持ちよく感じるってのはいかがなものかね」
「ということは、つまり人には誰でも、殺人願望があるということ言いたいのか?」
俺は言いながらぞっとした。自分がまさにそうではないのか?
「まあ、そこまでは言わないけど……人の命を奪うということをあまりにも安易に描き過ぎてはいないかな。殺し屋ゴルゴ13がなぜ絶大な支持を受けるのか。そこには人間の危うい心理が潜んでるんじゃないかと俺は思うわけよ」
「普通はそんなこと考えて時代劇やマンガを読まないって。まあミウラは特殊な環境だから、そのへんは同情するよ」
「俺の生い立ちなんかどうでもいい。いくら作り物の娯楽であっても簡単に人を殺すのはマズイ、重大な影響を与えるかも知れないってことさ」
うん。本当にそう思うよ……漫画の中なら本当に良かった。実際に殺人を犯した者の身には当たり前だがミウラの言葉がずっしりと堪える。
明日、優香に会って確かめてみよう。共犯者とは一体どういうことなのだ。
人それぞれの人生はどんな創られた物語よりも複雑だ。
さて、JRA今年最後の投資競馬の報告だ。
今日も外れだった。
残念ながら、今年のJRAでのプラス計上は出来なかった。残念だが来年に期待だ。
12月29日(土)明日の南関大井競馬の買い目は決まった。2レースで勝負だ。
大井 第8レース 3連複 ②→1、3、6、13
大井 第12レース 3連複 ②→1、7、8、15
南関総投資資金 319,910円÷36÷10≒800円
1点=800円の勝負だ。(※15倍以下オッズは切り捨て)
明日こそはきっと来るはずだ!! そう信じたい。
続く




