第2章 逃亡者の休息 9
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。生きるか死ぬか、あるいは捕まってしまうのか……究極のサバイバルの日々を綴ってゆく」
(8) 呪縛 その3
「大丈夫? 狂死狼さん」
カオリが心配そうな顔で俺を見ていた。
「え? ここは……」
「良かった。気がついてくれて。ここはあたしの部屋。1DKの古いアパート」
部屋の中を見渡すと、若い女性の部屋とは思えないほど質素な空間だった。殺風景と言ってもいい。さほど広くもない部屋が広々としている。
「俺。どうしたんだっけ?」
「ぜんぜん覚えてないのね。お願いだ。警察だけはやめてくれって叫ぶから、仕方なく私の部屋に運んだのよ。オカモトとふたりで」
「オカモトって、あのポマードのことか?」
「そう」
「なぜ、あいつがそんなことを……協力するって、おかしいじゃないか?」
「あたしが脅したから。奥さんに何もかも話すって。それと、傷害罪で訴えるって。そしたらあいつ、ぶるぶる震えてたよ。正気に戻ると、ホント弱い男」
「あいつと協力して、俺をここに運んだっていうの?」
「そういうこと」
「で、その……あいつとは?」
「もちろん、別れました」
カオリはきっぱりと言いのけた。ということは。
俺は、殺した男の娘に助けられたのか?
なんてことだ。俺はどうやら、神様の悪戯にもてあそばれた、ただのちっぽけなモルモットのようだ……
そして、競馬は今日も負けだ。
俺の全てを託した田中勝春はマイスタイルとともに快調に逃げたが、直線ずるずると後退、8着で終わった。
勝春も歳を取ったなあという印象でレースは終わった。
仕方がない。これが競馬と言うものだ。
ここで少し、俺の競馬に向かう姿勢について話しておこう。
これまで、ブログを始めてから1勝6敗。初め360,000円だった資金は33,030円のマイナスで、現在326,970円となっている。
なんだ、まだそんなものか。
決して負け惜しみで強がるわけではない。俺の投資競馬においては、最大30連敗を覚悟している。だからこその資金36分割だ。つまり、資金の半分が消えることも想定内だ。それでも勢いにさえ乗れば、資金は必ず増えてゆく。
馬券訴訟で有名な某、卍氏の場合も10分の1にまで資金が減ることが何度かあったという。そう、まだまだこれからだ。気の長い話ではあるが。
さて、普通に考えると、競馬というのは単なる馬同士の競争だ。だったら強い馬がいつも勝つはず。人間が走るレースなら、だいたいいつも強いランナーが勝つ。番狂わせなんかそうそうない。
ところが、競馬はそうじゃない。競馬を死ぬほど研究した人々が寄ってたかって判断した強い順が人気順のはずだ。なのに、なぜか最低人気の馬だって勝つことがある。おかしいと思わないか? それはいったい何故か。
いつも同じ結果にならないように、JRAが意図的に番組を仕組んでいるからだ!!
一番弱いはずの馬でも勝てる可能性のある番組作りを、JRAは意図的にしているということだ。
そこに気付くと気付かないとでは、大違いだと思う。
だからといって、出目論、陰謀論、サイン論、競馬界の互助システム論を唱える訳ではない。そんなもので勝てるわけがないと思う。
では? いったい何が……続きは次回。
負けている奴の話など、取るに足りないおとぎ話、かも知れないが……。
続く




