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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第2章 逃亡者の休息 21

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。神のいたずらなのか、いつの間にか殺した男の娘と暮らす羽目に……究極のサバイバルの日々を綴ってゆく」


 きよくもないこの夜 その4


「ワイ、これでも小さい頃はお坊ちゃんと呼ばれてたのよ」

 父親はそこそこ大きな食品加工会社の二代目社長で、ミウラは何不自由なく暮していたそうだ。ところがいつしか詐欺集団に目を付けられ、人のいい父親はすっかり騙されてしまい、会社を乗っ取られ身ぐるみをはがされた。それどころか、かなりの額の負債を背負わされ、家族5人は路頭に迷うこととなった。やがて悲嘆にくれた父親は一家心中を試みた……クルマもろとも海に突っ込んだのだ。奇跡的にミウラ一人が助け出されたという。

 チャンゴも俺も、ミウラほど悲惨ではないが今や天涯孤独の身の上は同じだった。似た者同士の世間にとってはゴミのような存在だ。

 それにしても、命を投げ出して見ず知らずの親父の命を救ったミウラの行動は尊敬に値する。比べて俺はどうだ。いかに悪党とはいえ、中島という一人の男の命を奪ったのだ。大悪党だ。まともに彼の友人ヅラして付き合うことなどおこがましいのだ。

 もしも真実をミウラが知ったとしたら、俺ははたしてどんな風に彼に蔑まれるのだろう。チャンゴはうすうす気づいているはずだ。俺は彼らとはこれ以上親しくはなれない。……そんなことを考えながら家路についた。


「犯人が見つかったの。確かめてみて!」

 部屋にたどり着いたのは午前3時を回っていただろうか。カオリはまだ起きていた。俺の顔を見た途端にそう言った。

「おい、犯人って。父親を殺した通り魔のことか」

「もちろん。決まってるでしょ」

(……いや、ごめん。そいつは目の前にいるんだが)

「どこのどいつだ。いったい、なんでわかったんだよ」

「私のことをつけ狙ってるのよ。間違いない。絶対にあいつが犯人よ!!」


 どうやら、いつも昼にカオリが行くファミリーレストランにあやしい男が出没しているということらしい。カオリの推理では、自分が通り魔殺人の犯人だとばれない様にカオリを見張っているのだという。どうにも話がおかしいが、彼女の表情は真剣そのものだった。明日一緒にその男の正体を探るために、一緒にファミレスで偵察しようというのだった。

「わかった。じゃあ、明日そいつを見に行こう……」

 俺は眠くてしょうがなかったから適当に話しを合わせてすぐに眠りについた。


「ゆるさない。絶対に許さない。絶対に同じ目にあわせてやる。同じ目に……同じ目に……同じ目に……」

 カオリは布団の中で、いつまでも俺のとなりでブツブツと呟いていた。



 さて、俺のくだらない日常はここまでにして、明日の中央競馬の投資についてだ。

 その前に、南関東競馬の方はここまで全く当たっていない。中央もしかりだ。

 いくら長い目で見るべき投資競馬といっても、今の状況はあまりにもふがいない。明日こそは気持ちよく当てたいものだ。


 明日12月22日の勝負レースは中山第12レースに決まった。

 5-7  7-11  7-13 (馬連3点)  

【中央競馬投資資金】300,870円÷36÷3≒2700円

 1点=2700円の勝負だ!!


 2018年の暮れ。このままずるずるといくのだろうか……それだけは避けたいものだが。



                続く



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