表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
157/259

第8章  かなしき口笛  9

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券はいまいちだが、共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」

(1)  花菜の決心 


 その9


 花菜がベッドの中で話した、この街での暮らしには興味が尽きなかった。彼女の考えは素晴らしいし、だれも責めることは出いない。けれどそうなる前になにか手立てはなかったのだろうかとも思われた。

 花菜は地元の高校生活で憧れていた、バレー部の先輩に言い寄られて身も心も捧げたのだ。けれど、妊娠したことによって相手の男は動揺し、結局離れていった。それでも彼女は、生むことを選択した。

 よくある話だ。

 誰も花菜を責めることはできないし、未成年の責任能力を持たない相手を非難したところでラチはあかない。結局、花菜は父親である先輩を放棄し、若き未婚の母となることを選択したのだった。

 それでも器量が良い彼女には、面倒を見ると近寄った男も絶えずいたようだ。だけど花菜は、そのほとんどを断った。もう男はこりごりでもあったからだ。

 しかし、そんな花菜のもとに現れたヤクザ者、天見民治だけは違っていた。

 彼女を優しく受け入れて思いやりをしめしたのだ。

 そんな彼は言った。

「これまでよく頑張ってきたな。俺に任せろよ。きっと幸せにしてやるからな」

 その言葉を花菜は信じて、民治に溺れた。それから花菜は、詐欺の片棒を担ぐような仕事にも加担した。民治の困った

 顔を見るのを見かねたからだ。

 そのことを責めるのは誰にもできないだろう。民治はなかなか頭が廻る男だった。花菜をうまく利用してことを進めるのは長けていた。いつの間にか花菜はうまく利用されていたのだ。

 そうしてこの界隈、O市花園卍街の勢力図は大きく変わりつつあった。

 卍街の全てを統治していた教龍会会長川島重次は大腸がんの末期、ステージ4を噂され、もはや年内の引退は避けられないものとなっていた。


 俺は昼近くにホテルを出た。そのあとナカムラさんと昼過ぎにO市内ファミレスで落ちあった。

「どうです。ほのかさんから何か訊き出せました?」

「うん。まあな……なかなか、その辺は難しい女だったよ」

「というと?」

「……やることは全然よかったし、頑張ったんだけどネ。そのあとは結局……」

 ああ、なるほど。この人は久しぶりの新鮮な女の身体に溺れて、何も聞き出せていないのだろうな……。

「何か訊き出せたんですか?」俺は意地悪くさらに追い打ちをかけた。

「彼女は固く口を閉ざしていたよ……」

 どうやらほのかさんは、見た目は軽いように見えて、なかなか口は固いようだ。もしかしたら誰かに、義理立ててがあるのかも知れない。

 さあ、いったいこれからどうするべきか。

「調査費も出そうにないしさ。一度、事務所にもどろうか」ナカムラさんが言った。

「それもいいかも知れませんが、自分はもう少しここで調べてみたいことが。あ、ナカムラさんは先に戻ってもらっても」

「馬鹿いうなよ。新人の君が頑張ってるときに先輩の俺が戻れるわけないだろう。ここまで……所長、ウサミさん、陳さんとの仕事も上手くこなしてる有望新人の君だ。俺だって簡単に引き下がるわけにはいかないんだよ」

 それもそうだなと思った。

 決して自分が優秀だとは思わないが、それなりに頑張った結果がナカムラさんにも伝わっていたようだ。それはそれで嬉しいことだった。

 問題はその後だ。

 O市内での一大抗争は現実のものとなった。今度は黒井組が動き出したようだった。

「仲間争いだ、跡目争いだ? なんてくだらねえ。そったらくだらねえことで争うような奴は出てゆけ。俺がゆるす。全員破門だ!!」

 教龍会の一番の古株である理事長の黒井組組長、黒井亜瑠男が吠えたのだ。

 それからO市花園卍街は、空前の抗争劇へと発展していくのだった……



     続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ