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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第6章  競馬狂の詩 31

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」


(4)  大脱走 


 その3


 バツの悪そうな顔をした小間田の姿があった……こいつ、裏切ったな!? コマダあ!! 

それからの展開というのはもう、しっちゃっかめっちゃか。まるで早回しの映画フィルムを観るかのようだった。

 俺とミウラは目の前の幹部二人をぶん殴って活路を開いた。ウサミさんもすぐに呼応し、手当たり次第に警備の者どもを4~5人投げ飛ばした。鉄三郎と牧原、芳村も状況を察して加勢し、背後に忍び寄っては頭を叩いたり蹴飛ばしたりした。小間田はひいいっと奇声を上げて逃げ出した。ひるんだ幹部連中をしり目に俺たちは脱走計画を開始した。ただしいきなりだったため、準備不足は否めない。武器のひとつも持たず着の身着のままだった。

 ホクトベガは突然の逆襲に手立てを失い、茫然と成り行きを見守っていた。

 通路は迷路のように入り組んでいる。俺たちは宿舎を飛び出し、通路の平面図を頭に描きながら進んだ。しばらく行くと、ひとつ目のゲートが待ち構えていた。鋼鉄製の固い扉だ。競走馬の絵が描かれていた。

「開けゴマ!」鉄三郎が覚えていたキーワードを唱えると、いとも簡単に扉は開いた。俺たちは拍子抜けした。しかし、問題はそこからだった。注意深く進む俺たちの前後に、いきなり天井から壁が降りてきて閉じ込められてしまったのだ。左右の天井付近からは水が放出され始めた。ものすごい勢いだ。

「まずい、水責めだ!!」俺は叫んだ。

「なんて……ベタなんだ」ミウラがつぶやいた。

出口はどこにもない。みるみるうちに水位は上がってゆき、あっという間に肩の高さにまで上がってきた。

「どうする? 何か方法はないのか」「うわああ。俺は泳げないんだ」「いや、泳げたってどうしようもない」

ジタバタ騒いでいるうちについに天井付近にまで水位が上がってきた。

 意を決したミウラが水の中を潜り始めた。俺も後をついていった。床からわずか5センチほどのところにボタンがあった。『緊急脱出用』と赤い小さな文字のプラカードが貼ってある。思わず俺とミウラは親指を立ててガッツポーズをした。すぐにボタンを押してみた。「ブッブー」嫌な音とともにプラカードが切り替わり「ハズレ」と出た。後を追ってきた3人もそれを見て水をがぶ飲みしてしまった。

 俺は合図しながら上に移動した。まだ天井までにはわずかな隙間があった。思い切り息を吸い込んだ。他の4人もそれに倣った。

「きっと、他にもボタンが、何か手がかりがある。最後のチャンス、探し出そう」「おおー」

俺たちはもう一度潜り込んだ。しかし、他のボタンも手がかりらしきものも、何もなかった。だめだ、もうお終いだ。いや、まて。

 俺はさっきのハズレボタンをもう一度押してみた。反応はない。もう一度押す。駄目だ。続けてさらに3回押した。すると水の放出が止まり、排水溝が開いて水が吸い込まれるように流れ出した。

「やったあー」

俺たちは抱き合って喜んだ。

「よくわかったな。なんだったんだいったい?」ウサミさんが訊いて来た。

「さあ……わからない。でもなぜか、これしかないと思ったんだ」俺にも理由はわからなかった。

「ひ・ら・け・ご・ま。ブレーキランプ5回点滅……ドリカムかよ!!」ミウラが言った。「それなッ」

俺たちは泣きながら笑った。

しかし、笑っている暇などない。さあ、先へ進まなければ。びしょ濡れのままで俺たちは駆け出した。

 しばらく行くと二つ目のゲートがあった。今度も競走馬の絵が描かれているが今度は上下逆さまに描かれていた。

「なんだこの絵は?」鉄三郎は「開けゴマ!」と唱えてみたが、反応はなかった。

「さあどうする」俺たちは考えた。答えは見つからない。巻原が扉の近くへ行き馬の絵に注目した。

「上下反対か……てことは。うーん。駄目もとで、まごけらひ!」すると、瞬く間にゲートが開いた。

「子供のクイズかよ……」俺たちは先へと進んだ。

 するとまたしても前後の扉が閉じられた。そして今度は鋼鉄の扉が前後から俺たちを挟むようにゴゴゴと不気味な音を立てて迫ってきた! 

「マズイ。挟み打ちだ。つぶされるぞ!!」

 なんてベタな展開なんだ……。



 続く


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