*prologue 途切れたページ
空をとびたいとねがった小鳥は、勇気をふりしぼって巣からとびたちました。
でも、小さくてきずだらけのはねをひっしにうごかしても、ぶざまに木の下におちてしまいました。
それを見ていたほかの小鳥たちは、高い高い木の上から、小鳥をわらっていました。
『きみはいつまでたっても強くはなれないよ。』
じめんにふせたまま、小鳥はなみだをながしました。
『とべなかった。しあわせになれなかった。
わたしにはしあわせになるしかくはないの?』
かわいそうな小鳥のすがたを見て、神さまはいいました。
『おまえは生まれるまえから、とべないうんめいだったんだ。うんめいの力はとても強い。神のわたしでもあらがえないほどに、だ。』
『せめて、わたしにちからを下さい。だれかにひつようとされて、だれかを助けられて…
わるいいヤツをたおせるような、強いヒーローみたいなそんざいになりたい』
小鳥はいっしょうけんめいねがいます。
『……いいだろう。おまえにはこの力をさずけよう。
この力は――』
「……あれ? この絵本、ページが切れちゃってる……。
すてきなお話だったのに。最後まで読みたかったな。」
黒髪の少女が呟き、熱心に読んでいた絵本を床に放り投げた。
『この絵本の小鳥と同じ運命を辿るなんて、可哀想な娘だ。
きっとお前が飛び立つ頃には、この絵本のことも忘れているんだろうな……』
その声は少女には届かないまま、薄い雲の隙間に吸い込まれていった。
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