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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第6章  競馬狂の詩 34

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」

(4)  大脱走


 その6


「さあ、じゃあ次行こうか。いよいよ最後のゲートだ」やれやれだった。炎の攻撃のおかげで服も乾いたようだ。大事な部分も軽やかな感じがして歩きやすくなった。 

「俺も連れて行ってくれ! 頼む」シンは立ち上がろうとするミウラにしがみついた。「俺は目が覚めた。こんなところでバーニングマンなんかやってられない。ここを出たいんだ」

「いいだろう。じゃあワイについてこい」ミウラはシンを助け起こした。まだフラフラしているが歩くことに支障はなさそうだ。思いがけず仲間が増えることになった。

 しばらく進むと最後のゲートが現れた。扉には荒野の風景とサボテンが描かれていた。俺達は立ち止まって考え込んだ。今度はいったい何のゴマだ? 

「ここは任せてくれ」シンがしゃしゃり出た。「おお。キーワードを知っているのか?」どよめきが起こった。

「いや知りません。気合いでなんとかしますよ」シンは平然と答えた。大丈夫なのか?

「えいやーきえええ。とりゃあああ」

やはり気合いでは開かなかった。だがそのあとシンは、扉に両手を宛てて思い切りの力で押した。すると、ギギギィという音ともに扉はなんなく開いたのだった。

「そんなのありかよ」「盲点だった」「自動ドアとばかり思っていたよ」「もしかしてこれまでの扉も人力で開いたのかな?」「それは今となっては藪の中だ……」

 ともかくゲートの中へ。そこは広い洞窟の様な造りだった。薄暗い照明に浮かんだのは岩肌を晒したごつごつした空間だった。扉のサボテンの絵はいったい何だったのだろうか?

 行く手には真っ黒な空間がどこまでも続いていた。

やがて、ゴロゴロゴロと地面を揺るがすような振動と音が俺達の前に襲ってきた。

 真っ黒な空間から黒い大きな塊が転がってくる。なんだあれは!? 逃げろ。だが、逃げる場所はなかった。扉は勝手に閉じてしまい、今度は全力で押しても動く気配はなかった。逃げ道はない。黒い塊が迫ってくる。

俺達は左右の岩肌の壁へとへばりついた。ゴロゴロゴロ。転がってくるのは巨大な岩だ。

「うわあああああ」

 岩は俺たちの5メートルほど手前でぴたりと止まった。「え?」次の瞬間、丸い岩から手足のようなものが突き出た。そして頭だ。見る見るうちに岩の怪物へと変化したのだった。

「ふははは。俺は岩のモンスターイワヤーンだ。お前たちをここから出す訳にはイカーン。お前達がイワーンとすることには聞く耳モターン」

「なんなんだこいつは?」

「インを踏んでるぞ。ラッパーか?」

 イワヤーンの目がつり上がった。それは可愛いつぶらな瞳だった。握りこぶしを振り上げて岩肌の壁へとぶつけると、どばーんという衝撃とともに壁はばらばらと崩れ落ちた。すさまじい破壊力だった。これにやられたらひとたまりもない。

「これはヤバいぞ。奴が気に障るようなことは絶対に言うな」

「しかし、どうやって逃げ出す?」

一同イワヤーンの次の攻撃に恐怖を抱いた。なんとしてもこの窮地を脱しなければならない。いったいどうやって?

「シン、お前の得意のヤツ。あれだ。炎だ。奴にバーニングだ!」ミウラが叫んだ。

「あ、はい。やってみます」シンはペットボトルの赤い液体を口に含んだ。そして思いきり炎を吐いてイワヤーンに浴びせかけた。

「ふはははハーン。そんなモーンが効くとでも思っているのカーン、ん、んんん?」

 イワヤーンには効き目はないようだった。しかし、上手くインを踏めなかったせいなのだろうか。イワヤーンは少しひるんだように見えた。

「もっとだ。もっと浴びせろ、ファイヤー!!」俺は叫んだ。

「ヒャハハハハー。無駄じゃあ」岩に炎……確かに効果は薄いだろう。だが、俺達には他に何も武器はなかった。ミウラもウイスキーを取り出し、吹き出して加勢した。

「痛くもかゆくもなイーワ」イワヤーンが迫って来た。右腕をぐるぐる回して大きく振りかざした。

 すると、天井から水が降ってきた。ぐるぐると回転しながら辺りに振りまかれた。

「え?」

水を浴びたイワヤーンのボディがきしみ始めた。ギシギシガタびしと嫌な音を立て始めるのだった。

「う、うわあああ。いやああああ」悲鳴を上げてイワヤーンはまるでポンコツのロボット人形のように崩れ落ちた。やがてピクリとも動かなくなった。

「や、やったぞ」「え? なんで」「こいつ極端に水に弱かったんだな」

「でもなぜ……」

「スプリンクラーだ!」

「なんでここだけにそんなものが……」

とにかく、俺達はまたしても危機を脱することができた。 



   続く


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