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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第2章 逃亡者の休息 10

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。生きるか死ぬか、あるいは捕まってしまうのか……究極のサバイバルの日々を綴ってゆく」



(9) 呪縛 その4 


 身体の節々が酷く痛んだ。革靴で蹴られた背中の打撲が酷い。動かそうとするたびに各関節がきしむような悲鳴を上げる。

 昨日は夜遅くまでカオリの身の上話を聞いた。親子の関係が悪くなって逃げるようにここ△△市へやってきて一人暮らしを始めたらしい。図書館での務めは1年になる。そこであのオカモトに会い、言い寄られ、身も心もゆだねてしまったようだ。ところが妻子ある身だとわかり、激しく口論が続いた末の暴挙に出たということだ。

 不倫関係などどこにでもある。

 だが、職場でのあの行動は常軌を逸している。

 カオリの話はときどき涙まじりとなり、俺はうなずきながら聞いた。同情すべき部分もあるが、ところどころに首をひねるような、何かが喉の奥に引っ掛かる違和感も感じた。とはいえ、この娘は親の仇を自分の部屋に招き入れた。

 知らぬこととはいえ、俺の心は身体以上に痛むばかりだ。

 俺はこれまでの放浪生活について、殺人の部分だけをうまくごまかしつつ、それ以外は敢えて正直に伝えた。

 おそらく、見下すような目で俺を見るだろう。すぐに部屋から追い出されるだろうと予感した。それでいい。その方がお互いのためだ。

 ところが。

「ずっとここにいてもいいんですよ」カオリは優しい笑顔を見せた。

「ええ??」

「というか、むしろ私をあの男から守ってください。また何をしでかすか……狂死狼さんがいれば心強いです」

 関節と同時に、胸の奥が悲鳴を上げた!!


 そして、今日の結果ははずれ。

 中京12R 軸馬9番ネプチュライトは3着。ヒモ2頭が1着、2着だった。

 ……まだまだ。これからだ。



 さて、続きだ。競馬においてまず不公平だと感じるのはスタート位置だ。人間の走るトラック競技では、きちんと計算されたそれぞれのスタート位置につく。競馬のゲートのように一直線に並ぶ訳ではない。これひとつとっても、競馬が非常にわかりにくくなっている要因だろう。

 さらに、考慮すべきファクターを上げると、芝・ダート。障害・ハンデ戦。加えて馬場状態。頭数、距離、馬体重、血統、馬齢、賞金、厩舎、調教、持ちタイム、右・左廻り。各競馬場の相違、直線距離の長短、坂の有る無し。パドック、返し馬、騎手の状態。脚質、位置取り、上がりタイム……まだまだたくさんある。これら全てを把握して買い目を弾きだすなどというのは不可能だ。

 しかも、一日36レースあっても全く同じ条件のレースなど一つもない。

 さらに20%~28%も取る控除率の高さ。これで回収率を長期的にプラスに持ってゆくのはとてつもない至難の業だ。


 そこで俺は「馬の強さ」+「同条件に近いレースに絞る」+ある『馬の習性』を考慮した「位置取り」に注目し、強い馬を中心に馬券を組むことにした。「人気筋でありながら割と配当が高いレース」にも注目した。

その結果、人気馬中心の馬連3点がベストであることを突きとめた。

 シミュレーションした結果、4年間400レースを同条件で買い続け、118%の回収率、的中率は約30%となった。

 これが今後も維持できる確かなものであれば何も苦労はない……はずなのだが。


 果たしてその結果は? おとぎ話として終わるのだろうか……。



         続く

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