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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第6章  競馬狂の詩 24


「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」


(3) 巨大な悪の組織 



  その7


 そこには木原元気の姿があった。

「やあ、みなさん。ごきげんよう」俺たちを見ると、涼しげな落ち着き払った態度で言ってのけた。いつもの黄金の衣装とは違う、浴衣のような質素な着物を着ていた。なんなんだこの若者は? いったいどういう育て方をされてきたのだろうか。いや、そんなことは今はどうでもいい。ここはいったいどこなのだ? これから俺たちにはどんな仕打ちが待ち受けるのか……相当やばい状況であることは間違いない。

「こ奴らをどうなされますか?」ルドルフが言った。

「うん、そうだね。じゃあまず、ことの経緯を岩元さん、あなたからお話を。なぜナリタブライアンを殺したのですか?」

「いや、あれは……仕方なかったんだ。奴は薬物の権威だ。どんな人間も自由に操れるなんて悪魔の考えに取りつかれていた。だから……だから俺はあいつを殺した」

鉄三郎が苦しそうな顔で答えた。

え? こいつはいったい何を言ってるんだ。俺とウサミさんはこの話の流れを互いに胡散臭いという思いで聞いていた。

「そうですか……まあいいでしょう。でも、ナリタは当道場を運営する上で、なくてはならない人材でした。なのにあなたは私的な感情で殺してしまった。今後いったいどうするおつもりですか」

 木原元気は落ちついた態度を崩さなかった。鉄三郎は逆にうろたえていた。

「いえ……あの、すみません。もう一通り薬物の臨床試験は済んだことだし奴がいなくとも、精製のノウハウは全てこちらの手の中に……」

「うーん。ですけど……だからといって命を奪うなんて。ちょっと行き過ぎではないですか?」

「冗談じゃない。やつは薬物の知識と権利を悪用して多大な被害を生んだんだ……いやいいさ。あとは好きにしてくれ。俺の役割はこれで終わったよ。なあ、そうだろう」

「ご苦労様でした。二重スパイのお役目」

え? 鉄三郎が二重スパイだと? 俺はわけがわからなくなった。いったいどういうことなんだ。

「とにかく、あなたたちはここで働いていただくことになります。多少劣悪な労働環境ですが、戦前のタコ部屋なんかに比べたらはるかに良い環境ですよ。まあ、自由はありませんけどね」

「いったいここはどこなんだ。俺たちに何をしろと言うんだ」思わず吠えた。このまま捕らわれの身でただ働きなどしたくもない。だが、それを許す気配は微塵もない。

「ここはですネ。△△市中心部から10キロ近く離れた山の中。近くに、古くからの鉱山があることをご存じかと思います。実は金を採掘できる新たな鉱山が発見されたのですよ。それがここです。でも合法的に採掘をしている訳ではありません」元気が答えた。

ああ、そうか。ここは非合法な金鉱山なのか。ということは、死ぬまでここで働けということか。ありがちな多重債務者がたどり着くという最後の生きる場所なのだろうか?

「今日はまあ、これから宿舎でゆっくりしてくださいネ。明日からはそれぞれの部署で、採掘作業に精を出すようお願いします」木原元気はそう言った。

我々の不信感が冷めやらぬ中で、岩元鉄三郎はただうなだれていた。

本当に二重スパイだったのだろうか? 全くふに落ちなかった。それはやはり、岩元鉄三郎という男をを信用していたからなのだ……。

だがそのことよりも、鉄三郎がときおり見せる木原元気への忠誠心。それが最も不可解に思えた……。

 


    続く

 


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