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プリシュティナ解放作戦-3

 4月1日 0147時 コソボ共和国 M2幹線道路


「敵戦車正面!セイボー!」

 レオパルト2A7の車内で車長が叫んだ。装填手が指示通りの弾薬を込め、装薬をセットする。

「セイボー装填!」

「発射!」

 ラインメタル55口径120mm砲が吠え、砲弾を飛ばした。タングステンとモリブデンの合金でできた矢は、音速をはるかに超える速度で飛び、セルビアの戦車を破壊した。

「命中!」

「次!2次方向!T-72!」

「撃て!」

 T-72に砲弾が命中し、動かなくなった。だが、その間に、味方に幾つが犠牲が出た。

『"モール3"被弾!車長死亡!』

『"リザード5"から応答無し!やられたか!?』

『こちら"ビッグベア"、被害拡大!戦闘続行不可能!』

「クソッ!」


 4月1日 0153時 セルビア バタイニツァ空軍基地


 セルビア空軍のクルーが、Tu-22M"バックファイア"に爆弾を積み込み始めた。これは、ある傭兵部隊から強奪したもので、今、その傭兵たちは死体になっている。全部で4機。これを飛ばせるパイロットが、セルビア空軍内にいたのは幸いだった。ロシアに留学したパイロットが、Tu-22で操縦訓練を受けていたのだ。セルビア軍は、もし、プリシュティナが奪還されるような事があった場合は、焦土作戦を行うことにしていた。更に、護衛のMiG-29Sも8機、準備をしている。

「おい、こいつは・・・・・・」

 バックファイアに積まれていく爆弾を見て、爆撃手は唸った。それは、通常のKABやFABシリーズの爆弾ではなく、緑色をしており、不格好なドラム缶のような形状で、ステンシルで白のドクロマークが描かれている。

「察しの通り、毒ガスだ。いざとなったら、こいつを使え」

「クソッ、あんた正気かよ。そんなことをしたら、今度こそアメリカ軍がやって来るぞ。空母も、ステルス戦闘機も、大勢引き連れて。そうなったら、我が国はおしまいだ」

「いや、そうはならんね。今度こそ、目障りな傭兵どもを皆殺しにして、今度こそ、コソボを占領してやるさ」

 Tu-22Mの機長は、呆然とした様子で、爆撃機のウェポンベイに大量破壊兵器が搭載されていくのを見た。だが、自分は傭兵ではなく、れっきとしたセルビア空軍の兵士だ。そして、国の命令には従わねばならない。


 4月1日 0208時 コソボ上空


「こちら"カーディナル1"ターゲット発見。攻撃する」

 傭兵部隊のF-16CM編隊が、セルビア陸軍戦車部隊へと向かった。翼にはCBU-97が搭載されている。

『"2"了解。ターゲット、正面のセルビア軍戦車部隊』

『"3"、後に続く』

『"4"』


 4月1日 0208時 コソボ


「クソッ、何をしている!?反逆した傭兵風情に何を苦戦している!?何?M1だと?そんなの知るか!いいから、敵を殲滅しろ!」

 セルビア軍戦車部隊を指揮している大尉は、無線機に向かって怒鳴りつけていた。

「いいから、こっちから援護をよこす!それまで持ちこたえろ!」

 やがて、空から轟音が聞こえてきた。が、大尉はマイクに向かって怒鳴り続け、更に両耳にイヤホンを当てていたため気づかない。

「大尉!」

 軍曹が叫ぶ。

「大尉!」

 肩を引っ張られたため、ようやく気づいた。

「大尉、あれを!」

 イヤホンを耳から外すと、爆音が聞こえた。

「クソッ!退避!退避ー!」

 戦車兵たちは、降車し、蜘蛛の子を散らしたように逃げ出した。


 F-16がCBU-97を投下した。爆弾の外殻が弾け、中から10本の筒が分離し、その後、それぞれの筒から4つずつ、小爆弾が分離した。赤外線センサーが搭載された小爆弾は戦車のエンジン熱を見つけると、火薬を起爆させ、弾殻を溶けた金属の矢に変えた。そして、熱い融解金属の矢がそこら中に飛び散り、戦車の装甲を溶かして貫通し、兵員を切り刻んだ。


 4月1日 0215時 コソボ


 傭兵部隊のMLRSがM31GPS誘導ロケットを発射した。自走砲や自走ロケット砲を持たないコソボとアルバニアにとっては、貴重な長距離火力投射資産だ。


 4月1日 0223時 セルビア ベオグラード・ニコラ・テスラ空港


「おい、貴様ら、何をしている!」

 空港警備員が、離陸準備をしているIl-76の周りに集まっている傭兵たちを呼び止めた。

「あ?決まってんだろ。帰るんだよ。こんな国、もういられるものか」

「なんだと?」

 傭兵の一人が、警備員を睨みつけた。

「わかってないな。俺たちは、セルビア政府との契約を破棄した。だから、帰るんだよ」

「ちょっと待ってろ」

 警備員が無線機を取り出し、スイッチを押した。が、突然痙攣して倒れた。傭兵のリーダーがテーザーガンで撃ったのだ。

「俺たちを舐めるんじゃねえ」

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