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第一話:サイクル王国貴族院におけるナーバリア議員の演説

 二十数年前に最初の転生者が現れて以来、サイクル王国に流入してくる転生者の人数は一年に三百人以上と言われる。人口数百万の王国にとっては微々たる数字にも思えるが、転生者は旅行者と違って帰る土地がないため、ほぼ百%現地に居着いた。また、普段は社会制度の改革を訴えるのに、側室をもつところだけは現地の習慣にならいたがった。そうして、転生者の子孫がたくさん生まれていった。

 彼らが持ち込んだ技術などいろいろな要素も絡み合い、サイクル王国内における転生者と転生者信奉者の勢力は無視できない規模になっていた。すなわち社会摩擦が発生した。


 千二百二十四年の秋、貴族院(旧元老院)に慣例的に自由民とされてきた転生者の人権を剥奪し、デミヒューマンと同等の扱いにする恐ろしい法案が提出された。

 すでに得ている権利を数の力で奪う点でも恐ろしければ、デミヒューマンの扱いが低いことを公然化する意味でも恐ろしい法案であった。転生者排斥をもとめる貴族院議員は主張した。



ナーバリア議員(王国公爵)

「近頃の私たちを悩ませている問題に、転生者の流入があります。異世界からやってきたと主張する彼らは、異質な知識を梃子として我が国の政治・経済・軍事に食い込んで来ました。

 一人の転生者を受け入れれば、その転生者が次の転生者を引っ張り上げ、いわば互助会的な行為によって転生者の勢力は日々拡大しております。

 しかし、その狙いはいまだに不明であり、我が国を裏から乗っ取る意図を持っていないとも限りません。

 そうでなかったとしても、彼らの価値観に基づく「内政」と称する政治活動によって、我が国を彼らが来た異世界に近づけようとの活動が繰り返されています。


 本当にこれでいいのか!?


 奴らはいつも上から目線で、我々を社会的に劣った段階にあると見下し、より高い段階に引き上げてやるとの優越感を隠そうともしない。仮に優れた世界から来たとしても、奴らの人間性が優れている証拠にはならん。

 実際、なぜか女性にモテて当然と考える転生者が多く、迷惑をした女性からの苦情が大量に寄せられているではないか!

 このまま転生者を放置しておけば、我が国は奴らに牛耳られ、歴史を無視して思うように作り替えられてしまう。女は転生者のハーレムに囲われ、余った男は劣等民として奴隷のような扱いを受けるに違いない。

 転生者の我が儘を許すな!奴らが高等な存在だというなら、同じく高等な存在を自称しているエルフ共と同じ扱いにしてやろうではないか。すなわち軍においては士官になることは能わず、補助軍への配属を義務とする。政治においても騎士階級以上の地位は与えない。

 何も転生者を殺せと言っているわけではない。我が国が乗っ取られる危険性が排除できればいいのだ!!」


 この演説=アジテーションは転生者の言動に眉をひそめる気位の高い貴族からは拍手で迎えられたが、すでに貴族になっている転生者もいたし、転生者の友人である貴族からも抗議を受けた。

 今後、新しく我が国に入ってくる転生者のみを対象とする修正案も検討された。しかし、その最終的な対象が転生者全体に拡大されることは目に見えていた。それに、決して反対意見を言うことのできない今世界にいない人間を犠牲にするやり口は汚い。

 ただ、一部の転生者の言動が誇り高い貴族の神経を逆なでしてきたことも事実であった。対応を求められた転生者協会は、王国乗っ取りをもくろむの秘密結社ではなく、異世界語習得のボランティア組織にすぎなかった。新しい転生者への助言はできても、すでに定着した転生者を指導する力はない。


 しかし、その後もナーバリア議員は発言のたびに転生者排斥の発言を繰り返し、反転生者感情の浸透を図った。カルタゴ滅ぼすべし方式である。

 その日も公爵は転生者をあざけった。

「実際、転生者が持ち込んだものの中で評価できるのは音楽と料理くらいですな」

『それだけでも十分に貢献しているんじゃねーの?』

 議員の嫌味に議席から野次が飛んできた。

「神聖なる議会で、汚らわしい転生者語を話すな!」

 ナーバリア議員に声を荒げさせたのは、転生歴二十年の貴族リップラント伯爵スグルであった。おっさん化の進行してきた伯爵は、あくびを噛み殺すふりをした。盗賊退治にダンジョン攻略、一つ一つは小さくても数々の修羅場をくぐった彼に、脂ぎったナーバリア議員の威圧は通じない。

「失礼。公爵閣下の講釈があまりに眠かったので、つい寝言が漏れました」

「貴様~~っ!」

「はわわわ……やめてくださーい!」

 カンカンカンカンカン!!

 議長をつとめる実権と胸のない女王(若いとは書いていない)が、あわてて両者を仲裁した。その場はかろうじて収まったが、王国内に走る大きな亀裂の存在は、国外から見ても明らかであった。

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