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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第3章  果てしない荒野 1

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。神のいたずらなのか、いつの間にか殺した男の娘と暮らす羽目に……究極のサバイバルの日々を綴ってゆく」

(1) 疑惑 その1



「あとは本人の気力の問題だけかもしれません」

 ゆい吉医師はひょうひょうと言いのけた。

 良くわからないが、信用できる医者ではあるようだ。任せるしかないだろう。

 病室のベッドに横たわるカオリの顔からは次第に生気が失われていった。何も反応しない人形でありながら、暖かな体温と弾力性だけがわずかに人間のていを現しているかのようだった。

 ほんの短い間ではあったが、日々身体を重ね合った女を今、どんな感情で迎え入れるべきなのか。こんな無残な結果をもたらしてしまったのは俺のせいだ。あの時、あのファミレスで調子に乗って脅したりしなければ。いや、もっといえばカオリの父親をこの手で葬り去るなんてことをしなければ……。

 悔んだところで遅い。自信を持って切った馬が勝ってしまうとか、絶対に来ると信じた馬が出遅れるだとか。みんな同じことだ。

 そんなはずじゃなかった……なんて言っったところで始まらない。あとからなら何とでも言える。

 人生というのは馬券と同じだ。

 どんなに自信に満ちあふれた行動だとしても、結果はど外れに終わてしまうことがあまりにも多いのだ。

 いつまでも病室で塞ぎ込んでばかりもいられない。やがて警察からの連絡でカオリの家族がやってくることだろう。○○市からここまでなら、せいぜいかかってもクルマで3時間だ。カオリの家族にとって俺の存在とは、どうみても怪しいことだらけの男ということになる。

 俺は後ろ髪を引かれる思いで病院を後にした。カオリ……すまない。俺はお前を、たとえこの事故がなかったとしても幸せになどしてやれない。出来る訳がない。お前にしてみれば俺はまさしく疫病神だ。いや、死神だ。だからだまって消えることにする。いつかまたどこかで会おう。絶対に……。

 たとえそれが地獄の淵であってもかまわない……。


 俺はマイナス6℃の寒気で冷え込む街の中を、肩をすぼめて歩いた。そしてカオリの部屋へとたどり着いた。

 さっそく荷物をまとめた。といっても俺の荷物と言えばショルダーバッグに大きなリュックがひとつだ。普段日中は生活必需品を詰め込んだリュックをコインロッカーに預けて行動していた。カオリの部屋に転がり込んでからは部屋に置きっぱなしだ。今一度、荷物を確かめながら荷造りを始めた。なるべく俺の痕跡を残さない様に、注意深くカオリの部屋を整理した。

 すると、ショルダーバッグのサイドポケットに見慣れない四角い箱のようなものが入っていることに気付いた。マッチ箱ぐらいの大きさだろうか。いつの間にこんなものが?

 誰かのいたずらだろうか。

 とにかく急いで部屋を片付け、荷物をまとめて俺はカオリの部屋を出た。

 向かう先はイマジンハウスになるだろう。

 途中で入ったハンバーガーショップで昼食を取りながら、俺は謎の四角い箱の正体を確かめようとネットを探索してみた。

 すると、簡単に箱の正体がわかった。これはGPS発信機だ!!

 全く、今の今まで気づかいでいた。いったい誰が、なんのために?

(すみません。あなたは私の共犯者ですから……あの、えぬ島さん殺しの……)

 優香とかいうナースが言った不気味な言葉が思い出された。

 もしかして……あの女が?


 さて、今日の投資競馬の報告だ。

 今日の南関競馬の勝負は外れだ。


 明日は今年最後のJRA開催日。G1レース「ホープフルステークス」も行われる。有馬記念の後にもさらに庶民から金を絞り取ろうとするJRAの陰謀が見え見えだ。

 しかし、なんとしても一矢を報い、有終の美を飾りたいものだ。

 買い目は決まった。

12月28日(金)

中山 第9レース 馬連 4-9、9-11、9-12

中央総投資資金 308,700円÷36÷3≒2800円 

 1点=2800円の勝負だ。


これを取って、ぜひとも良い正月を迎えたいものだ。



続く



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