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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第6章  競馬狂の詩 26

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」

(3)   巨大な悪の組織 


 その9


 畳が敷かれている広間の真ん中にミウラが後ろ手に縛られたまま座っていた。

ミウラよ、お前もか?

 俺たちは部屋の中へと突き飛ばされた。

「今日は心ゆくまま休むがいい。明日からは地獄だぞ。ははは」シンボリは笑いながら部下に縄をほどくよう指示した。

「お前たちは厳重な監視下にある。24時間徹底した監視システムが小指の上げ下げ、呼吸の数までも把握しているってことを忘れるな。どうやったって逃げることなど不可能だからな!」ディープが吠えた。

「仮に逃げようなんて思ったら、4つのゲートを潜り抜けなくちゃならないのよ。各ゲートに待ち受ける罠で必ず命を落とすことになるわね。おほほほ」ホクトベガの憎らしい顔がゆるんだ。

 その時、ミウラはうなだれた顔を一度上げ、ホクトを見て睨んだ。

 幹部たちは笑いながら宿舎を出ていった。外から部屋をロックする音がした。

 ようやく縛りからは解放された。しかしそれは解放とはほど遠い、監禁状態の始まりだった。おれたちは地下の金採掘現場に隔離されてしまったのだ。これが奴らの狙いだったのか……。

 借金と薬漬けにして労働力を確保する。こんな馬鹿な組織、なんとしてもぶっ潰してやりたい。しかし、そのためには俺たちはあまりにも無力だった。

「まずは鉄三郎さん、あんた本当に二重スパイだったのか? 本当のことを言え」俺はうなだれる老人に訊かずにおられなかった。

「ああそうだ。すまん。前にここに隔離されそうになった時にな、奴らにそそのかされたんだ。外に出て、使えそうな骨のある奴を連れてこいってな。むしろ、我らの組織に真っ向から敵対するような奴がいいってね。それが出来たらこれまでの借金をチャラにする、しかも大金を払うってね」

「それでわざと薬漬けになった芝居をして俺たちを誘い込んだって言うのか」

「その通り。あのスナックで飲んでいた時、あんたが探偵の仕事をしていると耳に入ってきてな、一か八かの芝居を打ったんだ。何のためだと思う?」

「知るか、そんなの。ずい分と手の込んだことをするもんだな」

「ああ。そうだよ。それほど人が欲しいんだ。人材不足なんだよここも。作業員はいくらでも増やすことができるさ。しかし、所詮は簡単に借金に嵌り、薬漬けにされるような無能な連中ばかりだ。そうではない、タフな人材が欲しいんだよ。早急にな」

「どういう意味だ?」

「いいか、明日からここで死ぬまで働かされることになるぞ。毎日毎日とてつもなく疲れる肉体労働の日々だ。だけど、今ここで木原元気に永遠の忠誠を誓いさえすれば、即幹部になれるということだ。それも君らならいきなり中級幹部だ。さあ、どうする」

「ああん?」ウサミさんは鋭い視線を鉄三郎に送った。

「幹部ならば地上と地下を行ったり来たりできるしシャバにも出られる。給料だって今の3倍は約束される」

「あんたはここのスカウトだったのか」

「まあ、そういうことだ」

「だったら何故、四天王の一人、ナリタブライアンを殺したんだ?」

「そ、それは……。今は言えない。悪いけどそれだけは……。いずれ時が来たら、必ず話す」

「つまり、あんたは俺たちをここで働くように説得さえ出来れば、ナリブー殺しも許されるのか?」

「いや、まあ、その。その通りだ……そのために一緒に放り込まれたんだ。なあ、考えてくれよ。ここで死ぬまで肉体労働に明け暮れるのか、幹部としていい思いをするのか。ふたつにひとつだ」

 俺はだまって聞いているミウラの方を見た。

「もう一人ここにいるぞ。彼はどうなる?」俺は言った。

「ミウラ君だね。君も幹部候補だ。即戦力だ。どうだい一緒にやろうじゃないか」

 ミウラはむっくりと顔を上げて言い放った。

「ああ、いいね。俺もそれを願っていたところだ……」

 なんだと! 

 ミウラはまともな眼をしていた。だが、その瞳の奥は鈍く濁っていた。



   続く



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