光の球
文章って難しい!!
「ん?」
武治は自分の体から金色の砂のようなものが零れながら空を舞っているのに気が付いた。
「間もなく転生が始まるようですね」
光の球がふよふよと浮かびながら説明する。
裸の40歳目前中年太りの武治の周りを金色が包む光景は幻想的で神々しくも、残念であった。
「すみません。光の球さん」
金の砂に包まれながら武治は申し訳なさそうに尋ねる。
「色々と教えてくださって有難う御座います。いきなり異世界に転生されて混乱するよりも事前に話が聞けて良かったです。あの・・・所で・・・あなた様は一体どういう存在で、それとあなた様の名前は何と言うのでしょうか?」
今更ではあるが、武治は光の球について何も知らないことに気が付いたのだ。
「世界と世界をつなぐ、この狭間の世界に住む、ただ一人の住人です。肉体の無い『ヒト』ですね。」
武治は光の球を神様のような存在だと思っていたがどうやらそうではないらしい。
「『夢』を通じて様々な世界について知ることできる存在。様々な事象を理解するだけの存在。ただただ知っているだけ。だから桃田武治さま」
光の球が言葉を止める。何を言われるのかと武治は言葉を待つ。金の砂は一層勢いを強めて武治を包み込んでいる。
「有難う御座います。ただただ知るだけの存在であるわたしは、はじめて自分以外の『ヒト』と出会い、言葉を交わすことができました。ただただ知る存在であるわたしの知っている事が役立ったのであれば・・・・・・うれしいです」
武治は何とも言えない気持ちになった。こんな何もないところに一人でただ存在するだけ。見れるのは『夢』のみ。不幸ではないが、幸せでもないのではないか。良くしてくれた光の球に何も返せないのが悲しくなってくる。
「そんな顔をしないでください。桃田武治さま」
光の球の声はどこか弾んできこえた。
「桃田武治さまは素敵なものをくださいましたから」
世界は・・・。
「えっ?私がですか?」
そう、世界は・・・。
「はい。ヒカリノタマ。漢字で書くと光野珠でしょうか。ちょっと『たま』は大正から昭和初期か、猫ちゃんみたいですけど・・・うれしいです」
武治はいやいやそんなベタすぎる、光の球もとい『光野珠』に突っ込みの手を伸ばし、そして触れた瞬間に、パっと金の砂になって狭間の世界から新たな世界へと転生した。
後に残ったのは誰もいない狭間の世界。
世界は偶然とお約束でできていた。
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