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逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
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第6章  競馬狂の詩 21

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」

(3)   巨大な悪の組織



  その4



 朝の清掃の時間だった。憂鬱な気分と重い体を引きずって俺は居室であるグリーンルームの清掃を隅々まで絞った雑巾で拭いていた。どこかで遠くから悲鳴のような声が聞こえてきた。続いてばたばたと廊下を走り抜ける足音が響いた。やがて足音は次々と増えてゆき、ざわめく声がこだましていった。

「大回廊バッケンジャーに人が!」

「血まみれだぞ!」

 声がで聞こえてきた。部屋の外は騒然とした雰囲気となっていた。

 鉄三郎があたりを伺った。ウサミさんと目が合った俺はもう飛び出していた。廊下は人であふれていた。みなバッケンジャーへと向かっていた。監視役の幹部たちも任を放棄して向かっている。

すでにバッケンジャー内部には大勢が集まっていた。舞台わきで幹部連中が周囲を遮るように輪になっていた。

 人ごみを押しのけて俺とウサミさんは前へと進んだ。いったい何が起きたのか確かめる必要がある。かなりの抵抗や怒声を交わし、潜り抜けて幹部たちの前に躍り出た。

「下がれ。なんだお前たち。来るんじゃない」すぐに俺たちは体を押さえられたがそれでも状況をしっかりと目に焼き付けた。

 部隊の隅に上半身がほぼ血まみれの男が倒れていた。ナリブーだ。どう見てもすでにこと切れているようだ。かっと見開いたむき出しの眼球が宙をにらんだまま硬直していた。

酷い。いったい誰がこんなことを……生々しい命の抜け殻となった人間を間近に見るのは何とも言えないいやな気分になる。胸につっかえたモノがみるみるうちに膨らんできて、肺を圧迫し呼吸を押しつぶすようだった。

 間もなく武力行使も辞さない幹部連中が集まり防壁を作り始め、俺たちはバッケンジャーを追い出された。

「直ちに各ルームに戻り、各自単独修行を開始せよ」

 シンボリルドルフが吠えた。集まった者たちはいっせいにその場を離れた。

 

 重い足取りで歩きながら、俺は鉄三郎とウサミさんの顔色を窺った。いずれも動揺を隠しきれずに憔悴しきった様子だ。この事件の顛末が一体どうなるのか、俺たちのどのように関わってくるのだろうか。いずれにしても良くない予感しかしない。

 グリーンルームに戻ると、住人たちはそれぞれが動揺を隠しきれずに小声で憶測を話し合っていた。俺はまとまらない思考をぐるぐると頭の中に描くだけで精いっぱいだった。

 やがて朝食の時間となりイートルームへ移動した。いつもの通り具のない味噌汁冷や飯に漬物だけのと粗末な食事に向き合ったが、全く食欲が湧かなかった。そして何かが足りない気がした。なんだ。

 そうだ。ミウラの姿がない。朝の清掃の時からだ。いったいどこに消えた?

 まさか……


        

  続く


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