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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第2章 逃亡者の休息 23

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。神のいたずらなのか、いつの間にか殺した男の娘と暮らす羽目に……究極のサバイバルの日々を綴ってゆく」


 きよくもないこの夜 その6


 カオリにはああ言ったものの、さあていったい何をプレゼントしようか。俺はパソコンとにらめっこをして1万円程度で買える品物を探し始めた。

 思い返してみるとクリスマスには何ひとついい思い出がなかった。俺が小さい頃両親はいつも仕事でいなかったし、年の暮れにはたいてい借金取りが大勢押し掛けてきて経済的にもひっ迫していた我が家にはケーキだとかプレゼントだとかは縁遠い生活だった。父親は仏教徒の我が家にキリストさんの誕生日なんぞ関係ないわと言い放ったものだ。その代わりに、大みそかの年越しや正月を迎えるにあたっては貧乏ながらも盛大に振る舞ったことが思い出される。


 社会に出てからもロクな女と出会わなかったせいか、クリスマスにこれといった思い入れは皆無だ。大概はひとりぼっちのクリスマスを迎えることが多かったし、ひとり部屋で酒を飲んで過ごすのがお決まりだった。

 だからこの時期、街中に響き渡るサンタだトナカイだ聖夜だの、煩いほどのクリスマスムードというのが好きではなかった。

 しかし、ネットを探ってもなかなかこれといった品物を見つけることは出来なかった。仕方がない外へ出て探してみるか。かなり億劫ではあったが俺は地下鉄でデパートを巡ることにした。カオリは今日も仕事だった。彼女は仕事帰りに買い物に行くと言っていたから、俺はそのまま夕食も外で済ませるつもりだ。プレゼントはお互い当日まで秘密にしようという取り決めだ。


 どこもかしこも浮かれていた。どの店も、どの店も、クリスマス商戦のまっただ中だ。

 当たり前だろう。この時期を逃して売り上げを落とす訳にはいかない。どこの売り場でも必死さが伝わってくる。

 特にカップルの姿が特に目につく。皆寄り添いあい、手をつないで歩いている。この時期に急増するにわかカップルなのかどうかは定かではないが、幸せそうな顔だ。

 幸せ? 俺は今幸せなのだろうか。人を殺しておいて、その娘とクリスマスだと?

 急に俺はうろたえた。何を血迷っている。何故、俺は今ここにいるんだ……今すぐどこか遠くへ、カオリのそばから逃げて行方をくらませるべきじゃないのか? 俺はいったい何をやっている? 馬鹿にもほどがある……。


「プレゼントを本当? ありがとう。嬉しい。じゃあ、私もプレゼントします」

 カオリの笑顔が浮かんでくる。あの笑顔に応えることができるのか。その資格が俺にあるのか? 答えは否だ。決まっている……俺はひどく動揺した。

 クリスマスが済んだらあの部屋を出よう。もうカオリを苦しめるのはやめよう。俺は決意した。

 俺は約束を破って10万円ほどのブランド物の財布を彼女のために買った。

 これぐらいどうってことないさ。最後のカオリへの償いだ……




今日12月23日は早い時間にこれを書き上げた。

そのため、馬券の結果は今の時点ではわからない。

明日、まとめて報告しようと思う。



               続く

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