第2章 逃亡者の休息 18
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。神のいたずらなのか、いつの間にか殺した男の娘と暮らす羽目に……究極のサバイバルの日々を綴ってゆく」
きよくもないこの夜 その1
「おい、やめろ。ミウラ」
俺はミウラを羽交い絞めにした。俺よりも10センチは背丈が大きいミウラを抑えつけるのは、なかなか骨が折れる動作だった。。
「あ、あんたはイマジンハウスの……たしか狂死狼とかいったっけ? やめてくれ。こいつだけは許せねえんだ。この野郎。ふざけるな!」
「いいから、もうやめろ」
ミウラが掴みかかろうとしている男は、60過ぎのハゲた小柄で小太りの男だった。どう見てもミウラに対して怯えきっている。
「すまん、あてが外れたよ。悪いが情報は間違ってた……許してください」
男を見て、かたわらに控えたチャンゴが言った。
「あ。お前、コーチ屋のサブじゃないか。こんなところにまで出没してたのか? こんな狭い場外売り場に。また悪さしてんだ」
「ああ。す、すまねえ。悪いけど、金はもうない。全部さっきのレースにつぎ込んだ。すっかりオケラだ」
それを聞いたミウラは、鬼のような形相を見せた。
「はあ? お前、さっき見せたバッグの中にすげえ金入っていたじゃんか」
男はすかさずバッグの中身を開いて見せた。
「す、すまねえ。こ、これは全部おもちゃの札だ」
「この野郎っ! 儲かってるとか、ホラをふきやがってえ!!」
ミウラは右手を振りかざした。俺はもう一度ミウラを後ろから抑え込んだ。
「やめろよミウラ。で、いったい、お前はいくらやられたんだ?」
「おう。俺の今月使える小遣い、馬券資金の全部だ。1800円もやられた!!」
「え?」
俺はミウラを羽交い絞めにした腕を、力なく降ろした。そして彼の顔をじっと見つめた。
「なんだよ。俺の顔に何かついているのか?」ミウラは不思議そうな眼で俺を見つめ返す。
俺とチャンゴはため息をついた。
「いや、何でもない。その金、俺が持つよ。次のレース、力いっぱい勝負しようぜ!!」
コーチ屋の男は、俺たちが励まし合うその隙を見て、スタコラと一目散に走り去った。
南関競馬の二日目、川崎第4レースは2-8-9の三連複610円が当たったが、これはほぼ元返しだ。全く意味がない……。第10レースは残念ながら外れだ。
はあああ。いったいどこまで続くのか。長い長いトンネルは……
さて、明日の川崎競馬。勝負レースを2つチョイスした。
川崎第3レース ⑦→5、6、8、9、10 (10点)
川崎第12レース ③→2、4、5、6、8 (10点)
それぞれ3連複、軸1頭流しだ。
投資資金342090円÷36÷10≒900円 1点=900円ずつだ。
クリスマスも近い。ああ神様……お願い。どうかよろしく。
続く




