第2章 逃亡者の休息 8
「俺は殺人者だ。行方をくらませ裏街道を歩き、人目を避けて生きるしかない。投資馬券が唯一の生活の糧だ。生きるか死ぬか、あるいは捕まってしまうのか……究極のサバイバルの日々を綴ってゆく」
(7) 呪縛 その2
「何を、いったい?」
蹴破ったドアの向こうでは、ポマードがカオリを踏みつけにしていた。
カオリのシャツははだけていて、袖が破れていた。カオリは必死に両手で押さえている。「狂死狼さん、来ないで……!」
俺を見つけたカオリは叫んだ。
「カオリさんッ」
俺はポマードを突き飛ばしてカオリを覆い隠すようにして守った。
「なんだ、お前は。ああ、やっぱりこいつか? ええ。こいつが、やっぱりお前の……」
「違います。この人は違います。あなたの方こそ!! いや、もういい。お願いだから、もう別れて!」
「このお。ちっくしょう!!」
ポマードは、俺の背中を蹴り、拳を何度も何度も叩きつけてきた。
「お前なんか、お前なんか、ちくしょう!!」
「やめて!!狂死狼さん、もういいからッ」
こんな奴に、腕っぷしで負けないくらいの自信はある。しかし今、傷害事件を起こす訳にはいかない。
俺は奴の暴力にひたすら耐えた。体力が酷く失われていた体には骨まできしむような痛みが走る。
俺の腕の中でカオリはうち震えて泣いていた。
ポマードも泣きながら、それでも執拗に俺の背中を叩き続けた。
俺は気を失いかけた。
「警察を呼びます!!」
(カオリ、それだけは、それだけはやめてくれ……)
失いつつある意識の中で、うわごとのように俺は言っていた。
気がつくと、カオリの部屋のベッドの上で俺は目覚めた……
さあ!! 明日は競馬だ。今度こそ当てなければ。
明日の買い目は決まった。
狙いは、中京 第11レース 中日新聞杯G3 3才上オープンのハンデ戦だ。
総投資資金 336,270円÷36÷3≒3,100円
軸馬は14番マイスタイル 田中勝春の騎乗だ。
頼むぞカツハル。お前にすべてを託す!!
7-14、11-14、12-14
各 3,100円ずつだ。
続く




