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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第9章  転がる石のように 7

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。本格的な投資馬券と命を食いつなぐサバイバルの日々を綴ってゆく」


 1  最悪のどん底 


 その7


1月5日(日)金杯の日、残念ながら競馬は惨敗に終わった。そのあと夕方になると、野村とアリサがやってきて、快気祝いを兼ねた新年会を始める事になった。

狭すぎる宿の部屋を飛び出して駅前の繁華街へと向かった。

ほとんど雪は積もっていなかったが底冷えするような寒い夜だった。

正月の5日だし日曜日でもあったが結構な人出が通りを埋めていた。

 アリサはさすがに手慣れた様子で何件かの暖簾をくぐり、そのうちの一件の居酒屋で話しを付けた。3人はそこで酒盛りを始めることになった。古い感じの一杯飲み屋という風情の店だった。俺達はテーブル席に陣取って酒盛りを始めた。

 俺は久しぶりに口にする酒に思いきり溺れた。

 それにしてもなんとも不思議な関係の3人だった。

 野村は若き頃、H大学の講師を勤めていたらしい。それがどこでどう足を踏み外したものか。今ではしがない派遣の家庭教師や事務仕事のアルバイトに大して金にもならない内職のような仕事で食いつないでいるらしい。色々と話を聞いてみると、どうやら教え子だった学生との奔放な恋愛関係が失墜の原因のようだった。男女問わずのフリーで奔放な恋愛に対する指向性が、学生たちの親にはとうてい受け入れられなかったということのようだ。しみじみと語る野村の表情は、ある意味ほれぼれするような男らしさにあふれていた。もっとも、彼の指向性は女らしさの方に向かっているようだったが、精悍な顔つきがなかなかそうは思わせない難しさがあった。

 アリサの今の立場についてはよくわからなかった。実家で折り合いがつかず居場所がないというのなら、こんな田舎でアルバイトに精を出すよりも、また△△市で夜の世界に戻った方がよっぽど身入りもいいことだろうに。それでも生れ故郷が恋しくて戻った以上しばらくはここで頑張ってみたいのだという。

 それから俺達は何件も飲み屋を梯子した。なかなか個性的な店が多い街だなと感じた。それぞれの店が我が店の特色をこれでもかと表現している向きがあった。だから飽きさせないのだなと思った。3軒目からは、いったい何がどうだったのかはあまり覚えていない。病み上がりで身体がまだ弱っていたことも災いしたのだと思う。

 気がついた時には、あきらかにそれとわかるラブホテルの部屋の中にいた。

 丸いベッドの上でお互い裸でアリサと布団にくるまっていた。

 アリサは巨体を大の字にして豪快な鼾をかき眠りに落ちていた。

 俺は不覚にも、彼女に何をしたのかすら全く覚えていなかった。



 続く




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