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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第2章 逃亡者の休息 15


「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。神のいたずらなのか、いつの間にか殺した男の娘と暮らす羽目に……究極のサバイバルの日々を綴ってゆく」





(15) 捕らわれの貧しい心 その2



「チャンゴ……そう呼ばれている。ごめん。気に障ったのなら許して。俺、ときどき『視える』んだ」

 俺は殴りつけようとした腕を下ろし、手を放した。

「『視える』とは。いったい何が視えるんだ」

「あ、例えばほら、そこの親父。今、馬券買いに走っただろ。たぶん4を軸に1、3、8、10の馬券を買うよ。確かめて」

「はあ?」

 面白いことを言う奴だ。俺は試しにおやじのあとをつけて、買った馬券を覗いてみた。すると……ビンゴ! ぴったしだ。4から1、3、8、10への流し馬券だった。

「なんでわかった?」チャンゴに詰め寄った。

「なんとなくね。例えば、資金がいよいよ底を突いて最後の勝負をするというような、切羽詰まった人のオーラというか、煮詰まった頭の中がなぜか視えるんだ。いつもじゃないけど、時々ね」

「すごいな。超能力じゃないか。じゃあ、それを馬券に活かせよ。大金持ちになれるんじゃないのか」

「はあ? 馬ッ鹿じゃないの?」

「なんで」

「あのね。あっという間に資金を溶かすようなへたれな親父の頭の中をいくら覗いたって、1円にもなる訳がないよ」

 そりゃあ、まあ確かにそうだ。何の役にも立たない超能力ということか。いやまて……こいつはさっき、俺が人殺しだと言った。ということは……

「おい、チャンゴ。お前は俺の頭の中も分かったというのか。まさか俺が人ごろしだとでも?」

 チャンゴは俺の顔をじっと見て、言葉に詰まった。

 「いや……わからない。あなたはどう見ても人殺しをするような人じゃない……とは思うけど、でも俺の中の何かがざわつく。だけど、怖いとか、そばに寄りたくないとか、そうは思わない。なんか不思議な感覚だ」

 こいつは嘘は言ってない。直感でわかる。

「じゃあさ、次のレース。俺がどの馬を買うつもりなのか、『視える』か?」

 チャンゴはもう一度俺の顔を見つめた。

「ふ。どの馬も買う気はないでしょ? 今日は様子見だもんね」

 なるほど。俺はなんとなくこいつが気にいった。しばらくつきあってみようと思った。


 夜も更けた頃、カオリの部屋へと戻ると、カオリはキッチンの前に立っていた。夕食の支度をしているようだ。ただいまと言っても返事がない。

 後ろからそっと近寄って見てみると、

 まな板の上のサンマ2匹が包丁で切り刻まれていて、ぐちゃぐちゃになっていた。

「本の汚れ……いたずら書き……折り目……本を返して……本を返して……あたしの本をちゃんと返して……返してよ」

 一人、ぶつぶつと呟きながら、包丁をがつんがつんと叩きつけている。

 俺は初めて彼女に恐怖を感じた……。



 今日の阪神7レース。またしても俺の軸馬9番コパノピエールは2番人気を背負い終始快調に飛ばしていたが、直線でずるずると……。

 とにかく、明日こそ!!!


 明日の勝負レースは 中山 第9レースだ。


  3-6  6-13  6-15


 総投資資金 309,270円÷36÷3≒1点 2,800円

 1点2,800円の勝負だ!!!



                    続く




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