プリシュティナ解放作戦-2
4月1日 0113時 プリシュティナ南東 セルビア軍のレーダーサイト
「クソッ!ジャミングだ!全くレーダーが利かない!」
セルビア陸軍の中尉がレーダーの操作盤のダイヤルを何度も回したり、スイッチを入れ直したりした。だが、レーダー画面は砂嵐のままで、全く表示が改善する様子が無い。
「畜生!あらゆる周波数が死んでる!」
やがて、机の上の電話が鳴り、司令官が出た。
「はい。こっちは、こっちでレーダーが全く利かないのですよ!え、リピャニの対空陣地がやられたって?ですから、こっちはレーダーを回復させようと作業中なのです!回復次第、こっちから報告しますので、お待ち下さい!」
4月1日 0119時 プリシュティナ国際空港
サイレンが鳴り響き、傭兵部隊のパイロットとセルビア空軍のパイロットが一斉に走り出した。ここに配備されているのは、少数のセルビア空軍のMiG-29Sを除き、傭兵部隊の戦闘機がほとんどである。だが、セルビア軍は現在、叛乱を起こした国内にいる傭兵部隊への対処で手一杯で、コソボ・アルバニア・傭兵連合部隊の攻撃に対処できる部隊はごく少数であった。
4月1日 0123時 コソボ共和国 M2幹線道路
轟音を立て、傭兵部隊のレオパルト2A6やルクレール、M1A2エイブラムズ、T-84Uオプロートといった戦車や、マルダー、ピサロ、プーマなどの歩兵戦闘車が北上を始めた。彼らは、最後の補給地点から出発し、空爆が終了するまでの最終待機地点へ向かっているところだ。空爆が終わったら、彼らがプリシュティナの市庁舎、テレビ局、ラジオ局などを占領する予定だ。
「さあさあ!野郎ども、進め進め!プリシュティナに一番乗りした車両は、報酬倍額だ!」
『ヒャッハー!行け行けー!セルビア野郎どもを蹴散らしてやれ!』
轟音が響き渡り、アフターバーナーの明かりが微かに夜空に光る。どうやら、味方の戦闘機のようだ。
「おい!俺達の分の獲物も残しとけよ!この腰抜けパイロット野郎が!」
味方戦闘機が上空を通過する度に、戦車兵たちは拳を突き上げ、歓声を上げる。やがて、先頭を行く斥候が敵を見つけた。
『正面、敵戦車。数、10。M-84ASと思われる!』
「聞いたな?野郎ども、狩りの時間だ!」
セルビア陸軍の戦車部隊は、コソボに続く幹線道路に陣取っていた。つい先日までは、傭兵部隊もいたのだが、そいつらは突然仕事を放棄し、セルビアから去っていった。だが、セルビア陸軍は大規模な戦車部隊をまだ持っていたため、防備に関しては事欠かなかった。だが、今、セルビア国内ではそれどころではない状況に陥っていた。さっきまで味方だった傭兵部隊が反旗を翻し、セルビアを攻撃し始めたのだ。セルビア軍は思わぬ敵の登場で、今度は国を奪われないように防衛をしなければならなくなった。
「こちら"アナコンダ1"。攻撃目標まであと10マイル」
シモン・ツァハレムとデイヴィッド・ベングリオンは、傭兵部隊の攻撃ヘリ中隊の指揮を任されていた。彼らの任務は、地上部隊と共闘し、敵戦車部隊を殲滅することだ。
『"2"了解。味方の信号をもう一度確認する』
すぐ後ろに付いてきているのは、スイス人傭兵コンビが乗るEC-665タイガー攻撃ヘリだ。他にも、A129マングスタ、Mi-28ハヴォックなど、多種多彩な攻撃ヘリが、いくつかの班に分かれ、展開を始めた。
「"アナコンダ1"、攻撃目標確認。データリンクオン・・・・・・」
攻撃ヘリ部隊を先導していたのは、13000フィート上空から見下ろしているMQ-9リーパーだった。この無人機は、ティラナ・リナ空港のとある格納庫の中から操縦されている。リーパーは目標を発見し、その座標データを衛星通信で攻撃ヘリ部隊へ送った。攻撃ヘリに搭載されている新型の火器管制装置は、一種のクラウド・シューティング機能があるため、無人機で目標をキューイングすることもできた。
「"アナコンダ1"、攻撃目標確認」
『"2"確認。目標ロックオン!』
『"3"、発射準備完了』
そして、味方のヘリの攻撃準備が完全に整った。
「"アナコンダ1"より各機へ、合図を待て・・・・・・」
4月1日 0130時 プリシュティナ南東
傭兵部隊のEA-6Bプラウラーとイギリス空軍のF-35Bが、一斉に対レーダーミサイルを発射した。セルビア軍部隊に対する、この作戦の第2撃だ。そして、イギリス空軍の編隊長がデータリンクでコソボ国内で待機している攻撃部隊に、作戦開始の通信を送った。
4月1日 0131時 コソボ共和国 M2幹線道路
攻撃ヘリ部隊が、セルビア軍地上部隊目掛けて一斉に攻撃を開始した。AGM-114L、TRIGAT、9M120といった色とりどりの対戦車ミサイルが、戦車、歩兵戦闘車、地対空ミサイル、装甲車を破壊する。更に、生き残っている歩兵がいることを加味して、ロケット弾も数発、撃ち込んだ。ツァハレムとベングリオンが率いる部隊が、補給のために一旦前哨基地へ戻るときには、セルビア陸軍の防備部隊は、鉄くずと炭だけになっていた。




