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プリシュティナ解放作戦-4

 4月1日 0249時 コソボ上空


 セルビア空軍のMiG-29SとMiG-29UBが迎撃に向かった。セルビア軍が保有していたフルクラムは12機だったが、今、残っているのは、この迎撃に向かっている4機だけとなっていた。後は、練習機のG-4スーパーガレブだが、これは軽攻撃/練習機のため、空対空戦闘に利用できるのはGSh-23機関砲ポッドのみの上、暗視装置も装備されていないので、使い物になるかどうかは疑問だ。

「クソッ、裏切り者どもめ。後で覚えていろよ」

 セルビア空軍の編隊長がぼやいた。1機は訓練生の教育のための機体だが、それを駆り出さねばならないほど、セルビアの航空戦力は疲弊していた。おまけに、情勢が悪くなってきたせいなのか、ロシアは裏の支援を止め、セルビアは武器の確保が覚束なくなっていた。政府は傭兵部隊が利用している闇市場から手に入れることを考えたが、こういった市場で暗躍しているバイヤー連中は、囮捜査を警戒して、殆ど正規軍や政府関係者と取引をしないのが普通だ。そのため、セルビアは新たに武器を手に入れるのが難しくなっていた。おまけに、戦闘機を持っていた傭兵部隊は既に高跳びし、今頃はきっと、アフリカか中東あたりの本拠地へ逃げ帰っているのだろう。


「敵機確認。方位、014。速度マッハ1.1、4機です」

 リー・ミンがゴードン・スタンリーに報告した。

「ミグだな。蹴散らしてやれ」


 4月1日 0251時 コソボ上空


「"ウォーバードリーダー"より全機へ。迎撃体制を取れ。2、3、サバーは交戦。他は周辺警戒」

『"2"了解』

『"3"了解。交戦する』

『"サバー"了解』

『"4"、周辺を見張る。背中は任せてくれ』


 Su-30SMの後席で、ゲンナジー・ボンダレンコがレーダーモードを"サーチ"から"エンゲージ"に切り替えた。

「ミシュカ、敵機。多分、ミグだ」

 多機能ディスプレイに表示されたレーダー画面を見ると、敵機を示すアイコンが4つ、正面から接近してきているのがわかる。

 ケレンコフも操縦席側のレーダー画面で確認した。

「よし。やっつけてやる」

 ボンダレンコは、MFDを操作し、データリンク画面を呼び出した。E-737からのデータがダウンロードされ、どの僚機がどのターゲットを攻撃すべきかという情報が表示される。

「ターゲット確認。射程距離まであと2分・・・・・・」


 セルビア空軍のパイロットも"ウォーバーズ"の機体を発見した。しかし、搭載兵装は翼端ランチャーにR-73が2発、胴体下ランチャーにR-27T1が1発。それと両翼の下に増槽がそれぞれ2つずつ、機関砲弾をフル装填といった軽装だ。セルビア空軍が持つMiG-29Sは、一応はR-77に対応する電子装置はあるが、セルビア空軍は、それをロシアから売ってもらえずにいた。


 佐藤勇はF-15Cのコックピットの中で、左側の兵装選択画面を操作した。かつて、このF-15Cはアナログ計器盤が並んでいたが、大幅改修を行った結果、アナログメーターは補助的に幾つか残されているのみで、レーダースコープ画面と3枚の多機能デジタルディスプレイで構成される、現代的なデザインに生まれ変わっていた。

「よし、こいつをぶちかましてやろう」

 佐藤はAAM-4Bを選んだ。この日本製ミサイルを実戦で使うのは、実は初めてであった。佐藤はこのミサイルを裏ルートを通じて、航空自衛隊にいる知り合いからこっそり流してもらっているが、その知り合い曰く『そろそろ部署異動があるし、上層部から疑われているようだから、もう手を引く』と言われてしまったため、もう手に入らないだろうと覚悟していた。まあ、普通に武器市場に溢れているAIM-120C/Dを使えば問題無い話ではあるのだが。やがて、ミサイルが標的を捉えたジジジジジジという電子音が聞こえてきた。


 F-15Cがミサイルを発射した。やや遅れて、F-16V、F/A-18C、Su-30SMもミサイルをリリースする。空対空ミサイルは獲物めがけ、夜空を駆けていった。


「クソッ、ミサイルアラート!」

 セルビア空軍の編隊長が叫んだ。戦闘機をブレイクさせ、編隊を解く。

「ECM!チャフ!チャフ!」


 MiG-29Sは滅茶苦茶に機動し、ミサイルを躱そうとした。しかし、1機が爆発し、炎上しながら落ちていく。残りは3機。その3機のうち、1機は超低空に逃げ、上昇した。ミサイルは戦闘機の動きについて行けず、地面に着弾した。


「まだ1機残っているぞ!」

 ウェイン・ラッセルが生き延びたミグの追跡を始めた。その後、1機の敵機がレーダー画面から消えたが、3機目が生き残っている。2機の敵を仕留め損なってしまった。


 2機の敵戦闘機は編隊を組み、再び攻撃体制を取り始めていた。普通ならば、逃げ延びるのが得策なのだが、このパイロットは頭が余りにも悪いようだ。


「何だこいつ?逃げないのか?」

 ワン・シュウランは困惑気味だった。レーダーで確認すると、逃げ延びたミグは、大きく旋回しつつ、再びこっちに向かってこようとしている。

『"ウォーバード8"より"ウォーバード9"へ。やるわよ』

 無線からレベッカ・クロンヘイムの声が聞こえてきた。この2機を撃ち落とさない限り、空域の安全は確保できない。

「了解だ。援護する」


 JAS-39Cからミーティアが、ミラージュ2000CからMICA-EMが撃ち出された。ミサイルのレーダー・シーカーが敵機を捉え、追跡を開始する。ミサイルに気づいた敵戦闘機が、滅茶苦茶な機動を開始した。ところが、逃げ切れず、爆発、炎上し墜落していった。

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