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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第6章  競馬狂の詩 27

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」

(3)  巨大な悪の組織



 その10



 鉄三郎はミウラのことも調べ上げていたのか? 彼も幹部候補なのだと言った。ミウラはそれを当然のごとくに受け止めているようだ。またしてもまるで意味が分からないことだった。鉄三郎との接点はいったいいつ、どこで? なぜ俺たちにはだまっていたのだ。

「君はホクトベガ、いや北斗明菜を追ってここへ来たんだろう」鉄三郎はミウラに言った。

え? ミウラはかつて助けた自殺志願者がここにいるといった。それがホクトベガだと。名前は北斗…明菜……て、おい!

「ふふん。ワイのことは全部お見通しって訳か。あんたの立場ってのも、相当重要なポストと見た。まあ四天王と接触することが出来る上に、隙を見て殺せるほどの人物だ。大したものだ」ミウラは吐き捨てるように言った。

「そんなことよりも自分の心配をしろよ。北斗を変えさせることが出来なかったのは君自身のふがいなさだろう」

「ふん。すっかり変わっちまってたよあの女。上手く洗脳したもんだな」

「そんなことは知らんね。どちらにしろ君ももう、ここから出ることは出来ないんだ。ならばここで、幹部として働くのが一番だろう」

「……」ミウラは答えなかった。

ミウラよ。お前はホクトベガを連れ戻すつもりで失敗したのか。それがもとで地下に送られたということか。一人で説得を試みたのはお前らしい。しかし……

「冗談じゃない。俺はイヤだね。悪党の仲間になんぞ誰がなるものか。馬鹿にすんじゃねえ」ウサミさんは激しく抵抗した。もちろん俺も、ここで幹部に居座る気持ちなど毛頭ない。

「鉄三郎さんよ、何があんたをそうさせるのかはわからないけど、今やあんたも相当やばい状況だろうよ。組織が簡単にあんたを許すとも思えない。俺らを説得して幹部にしたところで、いずれはズドンッだ。ならば4人で協力して脱出を図ろうじゃないか」俺はウサミさんに加勢した。

「馬鹿なことを言うな。絶対に無理だ。この地下にはとんでもない罠が随所に仕掛けてあるんだ。ただ犬死にするだけだ」鉄三郎はかたくなに首を縦に振らなかった。

「だけどな、俺たちが戻らなければいずれ警察もやってくる。どの道こんなやくざな組織に生き残る道なんかないのさ。いいから脱出しようぜ。俺たちがこのキチガイじみた悪の組織をぶっつぶす先鋒になるんだ。なあに、素人が造った小細工なんぞどうにでもなる」

「あんたがその気ならワイは手伝うぜ。まあ、どっちだっていいんだ。面白ければな」ミウラはいつもの不敵な顔つきに戻っていた。

 鉄三郎は眉間にしわを寄せて押し黙ったままだった。

「よしっやろう! こんな穴ぐらで暮らすなんて俺はイヤだ。とことん戦ってやる」俺の腹は決まった。

「よし、じゃあ3対1だな。多数決で決定だ。あとはいつ決行するかだが」

ウサミさんはそう言って鉄三郎をじっと睨みつけた。

「警察が踏み込むとしたらいつになるだろうな……」鉄三郎は眼をそらしながらも口を開いた。

「判断は難しいが一週間以内だろうと俺は見ている」ウサミさんが答えた。

今頃は間違いなく所長も優香も動いている頃だろう……これだけの組織を相手に、果たして簡単に一斉検挙などできるのだろうか。過去にも凶悪な宗教団体を警察が総力を挙げて検挙した例はあるが……ここは何しろ、地中深くの別世界だ。果たしてどうなるものか。

「よし。じゃあ決行は三日後だ。それ以上長引いたらたぶん無理だ。俺は君たちを説得していることにしよう。そのための猶予期間を三日もらうんだ。たぶんそこに油断も生まれる。その間に各自、施設内をくまなく観察することだ」

 鉄三郎の決心の言葉に全員が深くうなずいた。



       続く 



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