表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃亡馬券生活   作者: 狂死狼
108/259

第6章  競馬狂の詩 20

「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。共犯者優香とのあらたなるサバイバルの日々を綴ってゆく」


(3)   巨大な悪の組織 



  3

 


 道場内部、建物の構造がおぼろげながら見えてきた。

簡単に言うと、大回廊バッケンジャーを中心にして四方へと各部屋が広がってゆく感じだ。中心により近い部屋、高い階の部屋が上級クラスの居室となる。いちばん外側を囲むように食堂や各教室、運動施設、娯楽ルーム、フアンルームなどが配置されてあった。廊下がまるで迷路のように入り組んだ形を取っているのは、当然、脱出しにくく、かつ他者からの攻撃を受けても守りやすくといった意図だろう。全体は四階建てとなっており、バッケンジャー大回廊だけは吹き抜けの造りだった。屋根が開閉式になっていて天気が良い日に開け放つと、中庭のような空間が生まれる仕組みになっていた。今のところまだ屋根が開かれたところを見てはいないが。

 同じ時期に入門した仲間たちは見る見るうちに衰弱し、精神崩壊を起こしていった。その原因があの食事と薬物によるものであることは明白だった。それでも、何が何でも競馬で身を立てるのだと本気で思っている連中だけは鋭い眼をぎらつかせながら修業を続けており、誰の目にもピリピリと緊張感を漂わせているのがわかった。

 俺にはもういい加減うんざりする道場での暮らしだったが、ただ俺よりもすでにウサミさんが限界を過ぎていた。薬物の影響はないはずなのだがどこかふらふらしていて、目の焦点が定まっていないことが多い。眠っている時もうわごとが聞こえてくる。

「止めろ、止めてくれ。俺は、俺は競馬なんか別にどうでもいいんだよ。好きでもないし……」びくりと目が覚める一瞬だ。皆が寝静まる暗闇のグリーンルームの中、飛び起きる羽目になる。周りを見渡すと誰もが鼾をかいてウサミさんの寝言など聞いちゃいない。聞いていたとしてもそれを告げ口したり悪用するなどといった元気が残っている者もいなかった。俺はほっと胸をなだ下ろしてふたたび眠りについた。正直、ウサミさんの存在を少々お荷物に感じていたころだった……。

 幹部連中が話す内容から、今週末の中央競馬において我々グリーンクラスの最終試験が行われる予定となった。これまでの修行で培った能力を活かして、馬券を当てて修行にかかる費用を稼ぐという趣向だ。土日の開催で好きなレースを五つ選んで馬券勝負せよ。今回の修行に掛かった経費10万円と次のステップであるレッドクラスへの進級費用、会わせて50万円ほどを稼ぐことが合格ラインだ。

 どう考えても簡単じゃない。幹部連中や木原元気が買い目を教えてくれて大当たりバンザイではないのだった。全てを自分の腕でつかみ取れ!! ホースの力とともに……が原則だ。

 合格できなければどうなるのか? いつまでもグリーンクラスに足止めになるのかもしくは……

試験の結果を見なければ分からないのだ。鉄三郎はちょうどこの試験の前に逃げ出したという。

 試験に合格した者はそれ相応の恩恵はあるようだ。外出許可もその一つだ。

誰もが色めき立ち週末の検討を始めていた。

すでに1週間が過ぎようとしている。優香がなんらかの手段に訴える頃となりつつある。出来ればそろそろ決着をつけたい。試験など俺にはどうでも良かった。

だが、これだけ道場内をくまなく調べたにもかかわらず、相変わらず捜索者の姿は闇の中だった。こうなれば上級幹部、四天王の誰か一人を隙をついて拉致するしかないだろう。となれば狙うのはホクトベガ、もしくはナリブーということになるだろう。ひそかにウサミさん、鉄三郎と打ちあわせを続けていた。

 そんな折に事件が起こった。

 ナリブー、ことナリタブライアンが何者かによって殺害されたのだ。



            続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ