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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第2章 逃亡者の休息 13

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。生きるか死ぬか、あるいは捕まってしまうのか……究極のサバイバルの日々を綴ってゆく」




(12) 呪縛 その7



「わたし、死のうと思います……」

 

 度重なるカオリからの着信を、俺は無視し続けた。

 これ以上関わっては、お互いの不幸になるだけだ。そんなことはわかりきっている。

 カオリからの20回目の着信のあと、流れてきたショートメールには冒頭の文言が書かれていた。

 おい、ちょっと待ってくれよ。

 俺はこんな夜遅くに出掛けざるを得ない羽目となった。


 しんしんと冷え込んだH道△△市の凍りついた道路を、滑って転ばぬよう、俺は慎重に歩き続けた。彼女の部屋に着いたのは午後11時を回っていた。

 玄関のチャイムを鳴らしても何も応答はなかった。もう、寝ているのだろうか。3回鳴らしても無駄だった。仕方ない。今日のところは諦めよう。

 と思ったが、気のせいだろうか。何故か心がざわついた。ドアのわずかな隙間に耳を当ててみるとシューシューと空気が漏れるような音がかすかに聞こえる。なんだか異臭がただよっている……ような気がする。


どんどんっ


 叩いても反応はない。ノブを回すと鍵は掛かっていなかった。俺はアパートの薄いドアを開けた。

「うッ!」

 中はむせかえるようなガスの匂いで充満していた。

 うす暗い部屋の中で、カオリはベッドの上で意識を失ったようにうつぶせに倒れ込んでいた。

 俺は、慌てて窓や玄関を開け放ち、ガスの元栓を探した。栓を閉めた後は新聞紙をばたつかせてガスを外へ追い払った。

 そうしているうちにカオリの意識が戻った。

「あれ、狂死狼さん。どうかなさいました?」

 まるで子供のような笑顔を見せて俺の顔を眺めた。

 次の瞬間、カオリは俺に、全く情熱的としかいいようのないフレンチなキスを俺に求めてきた。


(※フレンチキスとはベロチュ―のことです。これは本当です。解散しましたが、『フレンチキッス』というアイドルユニット名にはどうにも違和感を感じておりました……)


 あ、これは。もう、ダメだ……。

 俺は窓が開け放たれた寒い部屋の中で、そのままカオリの体をベッドの上で押し倒した。

 窓から見える夜空には三日月がぼんやりと光っていた。



 さて、前回得た非合法な資金をどう活用するか?


「狂死狼円月馬法」バージョン2をいよいよ発動させる時がきたようだ。


 しゃもんとの交流がきっかけだった。地方競馬にも、俺の馬券攻略法が通用するのではないかとひそかに研究を続けた。その結果、南関東競馬での約半年間の集計結果において、回収率130%の結果を得た。まだまだ検証結果としてはもの足りない集計量ではあるが、このまま指を咥えて見ていてもじり貧なのは明白だ。

 頃合いを見てバージョン2を実践していこうと思う。狙う券種は3連複となる。これまで通り、中央場所での馬連3点投資法は今後も継続するが、それに加えて地方競馬に投資を増やすことで、確実で大きな収益を目指していきたい。生きるために……。

 果たして吉と出るのか……あるいは凶なのか……。


           続く


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